Luka(ルカ)前編 色彩と曲線でふんわりと 紡がれた物語をまとって

毛糸で描かれる絵のような1点物のマフラー
カラフルな毛糸が絶妙に絡み合うLukaのマフラー。色彩はもちろんのこと、編んであるニットともフェルトとも異なる軽やかな“間”が、このアイテムの魅力のような気がします。しかしながら、編むでもなく縫うでもない、このアイテムはどんな手法で作られているのでしょうか。お聞きしてみると、「これは自分で編み出した作り方で、毛糸フェルトと呼んでいます」と山川さん。

毛糸をニードルで刺して、繊維を絡ませることで固定するというものですが、毛糸がどんな曲線を描き、どんなふうに色と色が繋がれていくのかは、すべて即興。図案があるわけではなく、山川さんの感覚で絵を描くように作られていきます。即興だから、もちろんすべて1点物。2度と同じものを作ることはできません。ひとつ一つにふたつとない個性が宿っていると思うと、なんだかとても愛おしく感じてしまいます。

ひとつのマフラーを作り上げるのにかかる時間は、3日間。同時並行でいくつも作るのではなく、ひとつずつ丹精込めて丁寧に仕上げていくのが山川さんのやり方です。 「細かいところにも手を抜かずに作りたい気持ちがあるので、機械に頼らずすべて手作業で作っています。ふわふわの質感を残しつつも毛糸が決して離れないようにしたいから、手で風合いをみて微調整しながら進めていきます。細部にも神が宿る。そんなふうに思いながら、日々作業をしています」

色彩で紡がれる情景から、鮮やかにイメージを広げて
Lukaさんのアイテムは、色の組み合わせ方にもハッとします。毛糸という素材感も手伝って、眩しいほどの鮮やかさでも、ほんわりとした温かさが心にまで伝わるよう。色の組み合わせについて、山川さんはこう話します。 「いわゆるベーシックな色の組み合わせや馴染む色合わせは、なるべく使わないようにしています。それは、見たことのない配色を楽しんでいただきたいから。実際に巻いてみると、アイテムの印象も、身につけてくださった方の印象も随分変わるので、みなさん表情がぱぁーっと明るくなります。それを見ているのが楽しくて」

アイテムのひとつ一つには、タイトルが付けられています。それは、「星からこぼれる光マフラー」だったり、「湖に咲く花マフラー」だったり。まるで物語のワンシーンのよう。
「私の創作は、毛糸の色から情景を思い浮かべるところからはじまります。頭の中に浮かび上がった物語を毛糸の色彩とラインで表現している、という感じかもしれません。『木立と花のマフラー』とタイトルをつけたマフラーは、ある絵本に出てくる木立と、その中で咲いているお花のイメージです。1点もののアートヤーンを使っているのですが、独特の立体感も生まれるので、思わず微笑みながら触れたくなってしまう愛らしさがあります」

毛糸を絡ませながら描かれた絵は、写実的ではなくあくまで抽象的。だから、その色から、線から、立体感から、どんな物語が想像できるのか、イメージを膨らませてからタイトルを見てみるのもオススメの楽しみ方です。 「このマフラーをきっかけに、お一人お一人の個人的な記憶が呼び覚まされることもあると思っています。見た方がそれぞれの想像を膨らませて、こういうイメージだね、と言っていただけるのも嬉しくて。それをきっかけに、お客様との会話が弾むこともよくありますよ」
概念に囚われずに楽しめば、自由の翼が広がっていく
商品名としてはマフラーですが、その楽しみ方は首に巻くだけではありません。山川さんにおすすめの着こなしをお聞きしてみました。 「首にシンプルにかけて、差し色としてコートから襟元だけ少しのぞかせるのもオススメ。どれくらい色を出すか、その割合でも印象がかわりますから、いろいろ試していただけたら嬉しいですね。あとは、ショールのように肩に纏ってブローチでとめるのもいいですね」
「おしゃれなお客様は、白いブラウスを着て、片方の肩にマフラーをかけて裾をベルトで留めてきてくださっていました。そんなふうに、洋服の一部として楽しんでいただくのも嬉しいです」 インテリアのアクセントとして使ったり、アートピースとして飾ったり、お客様の楽しみ方はいろいろだと言います。マフラーというアイテムの概念に囚われず、もっと自由に発想を広げてみると使い方が広がるかもしれません。ちなみに、表面は絵柄がくっきりパキッと見え、裏面は輪郭がふんわりとしたやわらかな印象。それをリバーシブルと捉えて、お好みで面を変えても楽しめます。

Lukaのアイテムは、1点もののアート作品でもある。しかしながら、どんどん身につけて欲しい、たくさん使って楽しんで欲しい、という山川さんの想いがあるから、お手入れのことまで考えられているのはありがたいのです。
「一度洗って、色落ちしたり縮んだりしないか確認していますので、ご自宅でお洗濯していただいても大丈夫です。おすすめの方法は、ゆっくり押し洗いをした後、洗濯機で脱水を行い、形を整えながらアイロンで表→裏→表とプレスしてください。そうすると、大体乾きますから。家庭用のアイロンなら高温で、不安な方は当て布をしていただくと安心です」

見ているだけでもわくわくしてくるようなLukaのマフラー。前編では、アイテムの魅力にフォーカスを当ててお届けしました。後編では、山川さんがこのアイテムを作るようになったきっかけや、ものづくりへの想いについてお話をうかがいました。
Creator/Brand

毛糸フェルト作家
Luka(ルカ)
『ずっと女の子だった』ことを思い出す、絵画のようなマフラーのコレクション。 身につける方それぞれの物語を想起させるよう一点一点にタイトルを付け、丁寧に手作業で制作した一点物の作品群です。