安達知江 第1回 自然と日々の暮らしの中で | SOUQ ZINE スークジン

安達知江 第1回 自然と日々の暮らしの中で

安達知江 第1回 自然と日々の暮らしの中で
独特のやさしい色合いと表情の作品で、国内外にファンの多いガラス作家の安達知江さん。アトリエを訪ねて岡山県に赴くと、そこは「明光窯」という立派な備前焼の窯元の一角でした。聞くと、窯は安達さんのお母様が叔母さんから引き継いだとのこと。陶芸の本場でつくられる、ガラス作品の世界を紹介します。
SOUQ
お母様が備前焼の窯をやっていらして、陶芸の道へと進む気持ちはなかったんですか?
安達
なかったですね。これだけ施設が揃ってるのに(笑)。小さいときから見ていたので、正直飽きてる部分もあるし、あまりにも日常だったので、素材を変えてものづくりをしたいと思ってガラスを始めたんですけど。そうすれば焼き物の良さも見えてくるかもしれないなあと思いつつ。でもガラスが面白かったので今も続けています。
安達知江安達さんのお母様が備前焼を焼く立派な登り窯。
SOUQ
大阪芸術大学のガラス工芸科にいらっしゃったのですが、そのときから作品づくりは始められたんですか?
安達
そうですね。そこで始めて今に至ります。
SOUQ
ガラスという素材を選ばれた理由は?
安達
あまり深くは考えてなくて(笑)。ガラスの溶けた様子が神秘的で…そんなぼやっとした理由だったと思います。
SOUQ
とりあえず陶芸の素材、土以外のものを選びたかった?
安達
土以外の素材で工芸をしてみたいと考えました。
SOUQ
ものづくりの世界には進みたかったということですよね?
安達
そうですね。こういう環境で育ったので、ものづくりをするのは普通だと思っていて。親族にほとんどサラリーマンがいなかったんですよ。自営業とかそういう人たちばかりだったので。だから会社勤めというのが想像つかなくて。
SOUQ
世の大半の人たちは会社勤めをしているんですけどね。
安達知江「明光窯」の一角にある安達知江さんのアトリエ。
安達
そうなんですよ。でも私にとってはそっちのほうがめちゃくちゃ特殊な世界だったんですよ。身近にいなかったので…逆に何をやってるんだろう?って(笑)。こっちの世界が当たり前だったので、ごく自然に選んだということです。

吹きガラス工房でアシスタント

SOUQ
大学を卒業されてからは、どういう経緯で今のようなガラス作家になったのですか?
安達
大学を出て、まずマイケル・ロジャースさんというアメリカ人のガラス作家さんがいらっしゃるんですけど、そこで3カ月だけプロジェクトのお手伝いをしながら勉強をして、日本に帰ってきてからは、岡山にある「グラス・スタジオ透明館」という吹きガラス工房でアシスタントを始めました。7年間アシスタントをしながら、作品の発表も続けていました。
安達知江
SOUQ
そういう工房もあるぐらい岡山はガラスづくりが盛んなのですか?
安達
めちゃくちゃ盛んです。ガラス作家さんもすごく多いですね。倉敷に倉敷芸術科学大学というのがあるんですけど、そこにガラスコースがあるんです。そこを出た人たちが、岡山に残って作家として活動されてる場合が多くて。
SOUQ
なるほど。だから岡山ではガラス工芸が盛んなんですね。
安達
それもありますね。なので大学を出て岡山へ帰ってきても受け入れてくださるところがあったので、そこで働きつつ。工房の先生が、「お給料はあまり出せないけど、ここでいくらでも作品をつくっていいよ。それを売ってお金に変えられるようになろうね」と言ってくださって。
SOUQ
いい先生ですね。
安達
はい、本当に。なので発表活動も制限なくできました。そうしているうち、「これでやっていけるな」と思ったタイミングで独立しました。結局7年かかりました(笑)。
安達知江
SOUQ
吹きガラスの工房から独立されて、完全に一人でやるようになったのはいつ頃ですか?
安達
3、4年前ぐらいですかね。
SOUQ
まだそんなに経ってないですね。
安達
その前から作品は発表はしてましたけどね。
SOUQ
大学のときに制作し始めたときから、モチーフは変わってたりしますか?
安達
学生の頃は、今のような作品はつくってなかったんですよ。
SOUQ
どういうものだったんでしょう?
安達
その頃はどうしても社会的なメッセージを込めたオブジェとか、そういう仰々しいものをつくらないといけないんじゃないかという固定観念があって…なのでそういうものをつくってましたね。

暮らしの中にインスピレーション

SOUQ
そこからどういうふうに変わっていったんですかね?
安達
大学を卒業して、ここに帰ってきて、自然の中で過ごしていたら、もう全然そういう発想に至らないし、いったん身の回りにあるものを観察して、丁寧につくっていこうと思い始めて、今のような作品を始めました。植物とか動物とか、ここは海も意外に近いので瀬戸内海の風景とかをモチーフに、そこに意味を一つ一つ見いだしながら。
安達知江
SOUQ
代表的な作品である「船」も海の景色からですね。
安達
そうです。祖母の家が海の近くなので、船も自分の原風景だったりするんですよね。
安達知江アトリエで制作中の「船」。
SOUQ
ここから少し歩くと、山や川などの風景が広がっているのですが、そこへ行って、作品へのインスピレーションにするんですね?
安達
そうです、そうです。暮らす中で見たものとか、そういうものが多いですね。日常のものを作品にするというのが、いまは一番自然かなって。でもきっと暮らす場所を変えると、つくるものも変わるのかなとは思います。
SOUQ
住んでらっしゃるのもこの近くですか?
安達
ここからクルマで2、3分ですね。
SOUQ
本当にのどかで自然が美しいところですね。
安達知江安達さんが山などにスケッチ帳を持って行って描いたデザイン画
安達
ホタルが出るんですよ、すごくいっぱい。
SOUQ
乱舞する感じ!
安達
自然しかないので、それにしか目がいかないですね。
SOUQ
その中でも、お好きな場所とかあるんですか?
安達
どこも好きなので特別…にはないんですが、強いて言えば家の裏山とかですかね。小さい神社があって…その山頂に鉄塔が立っているので、整備道を登山できるんですよ。そこで木の実やドライフラワーになりそうなものを摘んで帰ってきたりだとか。
安達知江
安達知江安達さんの自宅の裏にある山での風景。作品にもなっているハルジオンなどの花や植物、キツネ、タヌキ、イノシシ、シカ、サル、ウサギ、リス、フクロウなどの動物たちが暮らします
SOUQ
アトリエ内には、ドライフラワーがたくさん飾られていますけど、これもこの近くでとれたものなんですか?
安達
そうです。このあたりに咲いているものをババっと切って。置くところがないので吊るしてるだけなんですけど。
SOUQ
すごく素敵です。
安達知江

取材・文/蔵均 写真/桑島薫

生まれ育った岡山の自然をモチーフに作品づくりをしている安達さん。次回第2回は、安達さんの作品を手にした方の楽しみかたなどについて聞いていきます。

「安達知江硝子作品展」
2019年8月7日(水)~8月13日(火)
※催し最終日は午後5時終了
阪急うめだ本店10階『うめだスーク』北街区「スーク暮しのアトリエ」
作家在廊日時 8月7日午前10時~午後5時30分まで

Creator/Brand

安達 知江(あだちともえ)

ガラス作家

安達 知江(あだちともえ)

岡山県の山の中で、自然に囲まれた小さな工房でガラスのオブジェや器を制作。キルンワークという技法を使い、身の回りのささやかな出来事を作品にしています。

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