ETSUSHI(エツシ) 第4回 日用品みたいなジュエリー

シルバーのリングをつくり始めたETSUSHIさんは、作品に対してどのような想いを込めて制作をしているのでしょうか? 今後の展望についてもお話を聞きました。
- SOUQ
- シルバーをやり始めたのが1年ぐらい前で、いま新作のリングは何種類ぐらいありますか?
- ETSUSHI
- 6タイプのレザー×3色で、合計18種類ですね。
- SOUQ
- 革のカラーは黒とベージュが定番ですか?
- ETSUSHI
- そうですね。そのほかに毎年限定カラーをつくっていて。去年はデニム、今年はマーブルです。

- SOUQ
- この限定カラーはいろいろと遊べそうですね。
- ETSUSHI
- そうなんですよ。だからいろいろコラボしたいという願望がすごくあります。ファッションブランドのテキスタイルを使わせてもらったり、セレクトショップで限定カラーとかできたら楽しいなあと夢見てます(笑)。
- SOUQ
- リングにレザーをあしらおうと思ったのは、どういうところからなんですか?
経年変化が愛着を
- ETSUSHI
- もともと革靴とか革の小物が好きで。ジュエリーって普通は石じゃないですか。石だと“永遠の輝き”とかよく言いますけど、経年変化が少ないものがいいという価値観があると思うんですよ。
- SOUQ
- たしかにそれはありますね。


- ETSUSHI
- そういうのじゃなくて、どっちかというと僕はもっと生活に寄り添うデザインが好きで。1点もので豪華でたまに着けるようなものではなくて、日常で着けてだんだん経年変化してくるようなものですね。
- SOUQ
- それがレザーだったんですね。
- ETSUSHI
- はい。いま僕が着けているリングの革も、新品だと色がもっとベージュなんですよね。毎日つけてちょっと変化がするものとか、着ける人によっては汚れ方とかも変わってくるものとかに愛着が持てる。ふだんに使う日用品みたいなジュエリーをつくりたいなあと思って。

- SOUQ
- ジュエリーが日用品…それいいですね! リング以外にもジュエリーはつくっているのですか?
- ETSUSHI
- 自分ではつくってないんですけど、漆のシリーズがあって、同じデザイン科だった大学の同級生が、金継ぎの職人さんのところに弟子入りしたんですよ。なんかいっしょにできないかなと思って声かけて、水晶(クオーツ)に漆でコーティングしてもらって、それを僕が金具とかパーツをつけています。
- SOUQ
- 水晶に漆? どんな感じなんでしょうね?
- ETSUSHI
- こんな感じで(写真参照)、真ん中のものはハーキマークォーツって言うんですけど。いろんな種類があって。

- SOUQ
- ハーキマーってなんですか?
- ETSUSHI
- 地名なんですけど、そこで採れた水晶のことで。このハーキマークオーツって削ったりして加工しないので、全部形に個体差があって。中に傷みたいな筋が入ってたり、自然な感じがするものなんです
- SOUQ
- 加工しちゃうと、どれも同じような形になりますもんね。
- ETSUSHI
- この金色の部分が漆を塗った上に金粉を蒔いてもらっていて、漆の黒い色は内側に見えるようなデザインをしているんですよね。乱反射して、いろんなところに黒がキラキラと見えるように。
機能性も考えてデザイン
- SOUQ
- ETSUSHIさんは、いまは洋服をつくりたいという気持ちはないのですか?
- ETSUSHI
- ブランドを立ち上げた頃は結構ありましたけど。洋服って一人でやるのは現実的に考えてなかなか難しいので、変に服にこだわりすぎなくてもいいかなあといまは思っています。布が好きとか、生活に密着するもの人と触れるものに関わりたいということで洋服をやっていたのですが、ジュエリーをやり始めたら、物も小さくて扱いやすいですし、ファッションにもつながっているので、ジュエリーでも全然いいなあと思っていて。

- SOUQ
- じゃあ、しばらくはジュエリー1本でやっていく?
- ETSUSHI
- カバンとか財布とか、小物をやってみたいという気持ちはあります。特に財布はやってみたくて。
- SOUQ
- それはどうしてでしょう?
- ETSUSHI
- 機能性も考えてデザインしなければいけないところが魅力的だなあと。僕、ふだん自分で買い物するときも、シンプルでミニマルだけど機能性もあるというものが重要で。財布とかもいまちょうど探してるんですけど、あまり気にいるものがないんですよね。だから余計につくってみたいなという気持ちがあります。
取材・文/蔵均 写真/東泰秀