糸井重里さん 第3回 モノをつくる、そして売ること。 | SOUQ ZINE スークジン

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糸井重里さん 第3回 モノをつくる、そして売ること。

糸井重里さん 第3回 モノをつくる、そして売ること。
糸井さんは、いまや80種を超えるバリエーションの「ほぼ日手帳」を筆頭に、「ほぼ日ハラマキ」や「カレーの恩返し」など、ヒットアイテムを多数プロデュースしています。モノをつくる、そしてそれを売るときに、どのようなことを志しているのでしょうか? モノづくりの極意について聞いてみました。
SOUQ
先日、ある手芸会社に行って話をしていたら、商品は、100人がつくって100個同じものができないとクレームになるんだと聞きました。SOUQなら、100人つくり手がいれば、100通りのモノができていいんじゃないかと思うんですけどね。
糸井
モノをつくるときに、いくつか困ったなあと思うことがあります。一つは公平性への幻想ですよね。100個つくって一つも間違いのないものを売るときに、ちょっとシミがあったら不良品になっちゃう。アート作品だとそんなことないわけですよ。画家が仕上げにポタッと絵の具を落としたとしても、なんの問題もないわけですよね。
糸井重里
SOUQ
むしろ、それが価値になったりしますよね。
糸井
もう一つは分業について。2年間専門学校で学んだというだけで、資格的には、センスのいい人よりも上になっちゃうんですね。写真だって、専門学校に行ってた人よりオレのほうがうまいよということはいくらだってあるわけです。そういうのを例としていっぱい見ることで、それはいいなあ、オレやろうかなとか。別のジャンルをやってみることで、それがあとで自分に返ってくる。
SOUQ
専門的なことをやるだけでなく、違う分野にも手を出してみる。
糸井
混ぜこぜにして、人間と人間が一緒にやってるというふうにどうやって戻して行くのか。毎日仕事している間にできるようにするにはどうしたらいいのかということを考えますね。
SOUQ
組織が大きければ大きいほど、分業制がしっかりしますよね。そして、いくら売れるかとは逆の方向で、会社を飛び出し自分が好きなものをつくるクリエイターが増えてるような気がします。
糸井重里
糸井
大きい会社では、ロットで跳ねられちゃうんですよね。1万つくらないといけない仕事に慣れてしまう。普通に何百円で売っているものを千円で五百個つくればいいんじゃないと言えたら、お客さんとちゃんとしたやりとりができるんですけどね。ほぼ日は小さい会社なので、そこは最初から3個でいいじゃないと言ったりします。
SOUQ
規模の大きい会社だと、なかなか3個でというのは難しいですね。
糸井
商品が手に入らない人が多いのは企業として無責任だという大企業のロジックがあるんですね。さっき言った公正性の問題に近いのですが。当たり外れがあるのは社会の常じゃないの、とボクは思うんです。
SOUQ
SOUQでは、作家さんが作品を見せてくれることも多いのですが、ちょっとこれは売れないなあと思ったら、「あと3年がんばって」と言ったりするのですが、売っていいものと売っちゃダメなものの線引きはありますか?
糸井
同じ手作りの人形をつくっていても、それは何かに達してないなあというのもあるし。技術はまったくないけど、すごく魅力的な何かがあることもある。ミロコマチコさんがデビューした時みたいな。なんなんだよこれ!って、技術とかを超えてるうちに技術になっちゃうんですよね。そういうのは、交換の価値じゃなくて、やっぱり魂を提供する、魂を受け取るということかもしれません。
糸井重里
SOUQ
商品とお金の交換ではないと。
糸井
誰かが旅行に行くときに、私が留守の間猫を見てあげるよとなったとき、お金は取らないですよね。そういうことがものすごく大事になってくるし、それをやらないと何もできなくなっちゃう。だからある意味、みんな魂を出しちゃいますからヘトヘトになる。だけど、そういうことをしたくて生きてるんです。お金でそれを買えるかというと買えないんです。ヘトヘトまでが自分の楽しみなんですよね。その渦が自分でやってることかもしれませんね。
SOUQ
糸井さんが、前に“クリエイティブな消費”とおっしゃっていて、その言葉がすごく印象に残っています。消費者が、売れ筋じゃなく自分が好きなものを買うという素に戻っていいんじゃないかと思うんです。
糸井
そういうことをわかってくれる人が増えたような気はしますね。嬉しいですよ、やっぱり。今までボクが言ってることは「あいつは変わってるからな」という扱いだったけど、今いちばんメインロードを走るようになってきたかもしれません。
糸井重里
SOUQ
ほぼ日さんの場合、もっと人と人とのつながりで売ったり買ったりしている感じがします。
糸井
ママゴト遊びに近いかもしれないですね。ママゴト遊びって、人はバカにするんですけど、しっかりと図面を描いた人たちが、ママゴト遊びに負けちゃったりするんですよね。
SOUQ
調査して戦略を立てればいいわけじゃない。
糸井
そういうのが今だと思うんです。人とつながるとか、背景の物語をわかりあえることで動くものを信じたいというのは、ある意味では自分の血を投げ出すみたいな。ギャランティ分の働きでは間に合わないわけです。給料これだけだからこれだけやればいいという労働時間の問題が、ものすごく話題になっていますけど、あれだとできることが限られてしまいます。
SOUQ
働き方改革って、やたら叫ばれています。
糸井
モノが売れるというのは、半分は売る側の仕事。でも半分は、買う人の仕事なんです。自分のお金で買うわけですから。どこかで血を出してるんですよね。もしかしたら汗なのかわかんないんですけど。そこにそれは損だからって伝票切っちゃうと、誰も遊んでくれなくなっちゃいますよ。ボクはバカと遊びたいんだと思います。あいつもバカだけどオレもバカだなと。そのバカはうれしいなあって。

取材・文/蔵 均 写真/新田君彦

次回第4回は最終回。大阪の阪急うめだ本店で開催される『生活のたのしみ展 出張巡回展』について、糸井さんに語ってもらいます。

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