キチジツ 第3回 最高の革との出会い | SOUQ ZINE スークジン

キチジツ 第3回 最高の革との出会い

キチジツ  第3回 最高の革との出会い
金具一つとってもヤスリを使って丹念に仕上げるという革と金属の工房「キチジツ」の倉田夫妻。今回はメインアイテムであるペンケースやカードケースに使っている革についてお話をうかがいました。
SOUQ
使っている革の種類ってどういうものなんですか?
篤志
イタリアで伝統的な手法でつくられている牛革です。革をなめすときに植物タンニン、つまり樹木の渋、そして牛の脂だけを使いなめしてるんですね。そういうやり方だと、渋や脂を染みませるのにすごく時間と手間がかかるので、革が完成するまでに何カ月もかかるそうです。一般的な革だと、2、3日でなめされるものもありますが。
SOUQ
だいぶ時間短縮できるようになったんですね。
篤志
一般的な革だと、魚の脂を使うことも多いんですね。サラッとしているので染み込みやすく、1日で染み込んじゃうんです。
キチジツ
SOUQ
さらに短時間でなめせる?
篤志
はい。でもそのぶん脂が抜けるのも早く、使っているうちにクリームの手入れとかが必要になるんですね。でもキチジツで使っている革だとみっちり牛の脂が入っているので、脂が抜けにくいんですよ。表面に光沢も出てきて。
あかね
パサパサしないんですよね。
SOUQ
なめらかさがいつまでも続くという感じなんですかね?
篤志
はい。革のつくり方としたら、いちばんシンプル。表面に塗装がないぶん傷もつきやすいのですが、使い込むうちに傷もなじんできて、いい味になっていきます。
SOUQ
経年変化も味のうちですね。
篤志
革は、長く使ったあと、美しくあればいいなと思っています。どうしても革は、こすれたり傷ついたりで白くなってきてしまうんですよね。でもこの革だとそういうのが少ないんで。白くなっても、こうやって手でこすってなじませると消えるんですよね。
キチジツ「キチジツ」でつくられている革のバッグ。今は受注生産となっている。
SOUQ
ほんとだ! 不思議。なんでですか?
篤志
全体に脂がみっちり入っているんで、毛羽立って繊維が浮いたところも押さえるとなじんでくるんですね。繊維の隙間を埋めるんだと思います。長く使っていると勝手に傷も消えてしまうし、手入れもいらないし。
SOUQ
言うことなしですね。この理想の革を見つけるまでには、いろいろと試したり探したりされたんですか?
篤志
最初はいろんなところから革を取り寄せましたね。この革は知り合いで靴をつくっている工房があって、そこでこれを使っていたので、紹介してもらいました。
あかね
私の実家の近くでやっていた靴屋さんなんですけど、母と交流があってたまに遊びに行ってたんですよ。そこで見させていただいたら、この革いいねえってなって。
キチジツ
篤志
扱っているのが浅草にある革問屋なので、そこへも直接見に行きました。
SOUQ
革を扱う店というと浅草が多いですよね?
篤志
多いですね。あとは姫路。兵庫県はカバンで有名な豊岡もありますから、多いですね。大阪では大国町から難波あたりが革関係は多いですね。
SOUQ
もうずっとこの革を使われてるんですか?
篤志
そうですね。もうずっと。匂いまでいい革なんで。
SOUQ
匂い? どういう匂いなんですか?
篤志
革らしい香りというか、化学的な匂いはしません。
キチジツ特別に革だけでつくった指輪のケース。現在は非売品だが今後販売の予定も。
SOUQ
革を扱うのに、気を使っていることなどはありますか?
篤志
持つときに絶対に爪を当てないというのが癖になってて。ことさら指の腹で持つようにしていますね。
あかね
爪で傷つけてしまうと、革が使えなくなる場合もありますから。
SOUQ
なるほど。爪は常に短く切っておかないとですね。
篤志
はい。でもこの仕事していると、爪が伸びるのが早いんですよ。
SOUQ
えっ、そうなんですか? なんでだろう?
篤志
やっぱり手先をよく使うからですかね。3日、4日でずいぶんと伸びます。
SOUQ
そういうもんなんですね、人間のカラダって。
キチジツ
篤志
指の腹はもうカチカチです。
SOUQ
作品をつくっているときは、すべての指を使うんですか?
篤志
そうですね。小指も支えるときに使うんで、全部使いますね。
あかね
革を押さえるときも、指の変なところを当てながら縫ってるときもあります。
SOUQ
キチジツさんの場合、革を縫っていくのもすべて手作業だと思うのですが、苦労されていることなどはありますか?
あかね
注文して革が届くとき、微妙に革の状態が違う時もあるんですね。「今日はちょっと硬いなあ」とか「今日のはやわらかいなあ」とか、ハリがちょっと違ってくるので、それを調整していかなければならないですね。
篤志
牛の部位によっても変わってきて。背中側の革は硬いんですよ。
キチジツ漉いたあとの革を利用してつくられているブックカバー。
SOUQ
そうなんですね。
篤志
大きい1枚の中で、どの部分を切り取るかで変わってきます。そして、切り取るときに、繊維の方向がまっすぐになるように取っていくんですね。繊維の方向が斜めに入ってしまうと、製品を使ってるうちによじれちゃうんですよ。
SOUQ
そうか。革は大きいものが1枚もので送られてくるんですね。
あかね
そうです。その革のどこを取っていくかですね。
篤志
繊維の方向と漉きの厚みで、コシを出していきます。
SOUQ
話をうかがっていると、つくる前段階の革を準備するのも大変そうですね。
あかね
結構考えながらやってます。革を知ってないとできないですね。
篤志
今はもう裁断するのにクッキーの型のような抜き型をつくったので、プレスして抜けるようになったのですが、最初は1個1個線引いて手で切ってました。
あかね
最初の頃使っていた革は、表面上にラッカーが塗られていたので、1枚1枚細かいヤスリでうっすら剥がしてましたね。
篤志
今はいい革が手に入るようになったんで、そういうこともしなくてだいじょうぶです。

取材・文/蔵均 写真/桑島薫

革へのこだわりや造詣の深さから生み出される「キチジツ」のアイテムの数々。次回最終回は、倉田さんご夫妻のものづくりの原点についてお話をうかがいます。

Creator/Brand

キチジツ

革作家

キチジツ

革作家の倉田篤志による、ペンやめがねケースの皮革ブランドです。

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