知られざる聖地、井原生まれのデニムアイテム | SOUQ ZINE スークジン

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知られざる聖地、井原生まれのデニムアイテム

知られざる聖地、井原生まれのデニムアイテム
9月から新たにスタートした新コーナー「SOUQ IT!」。ものづくりにまつわるストーリーやつくり手の想いにふれながら、魅力あるアイテムを紹介していきます。今回は、昔からデニムを多く生産する岡山県井原市でつくられている「Blue Trick」のアイテムをフィーチャーします。

「井原市役所では、毎週水曜は“デニムの日”で職員がジーンズOKなんですよ。地域創生課なんて年中デニムを着る。だから定番とは違うちょっと変わったアイテムが欲しいんですよね。そういうときは『Blue Trick』の服を着てくださいと言ってますよ」。

そう話してくれたのは、岡山でも広島の福山市に近い場所に位置する井原市に拠点を持つデニムブランド「Blue Trick」の代表・水谷哲士さん。

Blue「Blue Trick」の代表・水谷哲士さん。

デニムといえば、同じ岡山県にある児島が有名ですが、水谷さんの言葉からもわかるように、井原市でもデニムづくりが盛んに行われています。その中でも個性的な生地、デザインで最近注目されているのが「Blue Trick」。うめだスークのバイヤー・青木博美とともに、井原市の工場を訪れました。

Blueうめだスークのバイヤー・青木と水谷さん、そして奥様の美知香さん

まずは、“デニムの街”として、児島と井原はどのような違いがあるのか水谷さんに聞いてみました。

「児島はジーンズの街で、私ども井原はデニムの街。何が違うのかっていったら、製品になったものをジーンズと呼んでいて、デニムは生地の段階のことを言うんですね。児島はメーカーが多くて発信力がある。井原は基本的に職人の街で、井原で織ったものを児島で製品化するパターンが多いんです。児島には機屋はほとんどないですからね」。

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Blue水谷さんに井原市にある機屋・高木織物に連れて行ってもらいました。「この織機はドビー織機。デニムの生地を織ることがほとんどですね」と代表の高木茂さん。昭和30~40年代は井原市内に350軒ほどあった機屋も、今では20軒ほどになったそう。それでも日本のデニム生地のほとんどは井原市で織られています。

「私が知っているジーンズメーカーは、ほとんどが井原に生地の発注をしてますね。なぜかというとオリジナルのものをつくれるので。井原に来ていい生地を探してデニムアイテムをつくってるんですよ」と青木。

子ども服出身の奥様とともに

2代目社長の水谷さん。元々は大手メーカーからの仕事を受けていた加工業だったのを、自分の代になってオリジナル商品をつくるようになります。

「私が継いだときは、受け身の会社だったんですね。近所の人が仕事を取ってきたから縫うかという感じで(笑)。よくわからないままにやってました。妻が元々福山の子供服メーカーでデザインやパターンをやっていたので、辞めてこっちに帰ってくるときに、井原はものづくりの産地で織物の街だし、その特徴を生かした形で服をつくったら、東京とか大阪にも勝てる要素があるんじゃないか。それをコンセプトにしてものづくりをしていこうということになりました」。

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まずは生地屋へ行って生地を探しチョイス。そこからそれに合ったデザインを起こしていくというのが「Blue Trick」のスタイル。デザインやパターンは美知香さんがすべて担当します。

Blue工場内に大量に残されているパターン。「どれぐらいあるか数え切れないですね」と美知香さん。
Blueまず生地があって、それを元に美知香さんがデザインを起こします。

訪れた日は土曜日だったため、工場はお休みでしたが、ふだんは30代から86歳まで、7人の縫い子さんが働きます。

「地元の方ばかりで、86歳の縫い子さんも元気ですよ。毎日自転車で来られます」と話してくれたのは水谷さんのお母様の律子さん。さすがは織物の街で、ベテランの縫い子さんも健在。律子さんも今もミシンに向かいます。

Blue「昭和30~40年代は、この地区でデニムがすごく盛んでしたね」と水谷律子さん。

15年前にスタートした「Blue Trick」ですが、5年前に児島のジーンズストリートに店を出したのが転機になります。

「セレクトショップに卸したりしてたんですが、売れなかったですよ。何が原因だろうと考えたら、埋もれちゃうんですよ。アイテムをたくさん並べて世界観が出せればいいんですけど、よそのシャツがいっぱい並ぶ中、うちの商品がポツンと1点だけあっても埋もれてしまう」と水谷さん。

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倉敷の美観地区にあるショップへ

「Blue Trick」の世界観を確かめるために、2017年にオープンした倉敷・美観地区にあるショップを訪れました。

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昔ながらの街並みが残る一角にあるショップは、ジーンズだけでなくさまざまなデニムアイテムであふれていました。

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「15年前にブランドを立ち上げたときは、和柄が多かったんですよ。妻が子供服のメーカーに勤めていたときに、和柄が多かったものですから」。

水谷さんがそういうように、「Blue Trick」のアイテムは、どこか和の要素をまとったものが多いです。

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Blue「Blue Trick」のデニムコート。「大正時代の着物を写真に撮って、それをそのまま織柄に変えていってるんですよ。昔の人はすごく物持ちがいいから、破れたらそこをパッチワークするじゃないですか。それを織物で表現してるんですよ」と水谷さん。

「デニムブランドはいろいろあるけど、ジーンズだけでなく、いろいろな服を一番やってらっしゃるのが『Blue Trtick』。他はやはりパンツだけというところが多い。そこから進化してるから売れてるんだと思います」と青木。

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新アイテムは思いつきでどんどんつくっちゃうという水谷さん。これから寒くなると、デニムの生地の中に中綿やダウンを入れるジャケットやコートも導入予定だそうです。

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ブランドのトレードマークの日本地図。「ジーンズって色落ちするでしょ? でも日本地図の部分はラバーなので色落ちしないんですよ。だから履き込むほどに日本地図がどんどん浮いてくるというトリック(笑)。『Blue Trtick』はブランド名の通り、何か一つ商品にトリックをつけたいと思ってるんです」。

来年には、工場を拡張しショップも併設するという「Blue Trtick」。備後絣にルーツを持つという井原市のデニムを使い、これからも個性的なアイテムを次々に生み出してくれるに違いありません。

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取材・文/蔵均 写真/コーダマサヒロ

10月2日(水)~10月8日(火) ※最終日は午後5時終了
阪急うめだ本店 うめだスーク 中央街区5・6番小屋
「岡山デニム職人展 BLUE TRICK」

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