『inoui』前編 これまでと今が繋がってできるモノ | SOUQ ZINE スークジン

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『inoui』前編 これまでと今が繋がってできるモノ

『inoui』前編 これまでと今が繋がってできるモノ
ヌメ革を使用した革小物を制作する「inoui(イヌイ)」。中でも甘い香りが今にも漂ってきそうなビスケット形のレザ―チャームは幅広い世代に支持されています。そんな人気アイテムが生まれたきっかけとは。作家の原田操さんにブランドのこと、モノ作りをする上で大切にしていることなどをうかがい、前編後編の2回に分けてお届けします。前編となる今回は、「inoui」のこれまでとこれからについて。

異色の経歴と言われるけれど

原田さんのプロフィールを拝見してまず目に留まったのが「元料理人」という経歴。地元・愛知県の短大で栄養学を学び、その後上京して入学した調理師学校ではフランス料理を専攻。フランスへ留学も果たした後、都内のレストランに勤務。そこからどういう経緯で雑貨の道へ?と、インタビューする側としては、触れずにはいられない部分ですが、ご本人からは「料理人だったことがこんなに注目されるとはまったく思っていなかったんです」と意外な一言が。 「ビスケット形にしたのも料理人だったから、というわけではなくて。次は何を作ろうかヌメ革を眺めながら考えていたときに何となくヌメ革がビスケットに見えてきたのがきっかけ。実際に小麦粉から作る本物のビスケットを作ったこともないんです(笑)。今の仕事で同じモノを大量に作るところや、オーダーがかかると仕立てていく部分が料理と似ているかなと、後になって思ったくらいですかね」とあっさり。

inoui経年変化で色味が変化する

そもそも料理の道を選んだのは、短大のときに思い描いた「自分の造った空間=お店を持ちたい」という夢がきっかけ。 「将来お店を持てたときに、お客さんにゆっくりしてもらう空間に提供するには、料理が出せたらいいなと思ったんです。もともと子どもの頃から料理は好きでした。高校生のとき、両親が仕事で海外暮らしになって、私と姉は日本に残ることになって。隣りの家には祖父母がいたのですが、お小遣いをもらって毎日夕ご飯を作っていましたね。学校の帰りにセーラー服でスーパーに寄って食材を買って作るのが日常でした(笑)」 そうして、料理人の道へと進み、都内のレストランで働くことになった原田さんでしたが、だんだんある思いが大きくなっていったそう。 「『あれ? 私って料理人になりたかったんだっけ? お店を持ちたくて始めたんじゃなかったっけ?』とズレを感じるようになってしまって…」 お店を持ちたくて志したはずなのに、日々の仕事に追われ、肝心のお店を持つ夢が遠く感じてしまってきたといいます。 「当時一人暮らしをしていて家賃や生活費などの出費もあって、お店を持つための資金を貯めるのもなかなか難しかったこともあり、一度地元に帰ろうと決意しました」

ヌメ革との出会い

そうして、レストランを辞めて地元に戻った原田さん。そこではヌメ革との出会いが待っていました。 「学生時代は美術部で、モノを作るのが好きだから手先も器用だろうということで(笑)、母からヌメ革のバッグの修理を頼まれたんです。硬い革なので扱いは大工仕事のような力のいるものだったのですが、それがまた楽しくて」 当時は、バイク関連のアイテムなど、男性が使う印象が強かったというヌメ革。お母様のバッグの修理で触れるうちに、時間が経つごとに風合いが変わってくる素材の面白さに惹かれていったそう。そして、女性も気軽に使えるヌメ革を使った革小物を作れないかと思うようになり、2002年に「inoui」が誕生しました。

inoui

フランス人にも納得されたブランド名

とはいうものの、一念発起してブランドを立ち上げようと思っていたわけではないのだとか。 「単純に革小物を作るのが楽しくて。それで作ったものを販売できるイベントがあるのを知ってやってみたんです。そこでのモノを作って売るという経験を通して『あ、ブランドを作るってこういうことか』と気付いたというか(笑)」 販売する上で、屋号が必要だと思ってつけた「inoui」というブランド名。 「フランス語の辞書で、逆さからも読める単語を見つけて。厳密に言うと、iの点々が上にあるのが正しいですが、「とんでもない」「果てしない」「前代未聞」という意味も面白いなと思ってつけました。フランスの人にブランド名を言うと、『あ、そういうことね』とすんなり納得されるんです。革でビスケットを作るのが“前代未聞”という意味にハマってるみたいで(笑)」

inoui

制作する上で譲れないこと

楽しい、面白そう、やってみたいという原田さんの純粋な思いがさまざまな偶然を必然へと変えている印象を受ける「inoui」の誕生ストーリー。今年はブランド誕生20周年のアニバーサリーイヤーとなります。人間でいうと、赤ちゃんが成人になる、決して短くはない時間。 「最初の頃は、価格のつけ方から素材をどう調達するのか、いい素材かどうかをどう見極めるのかなど、試行錯誤の連続でしたね」と振り返る原田さん。アイテム制作において、大きく変化したと感じることはないそうですが、制作をする上での気持ちにはある変化が訪れたといいます。 「量産化を求められ、内職の方に手伝っていただくことになったとき、このやり方だと自分の中でのクオリティが保てないと感じたんです。これは私がやりたかったことではないなと。そんな当時の経験から、『無理して続けるのはやめよう、自分ができる範囲での量産化にしよう』と思いました」 作り手として譲れない思い。 「妥協するくらいならやらない。20年間いろんな経験をする中で、そう思えるようになりました」

inoui作業机

まだ見ぬ未来にワクワクが止まらない!

20年という時間の中で、自身の中で大切にしたいこと、やりたいことが見えてきたと話す原田さん。 夢はまだまだ膨らみます。 「身近なところでいうと、今年はもっといろんなイベントに出店して、ブランドを知ってもらいたいです。あとは、作品として、商品以外のモノも作っていきたい。今考えているのが和菓子シリーズ。和菓子ならではの繊細さや色合いを革でどう表現できるのか、ビスケットとはまた違う雰囲気のモノになる予感がして、ワクワクしています。そして、いつか短大の頃からの夢だったお店を持ちたいです。食べ物も提供できて、雑貨も扱う場所。同じようにモノ作りの仕事をしている姉や、ブランドを始めたことで繋がった仲間と一緒にできたら最高ですね」 料理の道から雑貨の道へ。そして、それらを複合的に扱うお店を持つという夢へ。一見関連がないように見えるモノたちがしっかり繋がっていく、不思議な縁を感じました。

後編では、原田さんがアイテムに込める思いやチャームができるまで、そして新作アイテムについて取り上げます。

取材・文/林知子 写真/林恵理子

Creator/Brand

inoui(イヌイ)

革のビスケット屋

inoui(イヌイ)

今年20周年を迎えるinoui(イヌイ)は、革のビスケットを毎日使える気軽なアイテムに仕立てています。 使い込む程に ”こんがり” 色付くビスケットをお楽しみ下さい。

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