糸井重里さん 第2回 クリエイティブの現在進行形。 | SOUQ ZINE スークジン

糸井重里さん 第2回 クリエイティブの現在進行形。

糸井重里さん 第2回 クリエイティブの現在進行形。
『生活のたのしみ展』のストライプのエプロン姿がかわいい糸井重里さん。笑顔が素敵でとても親しみを感じさせますが、1970年代からクリエイティブの最前線をずっと走り続けている稀代のコピーライターです。トップランナーには、今のクリエイティブの世界ってどう見えているのでしょうか。
SOUQ
コピーや書籍の編集、ゲームづくりなど、さまざまな創作をされてこられた糸井さんから見て、今のクリエイティブは、どのようなものに見えていますか?
糸井
クリエイティブって便利な言葉なんですよね。そうやって言っておけばいいというようなシーンも多くて。会社の中で、経理は経理のクリエイティブがあるでしょ?という言い方をしたときに、それはそれでボクにとってはものすごく大事なことを言っていて。うちの経理はそれをわかっています。
SOUQ
クリエイティブは、いわゆるクリエイターと呼ばれる人だけのものじゃない?
糸井
そうです。それが通じない場所で、クリエイティブという言葉を多用すると、なんかちっぽけなエリート意識みたいなものができちゃって。どうなのかなあと思ってしまいます。クリエイティブじゃないと言われていることの中に、実はものすごくいいものが隠れていたりする。
糸井重里
SOUQ
それは、どういうところに隠れていますか?
糸井
たとえば手編みのセーター。編み図があってそれを見て編む場合、それはクリエイティブでしょうか? と問いかけられたとします。多くの人はクリエイティブじゃないと言うと思うんですよ。それは単なる作業だと。じゃあ、機械にやらせればいいんだけど、そうやって編まれたセーターはだれもほしがらない。手編みしている人は、ずっとテレビを見ながら無意識に編めるわけはないわけで、ここでこうしてああしてと、全部、体が覚えているわけだから、大したことをやってるんですよね。しかも自分がやりたいことをやっている。
SOUQ
セーターを渡す相手を思いながら…。
糸井
そう。この仕事は機械がやってあげますよ、というのは、ずいぶんと人間が安く見られたもんだなあと。最近、どんどん機械やAIに任せて、人間はもっとクリエイティブなことをしましょうと言う人がいますが、そのクリエイティブなことってたとえばなに? 特にないんですよ。
糸井重里
SOUQ
将来、AIが人間の仕事を奪うという見方はどんどん広まっていますよね。
糸井
おかあさんがつくるふつうの親子丼と、うちは日本一と名乗る店の親子丼とを比べる必要はないわけです。どっちも人間が生きていく上で、普通にやった方がいいことをやってる。24時間生きてる人間は、どの時間も全部大事なんですよ。自分からすれば、ソファに横になってテレビを見ている時間も大事。そこでセンスのいい笑いを楽しんでいる自分は、必要だからやってるんですよね。もっといいことがあるなら、違うことをやりますよ。
SOUQ
AIが担う時間は、そんなにないというわけですね。
糸井
これがこだわりですといいますけど、みんな、そんなこだわっているものばかり欲しがっているわけではないですし。面白いと思う人がどこか引っかかればいい。
SOUQ
確かに、こだわりばかりだとしんどいかもしれませんね。
糸井
ただの人間になってしまう感性というものが、友達同士のコミュニケーションかもしれません。結局みんな一日中一生懸命やりたいなんて思ってないでしょ。どうやってサボろうかと思ってないですか? 知恵と工夫でやっていることが多くて、いかにも用事がありそうに腕を組んでいる人は、サボってたりしますからね(笑)。
SOUQ
絶対サボってますよね。
糸井
でもあれをサボってるって言っちゃったら、人間を大変にしちゃいますよね。お互いに、まあそういうことよね、でいいじゃないですか。妥協はもうクリエイティブなんですよ。
糸井重里
SOUQ
何年か前の「今日のダーリン」で、糸井さんが「忙しいってことを隠れ蓑にしすぎだ」というようなことを書かれていて、そこにも通じる話だと感じました。
糸井
忙しいという言葉で、頭を使うのをやめたいという気持ちもわかります。ボクもそうなんだけど、今回ここで一歩出ようよと言って、ダメだったなあとかね。失敗しちゃったなあとか。あんまり通じなかったなあとか。繰り返していくと、また自己問答が繰り返されていく。それができてるかどうかの方が大事なんじゃないかと思うんですよね。
SOUQ
失敗してもいいじゃない、というのはありますよね。
糸井
恥ずかしいこともいっぱいしましたよ、自分も。全部当たる人ってちょっと信用できないですよね。
SOUQ
糸井さんがやることは、全部当たっているように見えますけどね(笑)。
糸井
そんなことないです。でも仕事をしていくうえで、人に嫉妬したりしないで、出番が来たらちゃんとやるというのは大事なんじゃないですかね。いまほぼ日では、倉庫管理をふだんは編集やライティングをしている担当がやってますからね。
SOUQ
編集やライターって、一般的にクリエイティブな職と思われてますよね。
糸井
彼が妙に整理することが得意だったので、倉庫の整理と管理にクリエイティブがのっかりました。
SOUQ
なんでもやってみることはいいのかもしれません。
糸井重里
糸井
あるIT企業で、システムエンジニアで雇われたのに、焼きそば焼かされたと言って辞めた人がいるみたいなんですよ。
SOUQ
焼きそば?
糸井
その企業のイベントで1日中焼きそばを焼いていて。「オレはこんなことをするためにこの会社に入ったわけじゃない」と個人のブログで書いていました。そうだそうだと思う人もいると思うのですが、ボクなんかは、えっ、焼きそば焼かせてもらって辞めるの? 焼きたいじゃん! 人間の全体性のようなものを取り戻すには、そういうシェイクは必要なんじゃないかなって思うんです。

取材・文/蔵 均 写真/新田君彦

ずっとクリエイティブの世界で活躍されている糸井さんに、今のクリエイティブについて聞きました。次回第3回目は、「モノをつくること、売ること」について、話をうかがいます

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