キチジツ 第1回 思い立ったら、キチジツ。

ペンケースやカードケースを中心に、質感と独特のデザインで人気を呼ぶ「キチジツ」。作り手である倉田篤志さん、あかねさん夫妻を訪ねて、大阪・羽曳野市のアトリエを訪れました。
- SOUQ
- このアトリエ、外から見ると喫茶店のような佇まいですね?
- 篤志
- 喫茶店だったんですよ。
- SOUQ
- あっ、やっぱり。ここをアトリエにされたのは、いつぐらいなんですか?
- 篤志
- 4年になります。
- SOUQ
- 結構手を加えられたように見えますが。
- 篤志
- そうですね。床を張って、壁とかは漆喰塗って、カウンターのところも壁をつくって。
- あかね
- もうだいたい自分たちの手でやって、初めてだったので苦労しました。
- SOUQ
- きれいにリノベーションされてますね。ウイスキーのボトルが並んでいるのは、喫茶店時代の名残ですか?
- 篤志
- いや、あれはボクが飲む用です(笑)。

- SOUQ
- お酒はよく飲まれるんですか?
- 篤志
- 結構飲みますね。大学の同級生のアーティスト、北直人がたまに飲みにきています。そのときは朝まで飲むことが多いですかね。
- あかね
- 飲みだすと止まらないです(笑)。
- 篤志
- そこにある彫金が北直人の作品で、すごく好きで収集しているんです。ブローチとか最近かわいいものをつくってますね。

- SOUQ
- 大学はどちらだったんですか?
- 篤志
- 大阪芸術大学です。(あかねさんと)二人とも同じですね。
- SOUQ
- このアトリエからは近いですよね?
- 篤志
- はい、学生の頃は遠くから通ってたんですけど、今になってこの近くに来て(笑)。
- SOUQ
- アトリエの場所を決めるのに、大学の近くでというのはあったんじゃないですか?
- 篤志
- いや。ここは大阪府下でも面積あたりの値段がかなり安い物件で(笑)。とりあえずお金ない状態で始めたので。ある程度広くて、家賃が安かったんですね。ここ2軒家がくっついてまして。最初は弟夫婦とシェアしていたので、家賃も半分ででいけましたしね(笑)。
- あかね
- 弟夫婦は、子どもが生まれたこともあって、昨年末に引っ越しましたけどね。

- 篤志
- もちろん、大阪芸大が近いので、お金に困ったら、学校で助手の仕事とかができるかなとも思ってはいました。
- あかね
- あと音の関係もあって。革雑貨をつくるのに、作業すると結構大きな音が出るんですね。でもここは三方が道なので、それほど音に気を使わなくてもいい。そういう物件って探してもなかなかないんですよ。
- SOUQ
- なるほど。結構音が出るんですね。
- 篤志
- そうですね。金属を叩いたりしますから。
- あかね
- 家が密集する住宅地だと結構むずかしいかなと思って。ここは横が川ですし。
- SOUQ
- 制作には格好の立地条件だったんですね。それにしても、アトリエがすごくきれいで整理されてますよね。
- 篤志
- そうですか? 仕事しているときはどんどんゴミとかが溜まっていって、ひと段落したときに掃除して、という感じです。
- SOUQ
- やはり毎日掃除しないとダメですか?
- 篤志
- 革の場合、ちょっとしたカケラでも跡がついてしまったりしますので、いつもきれいにしておかないと、なかなか作業しにくいですね。

- SOUQ
- 収納や仕組みもだいぶ計算されてますよね?
- 篤志
- スペースがないんで、しょうがなく。
- あかね
- パズルみたいなもんです。
- SOUQ
- でも、そういうの嫌いじゃないですよね?
- 篤志
- はい、好きです(笑)。
- SOUQ
- 金づちがズラッと並んでますよね。
- 篤志
- 二人分だからすごく量が多いんですよ。
- SOUQ
- やはり叩くものによって、変わってくるんですか?
- 篤志
- そうなんです。鍛金という技法でやってまして。叩いていくときに金づちの種類で打てるタッチが変わってくるので。

- SOUQ
- 大学時代に学ばれていたのは、なんだったんですか?
- 篤志
- 二人とも彫金ですね。
- SOUQ
- なるほど。では「革と金属の工房 キチジツ」で、金属のほうは二人ともお手の物ですね。革に関しては…。
- 篤志
- 実は革は、妻が先に始めてまして。
- SOUQ
- えっ、そうなんですか?
- 篤志
- カメラのケースとかをつくってたみたいで。

- SOUQ
- そうなんですね。そういえば、アトリエにたくさんカメラも置いていますね。
- 篤志
- これはソ連製の「ゾルキー」。ライカのコピーみたいな感じですね。レンジファインダーで写りも面白いですね。
- SOUQ
- カメラも珍しいものをお持ちなんですね。
- 篤志
- フィルムをやってみたいなあと思ったときに、なんかいいなあと思って。

- SOUQ
- 「キチジツ」として始められたのは、いつ頃なんですか?
- 篤志
- 前職が東京のメーカーで働いてまして。そこで革のことを覚えたのですが、5年ぐらい前に退職して一時自宅に厄介になってたんですね。そこで準備をしてブランドを立ち上げて、1カ月でここへ引っ越してきました。
- SOUQ
- 早かったですね。ブランド名を「キチジツ」にしようと思ったのは、どういう理由ですか?
- 篤志
- 名前を考えているときに、いきなり最初に出てきたんですよ。

- あかね
- 何にしようか~と言いながら、スケッチブック出して二入で考えてたね。
- 篤志
- そのとき、ふと出てきたのが「キチジツ」で。縁起いいからこれにしようとなりました。
- あかね
- 思い立ったら、ですね。

取材・文/蔵均 写真/桑島薫
とてもシステマティックなアトリエを拠点に、二人の子どもを育てながら日々制作する篤志さんとあかねさん。次回第2回は、創業当時のお話をうかがいます。
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