服部滋樹さん 第1回 百貨店のなかに、街を、 路地裏をつくる | SOUQ ZINE スークジン

服部滋樹さん 第1回 百貨店のなかに、街を、 路地裏をつくる

服部滋樹さん 第1回 百貨店のなかに、街を、 路地裏をつくる
大阪を拠点に、全国へ世界へ活動を広げるクリエイティブユニット「graf」。代表の服部滋樹さんは、うめだスークの誕生に、コンセプトづくりからデザインまで、深く関わってくれています。これまでの百貨店にはなかった画期的なフロアはどのようにしてつくられていったのか? プロジェクトがスタートした頃を振り返りながら、お話を聞きました。
SOUQ
服部さんがうめだスークに関わってくれるようになってから、どれぐらいになりますかね?
服部
もう8年ぐらいになるんじゃないですか? うめだスークがオープンして5年でしょ? その3年前ぐらいからのおつきあいなので。
SOUQ
オープン前から、コンセプトづくりやフロアデザインなどでおせわになりました。もう8年になるんですね。
服部
最初は、うめだ阪急の建て替え第二期棟の竣工に向けて、9階までは普通のフロアにするので、そこから上でいままでにないおもしろいものをつくってほしいと言われて。
SOUQ
そうでした。人が集まる、買い物が楽しい場所をつくるというのがミッションでした。そのちょっと前にうめだ阪急でgrafが選ぶ民藝のイベントをやって、関係ができてたんですよね。
服部滋樹
服部
声かけていただいて話を始めたら、百貨店の話などはひとつもせずに、おもしろい街ってどんな街?っていう話をずっとしてましたね。
SOUQ
そうでした。grafのカフェでコーヒーを飲みながら、街には発展するプロジェクトが内蔵されているから、とか言いながら。
服部
たとえば街には神社が一つあって、そこに参道があって。で、参道には薬屋さんとかお菓子屋さんの屋台が出ている。そこでお参りに来る人をもてなして気分転換していく構造とか、そういうことをしゃべってましたね。
SOUQ
店というよりは街をつくる感覚でした。
服部
街の中に市場があることで、どれだけ街が元気になっているかとか、世界のおもしろい人が集まる場所がどうなっているのか? そういう話ばかりしてた。これはおもしろかったですね。
服部滋樹
SOUQ
その頃服部さんが注目されていた、世界の街や場所はどこだったんですか?
服部
モロッコのマラケシュは、世界中からモノや人が集まってきて、そこでミュージシャンが演奏してたり、料理つくってるやつが来たりとかしてた。そういう市場っぽい雰囲気が好きで、映像や写真などをよく見てましたね。だから、アラビア語で市場を意味するスークというのが、うめだスークのネーミングの由来。
SOUQ
いい名前になったと思います。
服部
市場の迷路のような雰囲気を出したくて、スークにした。その頃マルシェという言葉が日本でも使われ始めた頃だったんですが、やろうとしていることはマルシェじゃないよなあって。
SOUQ
マルシェにしなくてよかったかも。今となっては、世の中、マルシェの大安売りですからね。
服部滋樹
服部
そもそも百貨店って、婦人服のインターナショナルブティックスとかのフロアがあって、催事場があって、レストランがあって。王道の売場構成があると思うんですよ。ここからあまり抜け出せない。だけど、百貨店にこんなフロアをつくって、そこで路地裏に入っていく感覚で楽しめたらいいよね。僕らがどうやって街を楽しんでいるのか話すのがいちばんおもしろかった。
SOUQ
当時、東京の谷中とか、吉祥寺のハーモニカ横丁とか、路地裏が元気だった気がします。
服部滋樹
服部
街の楽しみ方の一つとして、自分だけが知っている店を持っているというのがあると思うんですね。彼女にしか教えない店とか、友達にも教えないような店とか。そういう自分が発見したお気に入りの場所を、百貨店の中で見つけることができたらいいのになあと。そしたらやっぱり、うめだスークはこんな変なレイアウトになって。
SOUQ
この導線は、百貨店としてはかなり異色で大胆でした。
服部
路地裏をつくろうと言って、まっすぐ見えなくて、重なるようにレイアウトしてみるとか。街の中にある導線のレイアウトをプロットしていって、街区ごとに…あっ売場を街区って呼んでいることが、今までの百貨店にはない発想ですよね。
服部滋樹
SOUQ
いま、うめだスークでは「中央街区」「北街区」「南街区」というのが定着しています。
服部
路地裏をウロウロする感覚で、いつ来ても違う人たちがいたり。発見があったり。(中央街区の端から売り場を見ながら)ここから見ると奥の方が見えなくなってるでしょ? 角度をつけることによって先へ先へ誘う感じを出したかった。
服部滋樹マスタープランで、服部さんが導線をイメージして描いたスケッチ
SOUQ
百貨店の定石は、いかに見通しをよくするかですから、まったく逆の発想ですね。
服部
どうやったらそうできるかなというのをすごく研究して。このうめだスークのフロア1,500坪ありますから、そこをレイアウトするのって相当大変ですよ。建築の敷地で1,500坪なら、建築のレイアウト考えるだけでよくて、そこそこいけるんですけど。ワンフロアでぞれぞれコーナーの顔を変えて、奥へ奥へと楽しめるようにするには苦労しました。
服部滋樹
SOUQ
期間限定のショップが、1週間とか2週間で変わっていくというのも、今までの百貨店にはなかった。その売場が、小屋になっているというのも、なかなか新鮮でした。
服部
単に仕切り壁をつくっちゃうと、そこがただのブースになっちゃう。たとえば街で、家と家の間に隙間ができるじゃないですか? その隙間に屋台とかが出現する。その偶然性のきっかけづくりを小屋のレイアウトでできないかと考えたんです。当初は今の姿よりもっとバラバラするはずだったんですよ。小屋自体も木でできてたりトタンでできてたり。レイアウトにどこか余白をつくるというのをやりたかった。効率は悪いんですけど、壁ひとつで仕切られるのではなく、壁と壁の間に空間が存在しているというような。
服部滋樹grafがつくった中央街区の小屋をイメージした模型
SOUQ
最初は、小屋が移動するというアイデアもありましたよね?
服部
はい。コストとかの問題で、結局実現しなかったですけど。
SOUQ
同じ百貨店業界の方からは、今でも「こんなフロアないよ」と言ってくれますけどね。
服部
オープンしたときは、リサーチの対象になってましたもんね。スークチームもホントすごかったです。イメージ力も強く、しかも柔軟に予想外のアイデアもディスカッションで生まれましたね。今までの百貨店を超える、なにか手探りなのに、みんな希望を持って計画が進みました。
服部滋樹

取材・文/蔵 均 写真/桑島 薫

うめだスークの誕生秘話について語ってくれた服部滋樹さん。次回第2回は、変わりゆくうめだスークについてお聞きします。

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