竹宝堂 美しくなるための美しい筆 | SOUQ ZINE スークジン

竹宝堂 美しくなるための美しい筆

竹宝堂 美しくなるための美しい筆
ものづくりの現場を支える工場や工房を紹介する「ファクトリーファイル」。今回は、化粧筆で有名な広島・熊野町を訪問。世の女性たちを美しく、幸せにする筆をつくり続ける「竹宝堂」を取材しました。

「2011年にサッカー女子ワールドカップでなでしこジャパンが優勝して、国民栄誉賞の副賞として熊野の化粧筆が贈られたじゃないですか。あれから、ギフト用として使っていただけることが多くなりましたね」と語ってくれたのは、「竹宝堂」代表取締役専務の竹森祐太郎さん。それまではメイク好きな人が自分だけで使っていた化粧筆が、広く知られるようになるきっかけになったようです。

竹宝堂「竹宝堂」取締役専務の竹森祐太郎さん。

一躍有名になった熊野の高級化粧筆。「竹宝堂」では、現在取締役会長を務める筆師の竹森鉄舟さんが、いまから約50年前に、それまでの絵筆や書筆の制作から化粧筆をつくり始めることになります。

自らの名を冠するコレクション

「昭和40年ごろ、アメリカからアイライン用の化粧品が大量に入ってきたんですよ。そのメイクのためのブラシがうちの化粧筆づくりの始まりで。そのころ国内ではほとんど化粧用の筆がなかった時代です。うちは面想筆という人形の顔を描いたりする筆をつくっていましたので、細やかな筆がアイライン用にうってつけだったんですよ」

竹宝堂取締役会長の竹森鉄舟さん。

こう話してくれた鉄舟さんは、87歳となるいまでも筆づくりを続けておられますが、伝説的な筆師として、自らの名を冠するコレクションを手がけたり、海外雑誌の取材を受けたり、熊野の化粧筆を世界に広めることになった立役者のひとりです。

竹宝堂いまから17、18年前に、カネボウが企画して生まれた「鉄舟コレクション」
竹宝堂イギリスの雑誌『Wallpaper』の広島特集に掲載された鉄舟さんの写真。世界的に活躍するイタリアの写真家、マリオ・ソレンティ氏が撮影しました。

社長の竹森臣さん、販売部アドバイザーの竹森琴美さんも加わり、熊野の化粧筆はどのように生まれるか、さらに話を聞いていきます。

竹宝堂「竹宝堂」代表取締役社長の竹森臣さん(左)と竹森琴美さん。

江戸時代から続く筆づくり

「熊野で筆づくりが始まったのは、180年ぐらい前、江戸時代末期ですね。由緒は諸説ありますが、農閑期になると熊野では仕事がないから、奈良や紀州の方に出稼ぎに行っていた。その帰りに筆を仕入れたり、有馬の人形筆を若者が習って帰ってきたとも言われています」と臣社長。

先ほどの鉄舟さんの話にも出てきたように、リップやシャドー、チークなどコンパクトに入っているような小さいブラシが登場し始めたのが昭和40年代。いまのような高級筆がつくり始められるようになるのは、それから数年かかりました。

「『シュウウエムラ』さんが原宿にビルを建てたころからですね。最初は量をつくろうという感じでしたが、平成に入ってから良質な原毛を使った筆が売れ出した。だからまだ高級筆の時代は30年ぐらいなんですよ」と臣社長。

竹宝堂

筆づくりの現場を訪ねて

「竹宝堂」の筆がつくられている現場を案内してもらいました。まずはいろいろな毛を混毛する工程です。

熊野の化粧筆は原毛選びから始まります。リスやヤギ、コリンスキー(イタチの一種)などの毛が使われています。筆の使用目的によって種類や長さを選び、原毛だけを選びます。リスの毛はあたりがすごく滑らかで、ほおに当てるだけで大変気持ちいい感触。

「リスやヤギなど違う種類の毛、あるいは同じヤギの中でも少し違うものを組み合わせて均一になるようにするのが混毛機ですね。天然毛を使っているんですけど、仕入れの時期によって微妙に質感が違ってくるので、製品として同じようになるように混ぜ合わせます」と祐太郎さん。

均等に混ざった原毛は、筆の形となるように束ねられます。

続く工程は逆毛取り。逆毛とは、肌に当てるときにちくっとなるような硬めの毛のこと。束ねた原毛をまずは櫛でとき、逆毛が出てきたら半差しと呼ばれる小刀を使い抜いていきます。

社長が「熊野筆は、とにかく毛先を大事にする」とおっしゃっていますが、スタッフのみなさんがていねいに何度も逆毛を取り除いて毛先を揃えているのを見ると、ふくよかでなめらかな筆ができあがってくるのも納得です。

竹宝堂

接着も重要なポイント

逆毛取りが終わったら、化粧筆づくりで非常に重要な行程となる、穂首をつくる作業になるのですが、ここは企業秘密ということで残念ながら非公開。社長のお話によると、「ふくよかな形に膨らませるためには、手で揉み出す」そうです。ここでも手作業によるていねいな仕事が想像できます。

竹宝堂

穂首ができたら、金具を取り付ける作業。ズラッと並んだ金具に接着剤を入れていきます。

「実は筆づくりにとって接着はすごく重要です。これがしっかりしてないと、筆として機能しない。使っている毛の種類とか密度だったり。あと気温によっても入れる接着剤の量も変わってきます」と祐太郎さん。

竹宝堂

熟練のスタッフさんに、うまく接着させるコツを聞いたところ、「すべて勘でやってます」と。

竹宝堂

「竹宝堂」の工房は、さすがは美しい化粧筆が生まれる現場とあって、検品をする方たちなど、女性がイキイキと働いているのが印象的です。「パートさんも含めてスタッフは100人ぐらいですが、男性は、会長・社長含めて7人です(笑)」と琴美さん。美をつくりだす現場は、男性にとっては少々肩身が狭く感じるかもしれません。

竹宝堂
竹宝堂
竹宝堂

うめだスークで買える熊野の筆

ひとつひとつ、ていねいにやさしく扱いながらつくっていく「竹宝堂」の化粧筆。「スーク暮しのアトリエ」では、鉄舟会長が自ら仕上げ、最上級の肌あたりを極めた「Zシリーズ」、メイクアップアーティストも愛用しているプロユースの「GSNシリーズ」を常時販売しています。

竹宝堂「竹宝堂」の「Zシリーズ」(黒)と「GSNシリーズ」(白)。

山々に囲まれた熊野の地で、竹森ファミリーをはじめとするスタッフのていねいな手仕事で生まれる「竹宝堂」の化粧筆。美しい女性をつくりだす筆は、限りなく美しかったです。

竹宝堂

取材・文/蔵均 写真/桑島薫

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