フィリフヨンカ(Fillyjonk) 第3回 王国、そして島のような世界観

2人のデザイナーの女性的感覚と男性的感覚が、うまく混ざりあってつくられていく「フィリフヨンカ」のアクセサリー。その世界観も独特のものがあるのですが、それはどうやって築かれていったのでしょうか? 兼森周平さんと平岩尚子さんに話を聞きました。
- SOUQ
- 「フィリフヨンカ」というのはどういう意味なんですか?
- 兼森
- このリーフレットに書いてあるのですが…。
- SOUQ
- このロゴマークが素敵ですね。
- 平岩
- これは、兼森が描いた絵とデザイナーさんのイメージが合体してできたものです。大好きなデザイナーさんにロゴ描いてって言ったら紋章のマークを描いてくれたんですけど、それがちょうど窓みたいに見えて。風景がデザインのコンセプトにもあるし、窓の外に風景が連なっていったら、すごくフィリフヨンカの世界かなあと思って。
- SOUQ
- リーフレットも窓になってますね。
- 平岩
- そうなんですよ。フィリフヨンカというのは、フィンランドの女の子の名前なんですけど、それを英文字化しています。英文字化したことで、どこの国かわからない感じの「何語なんだろう?」と思ってもらいたくて、そういう名前にしました。

- SOUQ
- フィンランドはお好きなんですか?
- 平岩
- そうですね。北欧の感じは好きですね。ヨーロッパが好きで。でもこないだニューヨークへ行ったらニューヨークも結構好きで(笑)。そんなに好きじゃないかなと思ってたんですけど、意外に好きだったという。
- SOUQ
- 「フィリフヨンカ」の作品は、ちょっとヨーロッパの薫りがしますよね?
- 平岩
- よく「外国人がつくったの?」と言われます。でも外国人からは、日本人らしい作品だと言われるんですけどね。
- SOUQ
- そうなんですね。それはどういうところがですかね?
- 平岩
- よく“tiny”って言われるんです。
- 兼森
- ディテールが細かくて。ジャパニーズ・スタイルだって感心されます。

- SOUQ
- 確かに。すごく精緻で。“tiny”って表現はピッタリかもしれません。こういう世界観はどうやって生まれたんでしょうね。
- 平岩
- 最初つくりだしたときは、建築のシリーズで、兼森がこんなのつくって欲しいと私に言ってきて、すごいめんどくさいやつだったんですよ(笑)。でも「やってみたら?」と言われてやり出したのがきっかけで、お家のシリーズが始まった。最初は、なんか手にお家が乗っかったらおもしろいなという考え方から始まったんですけど、どんどんそこに物語性を積み込んでいったら、世界地図を目指そうってなっていって…。
- SOUQ
- 世界なんですね。
- 平岩
- 数年前に海をテーマにして、ものづくりをしたんですけど、そのことによって、今まで街でつくっていた世界が島になったイメージがあって。そこから毎年テーマを持つようになって、ゆくゆくは世界地図になるような感じの、ものづくりをしたいなと思っています。
- SOUQ
- 島の世界が生まれたのは、いつぐらいなんですか?
- 平岩
- 3年か4年前ですね。
- 兼森
- このへんかな。
- SOUQ
- 兼森さん、ちゃんと年表を書いてくれてますね(笑)。そのへんはさすが元建築家っぽい!

- SOUQ
- 去年のテーマはなんだったんですか?
- 平岩
- 去年は…なんだっけ?
- 兼森
- 「移ろい」だね。
- 平岩
- その前は「雨降る王国」。
- SOUQ
- 雨降るアクセサリーってどんなものなんですかね?
- 平岩
- なんか雨が多い国ということで、イギリスをイメージしたんですけど。ビッグベンのような時計塔をつくってみたり、コッツウォールズ地方にあるような石畳のある家をつくったり、あとは雨が降るって苔むすイメージがあったので、苔の新シリーズとか、緑が生い茂っているイメージでツタっぽいアクセサリーとか。モヤっとした感じですかね。
- SOUQ
- モヤっとした感じ?
- 平岩
- テーマごとにアクセサリーをつくっている人って、あまりいないと思うんですよね。小さいし言葉にしづらいものだし。あと洋服ってシーズンごとに変わっちゃっても成り立つんですけど、アクセサリーって変えすぎちゃうと世界観が壊れていっちゃうんで、そこらへんのバランスも崩しすぎず、ちゃんとテーマがあるというのがやりたくて、そうするとモヤっとしがちで(笑)。

- 兼森
- SS、AWとかないですからね。
- 平岩
- アクセサリーは昨シーズンのも継続して売ってるんですよね。廃盤になることも結構少なくて。売り続けていますね。
- SOUQ
- じゃあラインはどんどん増えていきますよね。
- 兼森
- そうです。増えすぎて大変です(笑)。
- SOUQ
- いまどれぐらいアイテム数はあるのですか?
- 平岩
- もう分かんないですね。
- 兼森
- ものすごくいっぱいあるよね。
- 平岩
- 200とか全然あるよね。型数でいうと大変なことになってます。

- SOUQ
- しかも毎年のテーマによって、全然違うタイプのものが並ぶでしょうしね。
- 平岩
- だから飽きずに続けられる(笑)。
- SOUQ
- 中には頑なに定番をつくり続ける作家さんもいるんでしょうけどね。
- 平岩
- たまにもうやめたいなと思う商品もあるんですけど、そう思ったとたんに売れ始めてやめられなくなるとか。
- SOUQ
- 思ってたより売れたなという商品もあるんですか?
- 兼森
- キノコなんかは売れると思ってなかったですね。
- SOUQ
- そうですか。これかわいいじゃないですか!
- 兼森
- そうですか? これ大阪で人気なんですよ。
- SOUQ
- 大阪はキノコ人気高いんですかね?(笑)
- 兼森
- 大阪行ったら、「次はなんのキノコなんですか?」って訊かれますよ。
- 平岩
- 大阪のお客さんで、「私ほんとにキノコ育ててるんです」という人がいて。仕事で舞茸をつくっているので、上司にプレゼントしたいって。さすが大阪って思いました(笑)。
取材・文/蔵均 写真/衛藤キヨコ
街から島へ、そして王国へ。独特の世界観を築いてきた「フィリフヨンカ」。次回最終回は、ふだんの作業の中での発想のヒントなどについて話をうかがいます。