caart.(カート) 第3回 人に支えられ育てられていく

「caart.」のデザイナー橋本知子さんのものづくりに迫る「ピックアップクリエイター」。前回は、緻密に計算されたデザインについてお話をお聞きしましたが、話題は、ブランドを支え、ともに育てるさまざまな方たちのことに広がりました。
- SOUQ
- 橋本さんの緻密な計算で成り立つデザインに縫製工場の職人さんはどうこたえてくれますか?
- 橋本
- 数字で決められているデザインをおもしろがってくださっているのが、ありがたいですね。職人さんたちが、数値のルールを理解してくださっていて、私が指示書に数値を書き忘れていても、「ここは5ミリで大丈夫ですよね?」なんて聞いてくださったりして。

- SOUQ
- いいチームワークですね!
- 橋本
- こちらが作りたいことに対して、ベストな方法を提案してくださることもあります。縫製に大切なのはデザインを具現化する想像力だから、っておっしゃっていて。
- SOUQ
- 職人らしい発言、頼もしいですね!
名前は〝日常着〟でありたいと願いを込めて
- SOUQ
- ところで、「caart.」というブランド名は、どういう意図でつけたんですか?
- 橋本
- 日常着を作りたかったので、かしこまっているというより、スーパーマーケットにあるようなカートでたくさんお買い物をしているようなイメージで「カート」にしたんです。

- SOUQ
- ロゴもかわいらしいですよね。
- 橋本
- ありがとうございます!これは、前職時代からお世話になっていたWEBデザイナーの中村勇吾さんに作っていただいたもので、タイプライターの書体がベースになっているんです。ルックの写真は、ブランド設立当初から現在も全体ディレクションを中村勇吾さん、撮影をフォトグラファーの淺田創さんに撮っていただいています。淺田創さんとは、勇吾さんが手がけるプロジェクトで一緒にお仕事をさせていただいた際にご紹介していただきました。

- SOUQ
- ロゴも写真も素敵ですよね。そして、関わっていらっしゃるスタッフが豪華!
- 橋本
- はい、そうなんです。ありがたいことです!いろいろな方のご協力を経て、このブランドは出来上がっていると感じています。
お客さまに会えることが励みになる
- SOUQ
- 今は、ブランドのファンもたくさんいらっしゃると思いますが、ブランドを立ち上げた当初は、認知を広げるためにどんなことされていたんですか?
- 橋本
- うーん、そうですね……なにもしてないんですよね(笑)

- SOUQ
- え!なにも?!ですか?!
- 橋本
- フェイスブックやツイッター、ブログへの投稿はしていましたけどね。それ以外は特にしていないんです。ただ、ブランドから発信できるものに関しては、真摯に向き合うというか、真剣に書くというか。そういうことは、当時から今も変わらずに心がけていますね。
- SOUQ
- 確かに、ブログの文章で、橋本さんの人となりというか、丁寧な仕事ぶりや真剣なものづくりの心は伝わります。
- 橋本
- 嬉しいです!「caart.」のことを広く知っていただいたのは、A3サイズのトートバッグだったんです。


- SOUQ
- いろいろな色や素材の組み合わせが素敵ですね。
- 橋本
- 前職でプレゼンをするときに、A3資料が入るちょうどいいバッグがなかったのが発想のヒントになっています。電車に乗るときに、横型だとジャマになってしまうので縦型にしました。ファッションニュースのエディターの方が紹介してくださったのがきっかけで、知っていただきました。
- SOUQ
- 普段は、オンラインでの販売がメインだと思いますので、SOUQなどリアル店舗でのポップアップでお客さまと直接お話しするのはいかがですか?
- 橋本
- お客さまと実際にお会いできるのは、とてもありがたい機会ですね。関西の方って、忌憚なく意見もおしゃってくださいますから、それもありがたくて。いろいろな体型の方に試着しただけるので、そういうのを見ることができるという意味でも、とてもいい機会です。

- SOUQ
- デザイン的には男性に人気がありそうだなぁ、と。実際、ポップアップだとどうですか?
- 橋本
- 確かに、デザイン的には男性に評判がいいのですね。SOUQさんでのポップアップだと、なぜか女性のお客さまが多くて。それも、私としては嬉しいことです。通常のファッションブランドのように、シーズンごとに全アイテムが入れ替わるということはないのですが、ポップアップでおじゃまする時には、毎回、ひとつくらいは新作をお持ちしたいなと思いながら、日々デザインを進めています。
- SOUQ
- なんと、新作を!それは楽しみです!
取材・文/内海織加 写真/東泰秀
「caart.」のデザインや哲学は、知れば知るほど、触れれば触れるほどに、魅了されてしまう人は多いようです。最終回は、橋本さんのルーツやこれからの展望についてお話をうかがいます。