Canako Inoue(カナコ イノウエ)前編 日々の 記憶を絵柄にのせて | SOUQ ZINE スークジン

Canako Inoue(カナコ イノウエ)前編 日々の 記憶を絵柄にのせて

Canako Inoue(カナコ イノウエ)前編 日々の 記憶を絵柄にのせて

アパレルブランド〈Canako Inoue(カナコイノウエ)〉のデザイナー、井上加奈子さんを訪ねました。彼女が生み出すアイテムの最大の特徴は、アーティスティックなテキスタイル。その絵柄は、どんなふうに生まれるのでしょう。

〝手〟から生まれるテキスタイル

〈Canako Inoue〉のアイテムは、どれもテキスタイルが特徴的。押し花の影がプリントされているようなものもあれば、やわらかなラインや動物が手で描かれているもの、コラージュのように形を組み合わせて作られた絵など、その表現方法はさまざまですが、そのどれもがどこか温かさを纏っていて、眺めているだけで心が落ち着いてくるような気がします。

Canako Inoue

繰り返しのバターンではなく、自由に布の上に配置された絵柄を眺めていると、まるで絵本を見ているよう。ブラウスも、ワンピースも、スカートも、クラッチバッグやポーチだって、型自体がとてもシンプルなのは、そんなオリジナルのテキスタイルこそ、〈Canako Inoue〉のデザインの主役だからです。

Canako Inoue

テキスタイルを眺めていると、「これがテキスタイルの元になっているものなんです」と井上さんが持ってきてくださったのは、テキスタイルの原画。「紙に色を乗せて、それをハサミで切って貼ったものです。この時は、スプレーで色を付けているので、おもしろい濃淡ができていますが、水彩絵の具やアクリル絵の具を使ったりもしますし、ハサミで切らずに手でちぎって自然なラインを生かしたくなる時もあります。コラージュせずに、直接、絵だけで構成するときもありますしね、作りたいものによって手法はいろいろですが、いつもアナログな方法で作っています」

Canako Inoue

見せてくださった原画のタイトルは、『船汽笛』。クラッチバッグに使われている絵柄にも『透明な果実』『明るさ』など、タイトルがついています。とはいえ、井上さんの描くものは、言葉そのままを描いているというよりは、もっと抽象的。

Canako Inoue

「私が作るテキスタイルは、目に見えるものをそのまま描くというよりも、これはなにかな?って思いながら見てもらえるような、遊び心みたいなものを入れていきたいんです」 と井上さん。その想像を膨らませることができる余白もまた、彼女からのギフトのような気がします。

記憶に残る日々の光景を絵柄に

ところで、物語の断片のようなテキスタイルたちは、どのようにして生まれるのでしょうか。訊ねてみると、「テキスタイルになる前の絵があるんです」と井上さん。そして、小さな紙に描かれた絵を見せてくれました。

Canako Inoue

「日記の延長みたいな感じなんですけど、日常的に絵を描いているんです。旅に出かけた時に見た印象的な光景とか、コンサートに行って音楽を耳にした時の印象とか。家とか宿に帰ってきてから絵の具で描いています。これは、岩手に行った時に、川に鮭が泳いできているのを見ている人がいて。それを描いたものです」

Canako Inoue

軽やかに描かれているその絵を見ていて、思わず「色がきれい」と言葉が漏れると、「私、たぶん、色が好きなんです。だから、見た景色を色として捉えているところがあるかもしれません」と井上さん。そして、こう続けます。 「何か新しいテキスタイルを作ろうって思った時に、描きとめていた絵を見返して、見てきたものや記憶に残る色彩、あとは印象的な光みたいなものを思い出しながら形にしていくことが多いですね。クラッチバッグの『明るさ』という絵柄は、祖母から若い時の話しを聞いて、そこから想像を膨らませて描いたものなので、実際に見てはいないんですけどね」

Canako Inoue

どのテキスタイルにも物語性を感じ、どこか温かみを感じるのは、きっと、全ての絵柄が井上さんご自身の印象的な記憶が元になっているからでしょう。そして、不思議な心地よさを感じるのは、井上さんがさりげなく残してくれた想像の余白の中で、ふわりふわりと漂うことができるからかもしれません。そう思うと、〈Canako Inoue〉のアイテムを身につけることは、洋服を着るというより、なにかノルタルジックな空気感を纏うような感覚もあるような気がするのです。 後編では、井上さんのモノづくりのきっかけと洋服に込める想いについてお話しをお聞きします。

取材・文/内海織加 写真/宮川ヨシヒロ

Creator/Brand

Canako Inoue(カナコ イノウエ)

テキスタイル・アパレルデザイナー

Canako Inoue(カナコ イノウエ)

Canako Inoueは日々の些細な出来事に目を凝らし、のんびりとやわらかい視点で描くテキスタイル・アパレルブランドです。生活の中でほっと一息つき、今の自分を大切にして暮らすための洋服や小物をお届けします。長く大切に時を経ていけるものを目指し、日本の各地の職人さんとともに丁寧に作っています。

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