アートなジュエリー展に、真珠の新風 | SOUQ ZINE スークジン

アートなジュエリー展に、真珠の新風

アートなジュエリー展に、真珠の新風

12月18日(水)~25日(水)、阪急うめだ本店9階アートステージでは、「コンテンポラリーアートジュエリー展 vol.8[JEWELISM@H]」が開催されます。これは、「日常にアートな輝きを」をテーマに、21組のクリエイターが個性的なアクセサリーを披露するというもの。今回注目したいのがEuripides(エウリピデス)のコーナーです。Euripidesとは、真珠の生産者、ジュエリー作家、真珠を身につける人…三者の顔がお互いに見えるような新しいジュエリー・プロジェクト。この試みをプロデュースする株式会社GHIBLIの代表、坪内知佳さんにお話をうかがいました。

日本中の水産の現場を飛び回る坪内さん。おじいさまは福井県下でも有数の実業家だったそうですが、その血を引いているのか、坪内さんもテレビや雑誌、新聞などメディアへの登場は数えきれず、スイス銀行や世界的な経済誌『Forbes』から賞を与えられるなど、33歳にして国内外から注目されるビジネスウーマンです。

Martjewelry真珠の新しいプロジェクト、「Euripides」をプロデュースする株式会社GHIBLI代表の坪内知佳さん。

坪内さんが注目されるようになったのは、漁業の6次産業化に取り組み、推進しているから。6次産業とは、生産者である1次産業、加工業の2次産業、流通・販売する3次産業を融合し、新しいビジネスを生み出そうとするもの。山口県の萩大島でスタートして今年で10年目になります。

宇和島で出会った一つのパール

「19歳で余命半年宣告をされて大学を辞め、21歳で結婚をして山口県の萩へ行き、息子が生まれて、子どもが2歳半のときに離婚して…、そのとき民事調停や裁判もやったので…」。

さすが、世界を股にかける女性だけあって、自身のプロフィールを語るときも、よどみなく、ときにジョークも交えながら、次から次にジェットコースター的人生のエピソードを紹介してくれます。裁判は住民票があるところでするということで萩の街にとどまっていた坪内さんは、萩大島の漁師と出会うことに…。

「ぶらぶらしてたら、『一人か? 魚あげるわ』ってお魚をプレゼントしてくれて、『島に来い』というからついて行ったら、いいところだなあと思って。彼らの生活を見ていると、魚が獲れたぞ! って酒を飲んで、獲れなくても、しょうがないとまた飲んでる(笑)。苦しい時期でしたが、『私、まだまだ生きていけるわ』と思いましたよ」。

Martjewelry

そうやって漁師たちとの交流を深めていく坪内さんでしたが、彼らのビジネスは衰弱していっていることがわかります。「このままでは、この島なくなっちゃうなあ」と一念発起。天然鮮魚を直販するビジネスモデルに取り組むなど、6次産業化を進める「萩大島船団丸」を率いることになります。

Martjewelry「萩大島船団丸」の漁師たちと坪内さん

船団丸を軌道に乗せた坪内さんには、その後、高知や鹿児島からコンサルティングや事業の話が次々と持ち込まれ、全国各地を忙しく駆け回ることに。そして2年前に愛媛県の宇和島を訪れたときに、Euripidesのプロジェクトのきっかけとなるパールに出会います。

「宇和島パールを生産する愛媛は日本一の真珠生産県なんですけど、宇和海の養殖場に行ったときに、他の真珠は売れてなくなっているのに、大きくてきれいな珠が一つ、ぽろんと残っているのがすごくインパクトがあって。『どうしてですか?』と聞くと、『これは9.9999mmだから』ということなんですよ。真珠には10mm珠という一つの基準があって、この直径に少しでも足りないと売れ残ってしまう」。

また、売れ残りはしないまでも、規格外だからといって安価に買い叩かれるケースもあるそうです。貴重な天然資源を、規格外だからといって安くすべきという市場の姿勢はどうなのか、命に対して適正な対価を支払うべきではないのか、坪内さんはそう感じたと言います。

Martjewelry坪内さんが宇和島で出会った9.9999mm珠を使ってつくったリング。坪内さんのおじいさまがおばあさまに贈ったジュエリーの一部もあしらわれています。

そうした問題意識から、Euripidesのプロジェクトはスタートしました。Euripidesとは、紀元前に生きたギリシアの詩人の名前で、「海は人のけがれを洗い流してくれる」という言葉を残しています。

「パールって海のミネラルを吸うものじゃないですか。だから海のきれいさとか本当のエネルギーがつまっていると思うんですね。アコヤガイなら、ひとつの貝に1個の真珠が育つわけで、いわばひとつの命を殺して真珠が生まれる。そのストーリーを私たちはちゃんと語らないといけないし、命とか恵みに感謝すべきじゃないかなと思います」。

遠い昔の地中海の詩人の言葉のように、“海の恵みを受け取って、美しく、穏やかで健やかな心身を”というのがEuripidesのコンセプト。だから、生産者が手間暇かけてつくったけれども、“規格外”とされて取引されないような9.999mmの真珠も買い上げます。

MartjewelryEuripidesが扱う少し形が個性的な真珠たち。

「ジュエリーをつくっていただく作家さんには、どこの海で誰がつくった真珠なのかを伝えます。それは、やはり生産者と直接取引しているからできることなんで。それから、どんな方がどんな想いで真珠を身に着けているか。たとえば「滋賀出身の方が、今は東京に住んでるけど、琵琶パールを身につけて喜んでくれたよ」ということを生産者に返すことが、いいスパイラルをつくれるかなと考えています。生産者、作家、お客様が、それぞれひとつひとつに想いを込めて、一点ものの真珠ジュエリーが生まれればいいな思っています」。

Martjewelry写真左は石垣島生まれのブラックパール。右は志摩でとれたグリーンのパール。製作は厚生労働省認定ジュエリーマイスターの藤巻今朝男さん。Euripides発足時から製作に携わっているそう。

プラスチックゴミなど海の環境保全の問題が取りざたされる今、Euripidesの取り組みは注目されます。

「Euripidesのジュエリーを買うことで、海とつながっていると感じたり、真珠の育つ美しい海を守ることの大切さを考えるきっかけになってほしい。つくる側も、それぞれの語りで伝えていければいいし、せっかく消費活動を通してつながっていけるのであれば、輪を広げて、みんなでいいことしたいですよね。みんなが気持ちよくなれる世の中をつくりたい」。

Martjewelry

Euripidesに共感した作家たち

生産者、ジュエリー作家と身につける人をつなげるEuripidesプロジェクト。「コンテンポラリーアートジュエリー展vol.8[JEWLISM@H]」では、この考えに共感してくれた4人の作家が、Euripidesの真珠を使った作品を披露してくれます。

まず一人目は、ふだんからパールを使ったジュリーを制作している「ohrora」のデザイナー・KEIKO MORIさん。初めて見た双子の真珠との出会いと「真珠は堅苦しいイメージ」と言われた言葉が印象的で、真珠が気になる素材となったそうです。自然がつくりだすピンクやグリーンのさまざまなカラーをまとい、ブランド名のように輝く「ohrora」のジュエリー。KEIKO MORIさんは、生産者から話を聞いて真珠の知識を高めるということも行なっているので、Euripidesの活動と通じるところもありそうです。

Martjewelry「ohrora」の作品たち。

二人目は、ギター職人歴25年というユニークな経歴の持ち主、shinkomatsuさん。オーダーギターに使われる木の美しさに魅了され、端材を何かに活かせないかというところからアクセサリーづくりへ。木材の耐久性や素材の持つ特徴の活かし方にこだわり、デザインと機能性を兼ね備えたものづくりを目指しています。木材×パールでユニークな化学反応が起きそうな予感の今回のコラボレーション。どのような作品が生まれるか楽しみです。

Martjewelry「shinkomatsu」の木製のリング。

次に紹介するのは、赤ちゃんが触れてもいいようにと、金属、接着剤、ホルマリンを一切使わずに、おかあさんが身につけるアクセサリーづくりをしている「mahya」さん。やわらかい糸をていねいに編み込んで生まれる作品は、子育て中の女性にとっては、安心して身につけられるうれしいアクセサリー。これまでにコットンパールを素材にした作品もつくっているので、パールとの相性も良さそうです。

Martjewelry「子どもを想う」をテーマにした「mahya」のアクセサリー。

最後に、特殊加工を施した軽やかで丈夫な紙とさまざまな素材を組み合わせる「PAPERMAKE」。紙を価値あるものに変えたいという想いのもと、アクセサリーや雑貨などジャンルを問わず作品づくりをしているブランドが、パールという素材とどうコラボレーションするのか興味深いです。

Martjewelry「PAPERMAKE」のアクセサリー。

使う素材、個性がそれぞれ違う作家たちが、“海をまもり海にまもられる” Euripidesの真珠を使ってどのようなジュエリーを披露してくれるか? 21組のクリエイターがつくり出すアートなジュエリーとともに、楽しみは広がります。

取材・文/蔵均 写真/コーダマサヒロ

12月18日(水)~25日(水)※催し最終日は午後6時終了
コンテンポラリーアートジュエリー展 vol.8
[JEWELISM@H]LIMITED JEWELRY STORE
阪急うめだ本店9階アートステージ
告知サイト

ALIMANO(アリマノ)
ARRO(アロー)
AGS(エージーエス)
ogrora(オーロラ)
OZU1PRODUCTS(オオズワンプロダクツ)
o.d.a(オーディーエー)
KIKKOU(キッコウ)
GENAC ROUE(ジェナックルー)
糸糸(タバネ)
tsububu(ツブブ)
shin komatsu(シンコマツ)
花背WARA(ハナセワラ)
ハヤシアカネ
HIKARU ITO(ヒカルイトウ)
PAPERMAKE(ペーパーメイク)
PRISM(プリズム)
MAAYA(マーヤ)
MARIA SOLOAZANO(マリアソロザノ)
MiyuMachida(ミユマチダ)
megumi tsukazaki(メグミツカザキ)
moi.toi.(モワトワ)

※50音順です。

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