分け隔てない、“道具”としての帆布バッグ | SOUQ ZINE スークジン

分け隔てない、“道具”としての帆布バッグ

分け隔てない、“道具”としての帆布バッグ
新しい学校に通い始めたり、新たに社会に出たり。多くの人が新生活を始める季節。今回のSOUQ IT!は、通勤・通学用にもぴったりな「KEESE(キース)」の帆布バッグを紹介します。デザイナーの刄田来生(にった きせい)さんに会いに、大阪・堺市を訪れました。

刄田さんと会ったのは、ふだんからよく訪れるというカフェ「八六八ビル」。もともと印刷会社だった建物をリノベーション、取材当日はベトナム料理のワークショップが行われるなど多目的スペースとしても利用されている、とても空気感のいい店です。

KEESE大阪・堺にある「八六八ビル」にて。刄田さんが肩にかけているバッグは「KEESE」のpuff(オリーブ)

刄田さんがブランドを立ち上げたのはわずか2年前。しかも、これまでまったくものづくりの経験はなし、学校で学ぶこともなく、独学、自己流でカバンづくりを始めました。

「最初はどこかの企業や学校に入って、修業を積んでから独立という流れが普通なんでしょうけど、年齢的にもきついなと思っていまして」。

刄田さんは、19歳のときに福岡から大阪に出てきて、消防士として働きます。26歳のときに、好きな仕事をしたいと一念発起。カバンづくりを始めたのです。

「そのとき、つくりたいものは決まっていたので、下積みの時間がもったいないな、すぐつくり始めたいなと思っていました。自分で調べたりして、基本は独学なんですが、カバンづくりのプロにも話を聞きながら、つくりかたを覚えていきました」。

KEESE

刄田さん自己流のカバンづくり勉強法のひとつが、古着屋やヴィンテージショップで買ったバッグを一度分解して、そのあと自分なりに組み立て直すという方法。

「一番最初の分解は、新聞を配達するときに使うニュースペーパーバッグという海外のバッグでした。結構簡素なつくりだったので、とっつきとしてはよかったですね」。

1年間試行錯誤しながら、ヨーロッパやアメリカの古いバッグを約20個解体した刄田さんは、バッグの構造や仕組みをだんだん覚えていきます。

「ひとつひとつ、構造はどうなってるんだろう?と、とことん考えながら分解しました。古着屋さんって、知識が豊富なオーナーさんがいっぱいいらっしゃるので、このバッグはなぜこういうデザインにこうなっているのかをしつこく聞いたりしながら」。

KEESE

シェアするものづくり

2018年に「KEESE」がスタートしたときから、コレクションにラインアップされていたシグニチャーアイテムのboat tote。これは、同じ型で、SmallMediumLargeの3種類のサイズがあります。一般的にサイズのバリエーションは少ないバッグでは、珍しいケースです。

「『KEESE』のテーマは、“シェアするモノ”です。男性は男性らしく、女性は女性らしくと区分けするのがあまり好きではないので、できたら分け隔てなく持ってもらいたい。どっちにもよりすぎないデザインを意識していきたいなあという考えから。だから、どういう方が持っても合うように、サイズはできるだけ多くしようとしています」。

KEESE「KEESE」のbote tote(ブラック)のSサイズ。

「KEESE」の帆布バッグは、ナチュラル、オリーブ、ブラックの3色がベース。 bote toteでいうと、女性にはブラックのSサイズが人気。黒だとカジュアルになり過ぎず、大きさも通勤用として使いやすいのかもしれません。

KEESE

今では豚革のスウェードを使ったバッグもラインアップされていますが、「KEESE」のスタートは帆布から。刄田さんがバッグづくりを始めるにあたって、最初に帆布という素材を選んだのは、どうしてでしょう?

「消防車のホースが帆布でできていて慣れ親しんでいたから…というわけではないですけど(笑)、やり直しがきくというか、丈夫でつくりやすく耐久性が高いというのはありますね」。

1960年代前後につくられた旧型のシャトル織機で織った倉敷帆布を使用。boat toteのナチュラルは3号帆布というかなり厚めの帆布を使っています。

「普通帆布は使い込むと生地が柔らかくなって、どうしてもくたっとなってしまいます。それを避けるために厚めの生地を使っています。素材自体が持っているそのものの風合いを楽しんでもらいたいです」。

KEESE厚手の帆布生地が使われていて、しっかり自立するpuff。

“ふくらみ”という意味を持つpuffはマチが17cm。「シルエットがきれいに見えるよう、あえてマチを広くとっています」と刄田さん。幅のあるストラップのため食い込みにくく、肩や手の負担を軽減してくれるデザインです。

KEESE
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KEESEマチが広いpuff(オリーブ)。ナナメがけにしても美しいシルエットは崩れません。

アート作品というより道具として

apron bagは、自己流でカバンを分解していたときに出会ったミリタリー物のエプロンバッグをヒントに誕生しました。

「海外のミリタリー物のヴィンテージバッグは、ものとしても道具としても魅力的で。あの感じを出したいと思いつくりました」。

KEESE
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KEESE「KEESE」のapron bag。「紐を結んでない状態が基本で、それを結んで調節できるので、実際にエプロンとしてもカフェのサロンみたいに使えます」と刄田さん。ストラップを絞れば、ショルダーや手提げなどさまざまな使い方ができます。

使い込まれた道具に魅かれるという刄田さんは、自身がつくるバッグも道具として機能することが大切と言います。

KEESE刄田さんが、バッグづくりをするときに使う道具たち。

「見た目がすごくかわいいとかかっこいいというカバンは、それはそれで魅力があると思いますが、僕は、使いやすく、ちゃんと用途があるものがいいんじゃないかと思っています。アート作品というよりは道具をつくりたい。それを性別や年齢など分け隔てなく、長く使ってもらえればうれしいです」。

KEESE

次につくりたいものありますか? という質問に、「今まで主にキャンバスを使ってつくってきたので次はナイロンとか。素材にこだわりすぎず、いろんなものを使っていきたいなと思います」と刄田さん。独学でカバンづくりを初めてから約2年。落ち着いているようでいて、どこかシャープさを感じさせるお人柄のように、これからもシンプルでありながら、ピリッとスパイスの効いたものづくりを続けていかれるに違いありません。

取材・文/蔵均 写真/桑島薫

Creator/Brand

KEESE(キース)

バッグブランド

KEESE(キース)

コンセプトは、「シェアできるモノ」
性別や世代問わず、シェアできる普遍的なデザインの作品を革・キャンバス生地・ヴィンテージ生地などを使い、全てハンドメイドで製作しています。

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