安達知江 第4回 韓国と旅、そして岡山のものづくり

キルンワークという独特の手法でガラス作品づくりをする安達知江さん。最終回は、仕事の合間に楽しんでいる韓国への旅や、最近盛り上がりを見せている岡山のクリエイティブについて語っていただきました。
- SOUQ
- 個展もかなりの数をやってらっしゃるので、その出品作品をつくるだけでも、かなりの数になるんじゃないですか?
- 安達
- もういっぱいいっぱいです(笑)
- SOUQ
- 個展やイベントなどは、つくらないといけないという大変さはあると思うのですが、いろいろな方に会えるとか、そういうよさもあったりするのですか?
- 安達
- それはもちろんですね。年がら年中、この山の中のアトリエにいるので、人とお話しできたり、社会とのつながりの場なので(笑)、意義は絶対あります。

- SOUQ
- だいたい年にどれぐらい出展されているのですか?
- 安達
- 覚えてないなあ…。
- SOUQ
- 覚えられないぐらい結構な数ということですね。
- 安達
- 個展ではないにしろ、1、2カ月に1ー2つはなにかしらがあるという感じですね、今年は。
- SOUQ
- それはかなり多いですね。
- 安達
- 去年は自分の限界を見極めてみようという年に設定していて。自分の体力と作品のつくるペースがどこまでならセーフなのか、体も心も充実していたのでいい機会だ、と、それを見極めようと思っていました。
- SOUQ
- ギリギリまで挑戦してみたということですね(笑)。限界はわかりましたか?
- 安達
- 去年の私はバカでしたね。

- SOUQ
- (笑)。じゃあ、今年は少し抑え気味に、ですかね?
- 安達
- そうですね。去年よりは抑えています。さらにもう少しずつ抑えていきたいなと最近は思っています。
岡山から韓国へ直行!
- SOUQ
- ふだんの制作時間というのはどれぐらいなんですか?
- 安達
- 朝8時から夜の9時くらいまでです。展覧会近くになるともっと遅くなりますけど。
- SOUQ
- 結構長いですね。
- 安達
- グワーっと体を動かすわけでなく、ずっとここで淡々と型をとったりとかガラスを削ったりしてるので…まあマラソンと思えば。
- SOUQ
- マラソン風制作スタイルなんですね!
- 安達
- そうです。ずーっとやり続けてるだけでいいので。それを何カ月も続けています。いま1年のうち、ほとんど休みはないですね。


- SOUQ
- 休みなしですか…すごい。
- 安達
- いまはそれでいい。でもずっとアウトプットばかりしてるので、インプットする時間も絶対必要だと思うので、仕事を少しセーブして、そういう時間をとりたいなと思っています。
- SOUQ
- もしインプットをする時間ができた時には、なにをやってみたいですか?
- 安達
- 旅行に行きたいです。
- SOUQ
- いまはまとまった休みがないから行けてないですもんね。
- 安達
- まあでもチャッと行ってますが(笑)。
- SOUQ
- そうなんですか!どちらのほうへ?
- 安達
- 私、韓国好きなんです。K-POPが好きで。
- SOUQ
- アトリエの中にSHINeeの大きなポスターが貼ってありますもんね。

- 安達
- そうなんです。学生の頃からずっと好きで。岡山から韓国に行くのって、もう東京行くのと時間もお金もあまり変わらないんですよ。岡山空港から毎日直行便が出ていて、復路は朝帰ってくる便なので、1泊1日ぐらいの旅程でいけるんです。昼にソウルへ行って夜にコンサートを見て、次の日の朝帰って来て、そのまま制作にかかるみたいな。
- SOUQ
- なるほど。それはそんなに時間も取られず、いいリフレッシュになりますね。
- 安達
- 空港は、ここからクルマで35分ぐらいなので便利ですしね。


- SOUQ
- それはいいですね。これから休みがまとめて何日間か取れたら、韓国以外で行ってみたいところはありますか?
- 安達
- 海外だと、タイとかベトナムとか東南アジアに興味あります。ヨーロッパなどは文化としては成熟していて、古いものも洗練されたものも見られますよね。それよりもアジアのいい意味で隙みたいなものが好きなんですよね。
- SOUQ
- 隙ですか。それって、安達さんの作品にも通じているような気もするのですが…。
- 安達
- ちょっとあるのかもしれないですね。完璧にピカピカにというようなものにはあまり惹かれなくて、なんかどこかゆらぎがあったり、隙間があったりとか、そういうものが好きなんですよね。
これからの岡山のものづくり
- SOUQ
- 東南アジアに旅して帰ってきたら、また新たな発想や方向性が生まれてくるかもしれませんね。
- 安達
- かもしれないですね…あっ、新作の「居酒屋グラス」は韓国や台湾に旅したときに発想したものですね。
- SOUQ
- 居酒屋グラス? それはまたなんでですか?
- 安達
- 韓国や台湾の街中で既製品のグラスがあるじゃないですか? そのサイズでつくったグラスなんですよ。

- SOUQ
- ちょっとありそうでないサイズ感でいいですね。ロウソクの絵もいい。
- 安達
- ちょっと架空の居酒屋みたいなものをイメージして、このグラスをきっかけに食器として展開していったら面白いかな。うつわもストーリーをもたせたら自分らしいかなと思って。
- SOUQ
- 居酒屋はお好きなんですか?
- 安達
- いや、そんなに行かないですけどね(笑)。でも旅先では行っちゃいます。
- SOUQ
- 最近、岡山でものづくりが活気づいているような気がするのですが…。
- 安達
- 最近作家さんが移住してくるというケースが多くて。私が知っているだけでも結構な人数です。その移住者が移住者を呼ぶ、みたいな。

- SOUQ
- “晴れの国”っていうぐらいだから、気候的にもものづくりに向いているのかもしれませんね。
- 安達
- どうなんでしょうね。まあ家賃は安いと思いますけど(笑)。あとは岡山って交通の便がめちゃくちゃいい。四国にも行けるし、山陰にも行けるし、関西にも近い。交通の要所なんですよね。岡山に移住してきた人たちと元々あるコミュニティが交われば面白いと思うんですけどね。
- SOUQ
- そこはまだこれからなんですかね?
- 安達
- だと思うんですけど…。ずっとここにいて出歩かないんで、そういう動きもきっとあるんでしょうけど、わからないです(笑)。ダメですよね、そういうの(笑)。すごく素敵な作品をつくられる方が大勢移住してこられたので、外の感覚と地元の感覚が交わればいいなあと思います。
取材・文/蔵均 写真/桑島薫
Story
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Creator/Brand

ガラス作家
安達 知江(あだちともえ)
岡山県の山の中で、自然に囲まれた小さな工房でガラスのオブジェや器を制作。キルンワークという技法を使い、身の回りのささやかな出来事を作品にしています。