安達知江 第3回 キルンワークのやさしい色合い | SOUQ ZINE スークジン

安達知江 第3回 キルンワークのやさしい色合い

安達知江 第3回 キルンワークのやさしい色合い
ガラス作家として、岡山の自然の中で作品づくりを続けている安達知江さん。その独特の色合いや風合いはどのようにして生まれるのか? 独特の手法「キルンワーク」について話をうかがいました。
SOUQ
安達さんの作品は「キルンワーク」という独特の手法でつくられているということなんですが、そのために必要な機械や道具はどのようなものですか?
安達
まず焼成するための窯が必要ですね。最低限窯があればいいんですけど、それ以外に焼成したものを研磨する機械なども欲しいところです。
SOUQ
焼成すると、こんなに白くなるんですね?
安達
これはまだ石膏が付いたままだからなんです。型を割るとガラスが出てくるんですよ。
安達知江石膏の型の中に入れて焼成されたガラス。
SOUQ
石膏を使うんですね?
安達
そうなんです。まずワックスでつくった原型を石膏で覆います。石膏が固まったら原型を取り出して、石膏の内側に絵付けをします。
安達知江石膏の内側に施された絵付け。
SOUQ
ガラスではなく、石膏に絵付けをするんですね。
安達
そうです。そこにガラスを詰めて、窯に入れて温度を上げて溶かす。そこから日数をかけて徐々に室温まで冷ます。そうしないとガラスは割れるんですね。窯から出したら石膏を割って中身を取り出します。できたからといって型からパカっと取れるわけじゃないので、一つ一つ石膏を壊していきます。そこから余分なところを切ったり磨いたりする機械が必要となってきますね。
SOUQ
石膏の内側に描いた絵が、焼成することでガラスに移るんですね。
安達
そうなんですよ。
安達知江

陶芸用の釉薬を使って

SOUQ
そういう石膏を使って絵付けをすることをキルンワークって言うんですか?
安達
いえ、キルンワークというのは窯仕事のことなんです。キルンって“窯”という意味で、もっといろんな技法がありますよ。これは窯から出したものを水に浸したんですが、ちょっと柔らかくなって、石膏が取れて、ここから磨いていきます。
安達知江水に浸して石膏が取れて、姿を現し始めたガラス。
SOUQ
結構時間がかかりそうですね。
安達
かかりますね。
SOUQ
ガラスが現れると、石膏の絵付けが移っていますね。
安達
色が完全に移りきらない部分は、後で色を足したりもします。
SOUQ
ガラスに直接絵付けするのとは、色合い、風合いが全然違いますね。
安達
そうですね。陶芸用の釉薬を使っているんです。ガラス用の絵の具は色がわりとそのまま出るんですが、陶芸用の釉薬は熱によって微妙に色合いが変わったりするんで、好んで使ってますね。
SOUQ
その発想は、この陶芸に囲まれた環境がそうさせたのですかね?
安達
無意識かもしれないですが、そうかもしれませんね。ただ備前焼は釉薬を使わないですけどね。
SOUQ
そうでした!
安達知江

緻密に組まれたプログラム

安達
ガラスを焼くときは、機械によって温度をコントロールしないと割れちゃうんで、作品の形や大きさによって自分でプログラムを決めるんですよ。
SOUQ
プログラム?
安達
はい。この図はめちゃくちゃ簡単ですけど、焼成プログラムを表したものです。
安達知江安達さんが手書きしてくれた焼成プログラムの図。
SOUQ
時間によって温度が変わるということですか?
安達
はい。まず石膏を乾燥させます。石膏に水分が残っていると気泡が出るので、それを防止するための工程。そこから6時間ぐらいかけて徐々に温度を上げていったあと、3時間ぐらい同じ温度をキープして、ここで湿気を抜ききります。
SOUQ
まずは乾燥なんですね。
安達
あとはガラスの温度を500度で揃えて3時間ぐらいキープしてあげる。そのあと3時間ぐらいかけて温度を上げて、一番高い温度の8600度台…これはものによって温度が変わりますが、そこで数時間かけてガラスを溶かしきります。
SOUQ
陶器を焼くときに近い高温ですね。
安達知江
安達
481度というのが、私が使っているガラスの除冷点といって、ガラスのひずみを取る温度なので、いったんこの温度で落ち着かせてあげます。ガラスって粒子と粒子の手のつながりがちょっとしたことで離れてしまい、そうすると割れるんです。なので、みんなでつないでいる手が離れないように、1回落ち着かせてあげる。
SOUQ
手をつないでいるための除冷点なんですね。
安達
はい。そこから室温までさらにゆっくりと、ものによっては数日かけて温度を下げていきます。これは本当に簡単なもので、色や形によってもプロゲラムは変わりますね。黄色や赤色は冷めやすい色なので、他の色よりリスクがあります。だからたとえば濃い青色と濃い黄色をいっしょに溶かすと、冷める温度が違うので、歪みもできやすい。厚みに極端な差がある原型なんかも歪みやすいので、そういうときは繊細にプログラムを組んであげます。
安達知江
SOUQ
かなり緻密なプログラムですね。キルンワークを始められたのは、いつ頃ですか?
安達
大学のときからです。当時在籍したコースの方針としては、ガラス全般なんでもできるようになりなさい! ということだったんですよ。なので吹きガラスもやったしキルンワークもやった。あとは教えていただいた先生がオブジェを積極的に制作されている方でしたから、自然とオブジェ寄りになりました。うつわもいいけどまずはオブジェ。
SOUQ
生活志向というより、芸術志向だったんですかね。
安達
オブジェをつくるとなると、吹きガラスは技術がないとなかなか難しいんです。トロトロに溶けたガラスを手を使わずに道具を使って形づくるので。そうすると形も限られて、どうしても曲線のものや有機的なものにになってしまいがちで。となると、造形的なものをつくりやすいキルンワークがやりやすかったんですね。

取材・文/蔵均 写真/桑島薫

石膏を使って窯で焼くキルンワークで、独特のやさしい色合いと風合いを出す安達さんの作品たち。次回最終回は、安達さんが好きだという韓国への旅から、今後の取り組みについても話を聞きました。

「安達知江硝子作品展」
2019年8月7日(水)~8月13日(火)
※催し最終日は午後5時終了
阪急うめだ本店10階『うめだスーク』北街区「スーク暮しのアトリエ」
作家在廊日時 8月7日午前10時~午後5時30分まで

Creator/Brand

安達 知江(あだちともえ)

ガラス作家

安達 知江(あだちともえ)

岡山県の山の中で、自然に囲まれた小さな工房でガラスのオブジェや器を制作。キルンワークという技法を使い、身の回りのささやかな出来事を作品にしています。

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