masaco.(マサコドット) 第2回 シャツの着想は90年代

「masaco.」のこれまでを振り返った前回。現在40歳代のふたり、今回は代表作の「シャツ」をつくるうえで影響を受けた90年代のファッションについてもお話を聞きました。
- 金子
- でも今とは違って、当時の縫製のクオリティはめちゃくちゃですよ(笑)。
- 奥田
- 縫製の勉強はしていなかったので。テキスタイルだけで。
- SOUQ
- テキスタイルと服づくりは、素材が同じ布でも別の事柄だと思うんです。表現の手段が“服”であった理由はなんでしょう。
- 奥田
- 洋太郎さんのグラフィックの話と同じで、私は布が好きなんです。それを日常で使えるものに生かそうとなった時に、だったら服がいいと。

- SOUQ
- 縫製は独学で?
- 奥田
- 母親がパッチワークしていたので、小学生の頃から見よう見まねでミシンを踏んでいました。自分の服は無理ですが、人形の服を手縫いで作ったり。
- 金子
- あと、ふたりともひびのこづえさんの影響を受けていて。学生の時かなぁ。大阪の戎橋にあったキリンシティでやっていた展覧会を観て。カッチリつくるというよりも、作品的なつくり方なんですよね。こんなやり方もあるのかと。
- SOUQ
- 他に影響を受けた作家やブランドってありますか?
- 金子
- それは90年代のDCブランドですね。ひびのさんは観た時にこれだ、と。親近感を感じたんです。
- 奥田
- 美術系ならではなのかもしれないけど、商品じゃなくて作品として作りたいという気持ちが強くて。ひびのさんの影響は大きかったですね。
ふたりでひとつのブランド
- 奥田
- 2010年の夏に関西の手仕事を紹介する雑誌の企画に絡めた合同展が例の「Mustard」であったんですけど、雑誌には載っていなかったのにお声がけくださって。洋太郎さんも巻き込んで本格的にブランドをはじめたのはそれからです。この人の後押しもあって、ちょっとやってみようかなと。
- SOUQ
- それでようやく、ふたりで制作をする今のスタイルになったというわけですね。展示されたのはどんな作品だったんですか?

- 金子
- 今はもう写真しかないんですけど、すごくいかついベストを。でも、雅子くんのファンの方には悪い事をしたなと思っていて。前はナチュラルな感じだったのに、急にテイストが変わったから…。


- 奥田
- (笑)。ひとりでやっていた頃は一点ものが多くて。編んだ糸や布をミシンワークで貼り付けて、シャツの上でコラージュするような作品的なものをつくっていたんです。これはまた別のギャラリーでインスタレーションとシャツの展示をしたときの写真ですね。名義は私なんですけど、アイデアは洋太郎さん。ポケットが展示品になっていて、お客さんが選んでつけるという。

- SOUQ
- アイデアを聞いた時に、それはちょっと…とはならない?
- 奥田
- むしろ、私には思いつかないから、はっ!っとするというか。
- 金子
- 雅子くんは色合わせとかが個性的なので、それを洗練したらどうなるだろうと。
- SOUQ
- ふたりの個性がちゃんと両輪になっているんですね。すごいなぁ。
着れば分かる、そんなシャツ
- SOUQ
- 「masaco.」さんが服のなかでも「シャツ」にこだわった理由はなんでしょう。
- 金子
- それは10代のときに憧れたモード系ブランドとか、ひびのさんへの憧れですかね。
- 奥田
- 私はシャツを着るのが好きというのが一番の理由かな。
- 金子
- あ、それとよかったと思うのが、ふたりともちゃんと服の勉強をしていないんですよね。していたら、シャツつくろうとは思わなかったんじゃないかな。
- SOUQ
- 確かに、シャツはつくり手の腕が問われるイメージがありますね。
- 金子
- 手がかかって苦労する割に体に合うお客さまが少なくて。でもシャツはシンデレラサイズみたいなこともあるんでね。
- SOUQ
- かたちの特長とかは。
- 奥田
- 例えば、襟は小さいか、もしくはラウンド、ですね。

- 金子
- あとは動きやすいように腕周りが太かったりとか、9号だけど幅は11号とか。ルーズなラインが好きなんですよね。僕らの世代ならではというか。
- 奥田
- 見た目は小さいと思われがちなんですけど、袖を通すとゆったりしていて動きやすい。柄もシャツ単体で見ると派手と思われますけど、コーデのなかに入れてしまえばそんなに派手でもないし、意外と顔になじむというか。
- 金子
- だから、お客さんにはいつも着るだけ着て、僕らがやりたかったことだけでも知ってください!って試着を薦めています。えっと、つまり何が言いたいかというと…うちはそんなブランドです(笑)。
取材・文/吉田志帆 写真/桑島薫
真っ直ぐに、作品への想いを語ってくれたおふたり。次回は「masaco.」の服がどのようにして生み出されているのか、実際に作業場を拝見しながら話を聞いていきます。
Creator/Brand

服飾デザイナー
masaco.(マサコドット)
「masaco.(マサコドット)」は、オリジナル生地、パッチワークなどを組み合わせた遊び心ある洋服や、ユニークな形の鞄などを展開するハンドメイドブランドです。