ga.la(ガラ) 第3回 刺繍のように人がつながる | SOUQ ZINE スークジン

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ga.la(ガラ) 第3回 刺繍のように人がつながる

ga.la(ガラ) 第3回 刺繍のように人がつながる
草花を有機的に描いたデザインから柄を起こし、布と糸でアクセサリーへと仕立てあげる「ga.la」の刺繍作家・長野訓子さん。家業で刺繍を扱いながらも、家の仕事とはまったく違う表現方法へと進んでいった舞台裏には、数々の出会いがあったと言います。
SOUQ
前回のお話で、なぜ「ga.la」が植物をモチーフにしているかの背景を紐解けた気がします。
長野
そうですか?
SOUQ
長野さんが「描きたかったもの」と「刺繍」が交差したところが「ga.la」だったというか。
長野
いやいや、いつも思いつきなんですけどね(笑)。あっ、この部屋が「ga.la」のアトリエです。こちらは妹です。
SOUQ
こんにちは!
長野
私が絵を描いて柄に起こしたパーツを、職人さんが刺繍してくれて、妹やスタッフさんがアクセサリーに仕上げてくれています。もちろん私もやりますけど、数が追いつかないのと、私自身は催事出店で接客したり、卸の対応をしたりもするので。
ga.la
SOUQ
これがカットする前のもの?
長野
これはフレームの作品ですが、シルクのオーガンジーの布にポリエステルオーガンジーを重ねて刺繍をして、刺繍の縁をヒートカット、熱で切り落とすんです。うちはよくこのカット技術を使うので、どんな形でもつくっていけます。
SOUQ
どんな形でも?
長野
タツノオトシゴとか。
SOUQ
おぉ、植物じゃない(笑)
長野
このあたりも結構好評で。「ga.la」とは別のブランドにしようかなとは思っていますけど。
ga.la

点と点を美しくつなぐ

SOUQ
そもそも刺繍って、どんなふうにできるんですか?
長野
刺繍自体はミシンがやってくれます。「Illustrator」のような刺繍専用の刺繍ソフトがあるので、パソコンで作った刺繍データをミシンに送って、あとはダダダと縫ってくれます。図案の刺繍データのことをパンチカードと呼ぶんですけど、昔は、壁に図案を拡大投影して紙にトレースして本当の意味で一針一針、穴(パンチ)をあけた紙テープをつくって機械に読み込ませて刺繍をしていました。パソコンで作成する今でもその原理は同じで、読み込んだ原稿を点でなぞりなおして、どの点とどの点を糸で埋めて行くかという指示を入れたデータをつくります。
ga.la
SOUQ
データづくりは難しいんですか?
長野
パソコンのソフトを使えれば誰でもつくれるとはいえ、人によって仕上がりが違ってきます。というのも、糸の性質として縮みが出たりすることもあるので、絵が実際に刺繍としてできあがるイメージを持って、どのような工程で刺繍するかを考える必要があるんです。できるだけ一筆書きで刺繍していって、糸を切る回数を最少限にするのが仕事的には良いやり方。だって何度も糸を切っていると、そのたびにミシンが止まって現場が滞ってしまう。いかに効率よく現場を動かし、きれいな仕上がりにできるかは、刺繍のデータ次第です。
ga.la
ga.la
gala

作家心が『花椿』で目覚める

SOUQ
第1回目のインタビューで「ga.la」を始める前の経歴をお聞きしましたが、20代で家業の長野刺繍に就職されたんですよね?
長野
そうです。その時に職人さんやパートさんに混じって、刺繍データの作り方や機械の使い方を覚えました。
SOUQ
その頃は家業と自分のものづくりを並行していたんですか?
長野
20代は作品づくりはまったくしていませんでした。でもずっと「個展をしたことがない」のがコンプレックスだったんです。銅版画でグループ展をしたことがあったけど、自分ひとりでは結局何ひとつ成し遂げられていないなって思って。それで「個展をする!」って宣言して、29歳の時に、刺繍で布を作って鞄にしたり額装したり、思いつくかぎりのアイデアを発散した個展を開いたんです。
ga.la
SOUQ
刺繍作家としてのものづくり初期。
長野
岐阜の商店街で巨大なフラッグをつくるコンテストがあって、そこに3年連続で出品したりしていました。岐阜は日比野克彦さんの出身地ということで、日比野さん本人が審査・講評してくださって貴重な経験ができました。賞金も貰えたし。そして30歳にして親と喧嘩して家を出る(笑)。
SOUQ
家業から一旦離れて自分の活動に集中する、と。
長野
まぁ、フラフラしていましたね(笑)。その頃、南船場にあったアンヅギャラリーで展覧会をしたのを、編集者・キュレーターの後藤繁雄さんが見てくれていたみたいで、ある日突然「資生堂の『花椿』の企画に参加していただきたいんですけど」と、後藤さん本人から電話が掛かってきたんです。
SOUQ
すごい! どんな企画だったんですか?
長野
古着のTシャツをアーティストが自由にリメイクする企画です。後藤さんとはその後も今にいたるまで結構いろいろとご一緒していて、百貨店のウィンドウを飾る企画に呼んでいただいたり、それがまた別の編集者の目に留まってファッション誌『ナイロン・ジャパン』の木村カエラちゃんとコラボしたり、いろいろと広がっていったきっかけだったかも。
ga.la長野さんの作品が載った雑誌『ナイロン・ジャパン』と『花椿』の誌面。

出会いが醸した京都時代

長野
とにかく面白そうなことは何でもやっていましたね。京都堀川五条の増田屋ビルの中にアトリエショップを構えたのも2005年頃のことです。でもね、お客さんなんて全然けぇへんのですよ。レトロビルだから冬は寒いし夏は暑くて、全然ものづくりに集中できへん(笑)。でもそのビルには個性的で面白い人が集まっていて、新しい仕事につながることも多かったです。マリンバ奏者でアンティーク着物愛好者の通崎睦美さんが、京都の恵文社でやった展覧会を見てくれていて、増田屋ビルの近くにお住まいだったこともあってよく顔を出してくださって、通崎さんがプロデュースしていた浴衣ブランド「メテユンデ」の下駄の鼻緒や鞄に刺繍を依頼してくださったりもしました。
SOUQ
濃い出会いばっかりですね。
ga.la
長野
増田屋ビルを拠点に京都に居ついているうちにいろんな出会いがあって、例えば、お香を扱う「lisn(リスン)」さんでは、季節ごとの香りに合わせたテキスタイルを制作して、店内で展示させてもらったりサシェとして商品化したりすることになって、それは今も続いています。
SOUQ
SOUQバイヤーの林との出会いもその頃ですか?
長野
そうです。林さんはアンヅギャラリーの展覧会で見て連絡をいただいたのが最初だったと思います。そして2014年頃かな、まだ「ga.la」と名付ける前ですけど、鞄などに紛れて布のアクセサリーをつくり始めたばかりの頃に、林さんから「SOUQのイベントに出店しない?」と声を掛けていただいて、そこから「ga.la」の立ち上げへとつながっていったんです。

取材・文/浅利芙美 写真/桑島薫

笑いを交えながら小気味好いテンポで語る長野さんのお話に引き込まれながら、「ga.la」は豊かな出会いに育まれた表現なのだと実感したインタビューでした。最終回では「ga.la」の展望や、長野さんの夢についてお伺いします。

Creator/Brand

ga.la(長野訓子)

刺繍アクセサリー

ga.la(長野訓子)

刺繍作家 長野訓子が描いた植物画を刺繍の“柄”にしたアクセサリーブランド。刺繍糸の持つ光沢の美しさが特徴です。

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