ETSUSHI(エツシ) 第3回 CGでつくるジュエリー

刺繍アクセサリーでブランドデビューを果たした「ETSUSHI」ですが、1年前からシルバーのリングを制作し始めました。新作についてデザイナーのETSUSHIさんに話をうかがいます。
- SOUQ
- いまは刺繍アクセサリーから、シルバーのリングにシフトしているようですが、なにか転機はあったのですか?
- ETSUSHI
- 刺繍は、アート作品として始めたのですが、やっていくうちに自分のやりたいこととズレが生じるというか、最初は一点ものをつくってそれを見てもらうという感じだったんですけど、ジュエリーとしてやり始めたら、何個も同じものをつくったり。これはアートじゃないなと思い始めて。最初は自分でも身に着けたりしてたんですけど、30歳手前ぐらいになったころから、これをずっと着けてられるのかなあと思って。
- SOUQ
- 全然かわいく着けられると思いますけどね。

バイト先でCGを学んで
- ETSUSHI
- なんとなく自分がふだん身に着けるものとは違うなと。もちろんイベントの時とかはつけるんですけど。最初の始まりが違ったせいもあるんですけど。
- SOUQ
- アートとして始めたから?
- ETSUSHI
- はい。そこにズレが出始めてきて、新作をそろそろつくらないといけないなと思ったときに、周りはジュエリーの方が多かったので、展示会に出ている度にシルバーの知識とか入ってきて。
- SOUQ
- それでシルバーをやってみようと?
- ETSUSHI
- はい。僕の場合、原型をつくったり手作業じゃなくてCG(コンピューターグラフィックス)でモデリングしてるんですけど。

- SOUQ
- CGなんですか
- ETSUSHI
- そうなんですよ。だからここは、あまりジュエリー作家ぽくないアトリエでしょ?
- SOUQ
- たしかに機械や道具的なものは一切見当たらないですね。CGも大学で学ばれたのですか?
- ETSUSHI
- いえ。卒業してすぐバイトしたのがゲーム会社で、そこでCGをやってて知識が入っていくうちに、3Dプリンターもできるんだというのを知って。やってみようという感じで始めました。そしたらそっちのほうが自分には合ってたというか。
- SOUQ
- 普通ジュエリーのモデリングは、どうやってやるんですか?


- ETSUSHI
- 直接金属を加工して原型をつくって量産していったり。ワックスを彫刻みたいに削って原型をつくって量産していくタイプなどがあると思います。僕は、CGでモデリングして、それを3Dプリンターでワックスの状態で出して…。
- SOUQ
- えっ、どういうことですか?
- ETSUSHI
- 紙じゃなくて、ワックスの状態で3Dで出てくるんですよ。
- SOUQ
- ワックスがプリンターから出てくるんですね?
- ETSUSHI
- そうです。紙でプリントする時のインクと同じような感じです。

- SOUQ
- びっくりですね。
- ETSUSHI
- 3Dプリンターだからできる形というのもあるので、そういうのはすごく便利ですね。
重ね着けしたときに美しく
- SOUQ
- たとえばどういう形ですか?
- ETSUSHI
- 僕のリングはすごく薄くしている部分とかがあって、そういうのは手作業だと難しいんですよ。CGだとここは何ミリにしてというふうにデザインできるので、極限まで薄くして着けやすさにこだわることができたり。最近出したシリーズだと、「2.0シリーズ」は、2ミリを基準に厚さを決めています。
- SOUQ
- きっちりすべて2ミリなんですね。

- ETSUSHI
- 重ね付けしたときに厚さが揃ってきれいに見えるということにこだわっていて、そういうのは手づくりだとなかなかむずかしいです。型取りする時の縮みとかも出ますし。パソコン上だと何回もやり直しがききますし。立体で見ることができて、こうしたらどうなるかとか、臨機応変にいろんな形が見られてすごくいいですね。
- SOUQ
- あまり誤差とかは出ないんですね。
- ETSUSHI
- なかなか手作業で均等につくるのって大変じゃないですか。そういうところがパソコンならできる。画面上に手のモデルを入れて、実際に指にはめた感じをイメージできたりもしますよ。
取材・文/蔵均 写真/東泰秀
コンピューターグラフィックスだからこそデザインできる「ETSUSHI」のリング。次回最終回は、これからの展望について話を聞いていきます。