あわびウェア(Awabi ware) 第4回 里山が、自然と人間をつなげる

独特の色合いとシンプルでいて使いやすいデザインで人気の「あわびウェア」。代表の岡本純一さんに話を聞く連載最終回は、岡本さんの自宅まで押しかけ、自然や創作についてうかがいました。
- SOUQ
- アトリエは、本当に気持ちのいい場所ですね。いつもここにはどれぐらいいらっしゃるんですか?
- 岡本
- ボクはだいたい朝9時から5時半ぐらいまで。遅いときは遅くなりますけど。
- SOUQ
- ご自宅もこの近くなんですか?
- 岡本
- はい。クルマで5分ぐらいです。自宅もこんな感じですね。ここまで古くないですけど古民家で。行ってみます? 窯もありますから。
- SOUQ
- えっ、いいんですか。ぜひおじゃましたいです。あっ、先ほど名前が出た、塗師の赤木明登さんの本がありますね。
- 岡本
- ボクは赤木さんの影響もすごく受けてまして。この『二十一世紀民藝』では、うちのことも紹介してくれていて。「あわびウェア」を民藝として紹介してくれたのは、赤木さんぐらいなので。この本面白いですよ。
- SOUQ
- ぜひ読んでみます。


(クルマで5分、岡本さんのご自宅に移動します)
- SOUQ
- 大きな家ですね。
- 岡本
- 借りてるんですよ。
- SOUQ
- 立派な窯がありますが、これはご自分でつくられたのですか?

- 岡本
- はい。これが効率のいい窯で、小さいのですぐ温度が上がって、だいたいのものは1日で焼き上がります。
- SOUQ
- ツリーハウスもあるんですね。
- 岡本
- はい。子どもの遊び場です、まあ登ったのは1、2回だけですけど。
- SOUQ
- 目の前に当たり前にあると、そんなもんなんですかね。あの上でボーッとしていると気持ちよさそうですけどねえ。
- 岡本
- いまの子どもは外での遊び方をあまり知らないですよね。ボクはこの庭を開墾しているので、その背中は見ているとは思うのですが、あえて自然の遊びはさせてはいないので。

- SOUQ
- 庭を整備ではなく、開墾ですか。うわー、めっちゃ広いですね!
- 岡本
- ここは全部竹林だったんですよ。ずーっと笹薮だったところを全部開墾して。開けたはいいけど、これからどうやって使っていこうかと思案中です。
- SOUQ
- これだけ広かったら、なんでもできますね。フェスやりましょうか?(笑)
- 岡本
- ぜひ企画してください(笑)
- SOUQ
- これだけ開墾するのは大変だったでしょうね。
- 岡本
- ここまでくるのに2年半かかりましたね。ちょこちょこやりながら、最近では木こりにも来てもらって、チェーンソーでやりながら。なんか里山をつくりたいなと思っていて。

- SOUQ
- 里山ですか
- 岡本
- 先ほどの赤木明登さんの本に、「民藝の道具というのは、自然と人間をつなげるための装置だ」ということが書かれていて、里山もそうやなあって。人間が住んでいる領域と自然の領域があって、あいだに里山があるからこそ人間が自然に入っていける。
- SOUQ
- 一種の装置というわけですね。
- 岡本
- 里山がないと、人間と自然って隔てられるんですよ。だから自然を制御しなければならないし、人工と自然をはっきりと分けて闘っていかなければならない。里山があることによって、やんわりと自然に入っていけるんですね。民藝の道具もそういう存在やなあと思って。
- SOUQ
- 民藝と里山は通じるものがあると。
- 岡本
- 心地いいんですよね里山って。歩いて入っていっても気持ちいいし。まあ獣がいたり、怖さもあるんですけどね。蛍もいますよ。

- SOUQ
- 蛍がいるということは水があるんですか?
- 岡本
- はい。低い山ですけど、山頂から農薬に影響を受けてないきれいな水が流れてきてます。ここには、セリやキクラゲ、ナメコとかが自然に生えてきますよ。意外と食べられるものがあって。ちょっとものづくりとつながってるんかなあと思いました。
- SOUQ
- こういう環境にいると、いろいろ考え方も変わってくるでしょうね。
- 岡本
- そうですね。これは竹チップといって、切った竹を機械でチップにしてます。山のようにあったのを農家さんにあげました。これを袋に詰めて発酵させると、乳酸菌が豊富なので土壌改良によくて、有機肥料になるみたいですね。

- SOUQ
- このへんは農家さんが多いんですか?
- 岡本
- ボクらの友達は、わりと移住者で農業をやっている人が多くて。ボクはUターン組ですけど、移住者同士でコミュニティがあって。横のつながりがあるんですよ。だいたい移住者は顔見知りで、だいたいみんなオーガニックで、無肥料で作っている人も多いですけど、そういう人と物々交換したりする。たとえば竹チップを取りに来てくれたら、野菜をもらうとか。そういうのが楽しみになっていますね。
- SOUQ
- 淡路島って広いんですけど、そういう移住者のつながりって、島全体に広がっているんですか?
- 岡本
- 全域ですね。人気のあるスポットはあるんですけどね。
- SOUQ
- それはどこですか?
- 岡本
- 五色っていうところなんですけど。ここからちょっと南に下ったところに農業者が多い米どころがあります。

- SOUQ
- 淡路島も、岡本さんが来られた頃と比べて変わってきましたか?
- 岡本
- そうですね。新しいお店もどんどん増えているし、移住者も多い。
- SOUQ
- たしかに、岡本さん世代の移住者がどんどん増えている印象です。
- 岡本
- SOUQさんも分室を借りてはいかがですか? 家賃もすごく安いですよ。
- SOUQ
- いいですねえ。考えようかな。
- 岡本
- すぐそこにいい物件があるんですよ。今から見に行きますか?
取材・文/蔵均 写真/桑島薫
Creator/Brand

陶芸家
Awabi ware(あわびウェア)
受け継ぐ器をコンセプトにした日用食器のブランドです。江戸後期から明治期に栄えたみ珉平焼(淡路焼)の制作スタイルに学びながら、生活道具としての器をつくっています。