長谷川義太郎さん 第2回 伝説のタブロイド紙とシブヤデイズ | SOUQ ZINE スークジン

長谷川義太郎さん 第2回 伝説のタブロイド紙とシブヤデイズ

長谷川義太郎さん 第2回 伝説のタブロイド紙とシブヤデイズ
個性的でキッチュなアイテムで一時代を築いた「文化屋雑貨店」。店主だった長谷川義太郎さんのスークインタビュー第2回は、お店の創成期に出会ったニューヨークのタブロイド紙の衝撃から、当時の渋谷や原宿、そしてクリエイター事情についても聞きました。
長谷川
実はぼく、ロンドン、パリ、ニューヨークには行ったことがないんですが、1975年に発刊された『The Picture NEWSPAPER』っていう新聞があって。これがすごいんですね。
SOUQ
『The Picture NEWSPAPER』? 聞いたことないですね。
長谷川
ニューヨークで発行されてたタブロイド紙で、もちろんスポンサーがいると思うんですが、本当に好きなことをやってるんですよ。あの当時、立花ハジメ(*1)とこれを見て、ボクら興奮して、もっとおもしろいことやろうよって言ってたことを覚えてますね。
SOUQ
確かに、斬新な紙面ですね。
長谷川義太郎
長谷川
たぶん、これペーター佐藤(*2)さんとか原田治(*3)さんが持って来てくれたんだと思うんですけど。結局4冊しか出なかったのかな。そのうちの3つがここにあるんですよ。
SOUQ
貴重な現物ですね。
長谷川
これを見るとわかるんだけど、イラストレーションなんかペーターさんの原型のようになっているし、日本の写真家もずいぶん影響を受けてるんじゃないですかね。有名な人もいっぱいいるみたいだし。
SOUQ
後に名を成した写真家もいそうですよね。
長谷川
ボクらは、名前よりも絵面で見てましたからね。アントニア・ロペス(*4)ってだれだよ? って感じで。でも文化服装学院の生徒なんかはみんなロペスの真似をして描いてた。石岡瑛子(*5)さんなんかもかなり影響受けてると思いますよ。
長谷川義太郎
SOUQ
これ、確かに4号しか続かなかったというのがわかるくらい、贅沢なつくりです。
長谷川
不思議なんですよ。この『The Picture NEWSPAPER』って今となっては見たこともないし、あまり知られてないじゃないですか。でもみんな影響受けてると思うんですよね。
SOUQ
本当に聞いたこともなかったです。
長谷川
みんな内緒にしてるのかなあ(笑)。これ創刊号の発行が1975年で、「文化屋雑貨店」を始めたのが1974年なんですよ。
SOUQ
スタートがほぼ同じ時期なんですね。
長谷川
見てください、これ! ザ・ローリング・ストーンズのツアーの広告がすげえいいんですよ。
SOUQ
カッコいいですね!
長谷川義太郎『The Picture NEWSPAPER』に掲載されていたザ・ローリング・ストーンズのツアー広告。
長谷川
これが日本の文化と違うところ。これだけのことが45年前にできているんですよね。四の五の言ってもかなわない。オレたちはだから、国内というのは頭になかったですから。世界だと思ってたから。こいつらに負けちゃいけないなと思ってたんですよ。ちょうど30歳ぐらいで若かりし頃でしたしね。
SOUQ
このタブロイドから刺激を受けて、何かが始まりましたか?
長谷川
最初はねえ、立花くんやうちの若い人たちと、月にいっぺん集まって、これを超えるものをつくろうとやってた。1回つくっても、素人だから最高のものはできないんだけど、もうちょっとおもしろいものを考えようってやると、前の月よりおもしろいものができちゃうんですよ。2、3カ月それを続けていたんだけど、とうとうウヤムヤになっちゃって。半年ぐらいでやめちゃったけどね。
長谷川義太郎
SOUQ
今は、こういう刺激的なメディアはないですか?
長谷川
ないですねえ。今のクリエイターにこれをじかに見て欲しい。今の人ってみんな安全圏でやるんですよ。なんかつまんねえなと思うんですよ。こないだもたまたま仕入れたドイツの本で、かなり中身が出ているものがあったんですね。
SOUQ
日本では見せてはいけない部分ですね?
長谷川
そう。古本市をやるというから、ちょっと混ぜておいといたんですよ。ダメですね、みんな。見るんだけど怖がっちゃって。クリエイティブの人やアーティストなら、もう少し食いついてもいいんじゃないの? って思うんだけど、ビビっちゃって。だれも買わない。命取られることじゃないのにねえ。
SOUQ
時代が違うんでしょうねえ。『The Picture NEWSPAPER』に刺激を受けていた1970年代後半、「文化屋雑貨店」の周辺ではどんな動きがありましたか?
長谷川
半年ぐらいの間、ペーターさんとこの1階で店をやってたんです。そのとき、カメラマンの伊島薫(*6)くんとか、プラスチックス(*7)のメンバーとか、パルコ系の仕事をしていた秋山道男(*8)くんとかが2階に巣食ってた。なんかアートとかデザインの空気が周りに充満していたんですよ。
長谷川義太郎
SOUQ
おもしろいメンバーが集まってましたね。
長谷川
秋山くんはあの当時無印良品を立ち上げる仕事に携わってました。なんか新しい概念ってないかな?って毎日店に来てましたね。
SOUQ
渋谷でカルチャーやデザインなどが一番動いてた時代?
長谷川
そう。こないだパルコの人が70年代ー80年代のことを勉強したいからとオレのところに来たわけですよ。だから『SUPER ART(GOCOO)』(*9)っていう雑誌を見せたんですけど、知らないのね。パルコの人がなんでパルコが出してた本を知らないのか? かわいそうだけど、それはちょっと勉強不足だよって、5、6冊貨してあげましたけどね。
SOUQ
アートやデザインと合わせて、ファッション系の人もよく店に来てたみたいですね。
長谷川
最初の頃は、山本寛斎とかもそうなんだけど、店に来る人がみんなジーパン履いて白いシャツなんですよ。みんなそうなんですよ。へーっと思って。ファッション屋さんってこんな格好してんだと思って。
SOUQ
流行ってたんですね。
長谷川義太郎
長谷川
中野裕通(*10)とかまだ若くて無名だったデザイナーも、みんな白いシャツにジーパン履いてました。501なんか履いて喜んでましたね。あれはまあ、「ハリウッドランチマーケット」の影響が強いですね。ランチマーケットが最初に古着をやって、ファッションのほうにものすごく入っていったんですよ。ランチマーケットの影響力はものすごくでかいんですよ。
SOUQ
「ハリウッド ランチマーケット」と「文化屋雑貨店」では、どちらが先にオープンしたんですか?
長谷川
ランチマーケットのほうが2年ぐらい早いと思うんですよ。千駄ヶ谷の小さなビルの3階にあったんですけどね。訪ねて行ったのを覚えています。でものちに「文化屋雑貨店」を開店したら、ランチマーケットのゲン垂水(*11)くんが、しょっちゅう来てました。文化屋が大好きで。ポール・スミスもすぐ連れてきましたね。
SOUQ
あのポール・スミスですか!
長谷川
ポール・スミスがどうしてもうちの靴下がほしいって言うから、「タロウちゃん、売ってやってよ」って(笑)。彼は、フィオルッチ(*12)やいろんな人を連れてきましたね。フィオルッチというのはミラノかなんかでやってたおじさんなんだけど、やっぱりね、みんなファッションがらみ。ファッションがらみの雑貨なんですよ。だからそんな人たちが来てくれて、ずいぶん買っていってくれました。あの頃は世界で雑貨が動いてたんですよ。

取材・文/蔵均 写真/東泰秀

(*1)1951年東京生まれのグラフィックデザイナーであり、テクノポップバンド・プラスチックスのギターも担当。
(*2)イラストレーター。エアーブラシが描き出す淡い作品は、当時雑誌などで大人気だった。
(*3)ミスタードーナッツやカルビー・ポテトチップスのキャラクターデザインで有名なイラストレーター。
(*4)1960年代ー70年代、ニューヨークを中心に『VOGUE』などのファッション誌で活躍したイラストレーター。
(*5)1993年のアカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞。グラフィックデザイナーとしても活躍した。
(*6)『死体のある20の風景』などで知られる写真家。1954年京都生まれ。
(*7)1976年にイラストレーターの中西俊夫などにより結成されたテクノポップバンド。
(*8)プロデューサー兼クリエイティブディレクター。西友の広報誌や雑誌『BIG tomorrow』などの編集にも携わる。
(*9)1970年代から80年代にかけて、パルコ出版から発行されていた雑誌。アートやイラスト、写真などが特集されていた。
(*10)ファッションデザイナー。「ニコル」や「ビギ」で勤めたあと、「hiromichi nakano」ブランド設立。パリコレなどで活躍する。
(*11)1972年にアメリカの古着の基本となるスタンダードの品揃えで「ハリウッドランチマーケット」をオープンさせたファッション界のリーダー。
(*12)イタリアのブランド「Fiorucci」の創業者・エリオ・フィオルッチ。

長谷川義太郎インタビューを行った、「文化屋雑貨店」のアイテムも並ぶ「(元)鶴谷洋服店」にて。

(元)鶴谷洋服店
●東京都千代田区神田神保町1-3
http://tsuruyayoufukuten.blog.fc2.com

渋谷や原宿のアートやデザイン、ファッションに大きな影響を与えていた「文化屋雑貨店」。次回第3回は、そんな「文化屋雑貨店」ならではの商品をどのように探して、つくるのかをタロウさんに聞いていきます。

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