全部がちがって、とてつもなく自由なロシアの民芸品「マトリョーシカ」の祭典 | SOUQ ZINE スークジン

全部がちがって、とてつもなく自由なロシアの民芸品「マトリョーシカ」の祭典

全部がちがって、とてつもなく自由なロシアの民芸品「マトリョーシカ」の祭典
うめだスークで開催されるイベントやプロジェクトの裏側をご紹介する「プロジェクトストーリー」。今回スポットを当てるのは、2019年7月24日(水)ー30日(火)まで開催される「マトリョーシカ祭2019」です。 今回で3回目となるこのイベントは、昨年から場所を中央街区パークに移し、品揃えも賑わいも日本最大級のマトリョーシカの祭典に成長しつつあります。 コレクターの方だけでなく、今まであまり知らなかったという方も、見れば見るほどにそのさまざまな表情や色彩に引き込まれ、魅了されてしまうロシアの民芸品「マトリョーシカ」。今回はイベント開催を前に、初回からセレクトを担当しているマトリョーシカ専門店「GINZA HAKKO 木の香」の店長 加藤雄三さんに、今回のイベントについて、またマトリョーシカの魅力についてお話を伺いました。
GINZA HAKKO 木の香

作家による1点ものが一堂に会す

まず、今回のイベントの見所は、「GINZA HAKKO 木の香」がロシアから買い付けた膨大なマトリョーシカの数々。マトリョーシカというと、いわゆるお土産品の絵柄を想像してしまいますが、実は、作家による1点ものも多く作られています。「すべての作品が〝手描き〟であるということが、マトリョーシカの素晴らしさであり、最大の魅力」と加藤さん。

GINZA HAKKO 木の香

「作家ものだけではなく、手頃な価格で販売しているお土産品も全部手描き。だから、同じ絵柄でもよくみるとちょっとずつ表情がちがいますし、型もすべて手で削っていますから、同じ大きさでも上下の組み合わせを変えてもはまらないんです」

今回も、何千というマトリョーシカが会場にずらりと並ぶ予定だと言います。その光景は、まさに圧巻。

「昨年の開催で、『ロシアでもこんなにたくさんのマトリョーシカは見れなかった』と感想をいただいたのですが、それは確かにそうかもしれません。だって、私が作家一人ひとりとお会いして買い付けていますから。これだけの作家ものが一堂に会す機会って、ロシアでもなかなかないですよね」

GINZA HAKKO 木の香

確かに、「GINZA HAKKO 木の香」の店内にずらりと並ぶマトリョーシカを見ていると、確かに、ひとつとして同じ表情のものはありません。特に、作家によるものは、色のトーンや顔立ち、洋服のデザインやテキスタイルもさまざま。顔のパーツのラインも、絵の具で描いているものもあれば、木を焦がして描いているものもあって、その手法にもちがいがあります。

GINZA HAKKO 木の香

「マトリョーシカ作家の作品には独特の魅力があります。今回のマトリョーシカ祭で来日してくださるマリア・ドミトリエワさんは、ロシアでも人気の作家さん。素朴で繊細なタッチとやさしいニュアンスの色使い、ニスを塗らずに木の質感をそのまま残すような作り方が特徴です。また、ナタリア・バローニャさんも人気のある作家ですが、この方は白木素材をキャンバスのように捉えて、季節の景色を描くように大胆に絵付けをしているところが魅力的です」

GINZA HAKKO 木の香マリア・ドミトリエワ作のマトリョーシカ
GINZA HAKKO 木の香ナタリア・バローニャ作のマトリョーシカ

今回のイベントでは、このマリア・ドミトリエワさんによる絵付けのワークショップも開催します。このイベントのために来日するマリアさんに直接習うことができるのは、大変貴重なことだと加藤さんは言います。

GINZA HAKKO 木の香

「マリアさんは、子どもの頃からその絵の才能で注目されていた方です。彼女はこけしコレクターでもあるので、日本には何度か訪れたことがあるそうですが、絵付けのワークショップを開催できるのは、なかなかすごいこと。とても楽しみです。上手でもそうじゃなくても、世界でひとつのものが作れるって、とても嬉しいことですよね。それを感じていただけたらいいなぁ、と思っています。ワークショップは、小学校高学年から参加することができますので、自由な発想で自分だけのマトリョーシカを作ってください」

ロシアでの買付けは、信頼関係を育んでこそ

「マトリョーシカ祭」の初回から出店している「GINZA HAKKO 木の香」は、国内最大の品揃えと言われ、コレクターの中では知らない人はいないというほど。お店としては、一見こじんまりとして見えますが、それほどに定評がある理由のひとつは、現地での買い付けの力でしょう。ここ10年、毎年1回は加藤さんご自身もロシアに足を運んでいるそうですが、多くのマトリョーシカファンを唸らせる買い付けは、訪問回数を重ねる度に育んできた作家との信頼関係やネットワークがあってこそだと言います。

GINZA HAKKO 木の香

「初めて作品を見せていただく場合も、お会いしてすぐに仕事の話をしないのがロシア。まずは、お茶やケーキをご馳走になりながらゆっくりお話をして、そこからやっと作品を見せていただくことの方が多いですね。すでに取引している作家さんでも、『今日は仕事の話はしないぞ!』と釘を刺されて、まずは一緒にサウナに入って、自家製ウォッカをご馳走になって、仕事の話は翌日、なんていうこともよくあります。まずは人と人の関係を築いてはじめて、作品を売っていただけるんです」

GINZA HAKKO 木の香

今でこそ、現地の作家さんともスムーズにコミュニケーションを取っている加藤さんですが、最初はロシア語もわからず戸惑いも多かったのだそう。

「はじめてロシアを訪れた時、知っていたロシア語は『はい』『いいえ』『ありがとう』のたった3つでした。買付けも、身振り手振りと電卓を駆使してなんとかコミュニケーションを取るという感じ。

GINZA HAKKO 木の香

あるおばあちゃん作家さんの作品が魅力的だったのであるもの全部を買おうとしたら、値引きしてくれようとするんですよ。でも、そのままの額でお支払いしたかったので、『いい作品つくってるんだからさ、値引きしなくていいから!』って日本語で伝えて(笑)そうしたらそれが伝わったのか、連絡先を書いた紙を手渡されて、後からわかったことですけど『今度モスクワに来たら連絡して、困った時も頼って』って言ってくれていたみたいです。そこから、彼女には毎年会いに行っていました。言葉がわからなくても、なんとかなるし通じるもんだなぁ、って思いましたね」

知れば知るほど、その自由さに引き込まれる

今ではすっかりマトリョーシカに魅せられている加藤さんも、「GINZA HAKKO 木の香」をはじめる前はマトリョーシカとは全くの無縁。では、なぜこんなお店をスタートさせ、そして加藤さんご自身も夢中になっていったのでしょう。

GINZA HAKKO 木の香

「このお店は、はんだごてやウッドバーニングに使う電熱ペンを作っているメーカー白光株式会社の事業の一環として、手作りを楽しむ人を応援するような店を作ろうということでスタートしたんです。わたしは、電熱ペンの担当を任されていたのでお店の企画にも携わるようになって。どんなお店にしたらたくさんの人が興味を持ってくれるだろう、と考えている時に、今でも一緒に買い付けをしているマトリョーシカ好きのスタッフがその魅力を教えてくれたんです。

GINZA HAKKO 木の香

それで、一度ロシアに視察に行ってみたら、いろいろな絵柄があることに驚いて。それで、やるなら日本一の品揃えの店にしよう!って、ここまでになりました。最初は、学園祭の店よりもひどかったんですけどね(笑)」

そして、加藤さんを夢中にさせたのは、マトリョーシカだけでなくロシアの人たちのおおらかな人柄やDIYでなんでも手作りしてしまうところ、そして、いくつになっても自由な発想で作品づくりを続ける姿勢だったようです。

GINZA HAKKO 木の香
GINZA HAKKO 木の香

「買い付けに行くようになって、マトリョーシカって実はなんでもありなんだなぁ、って気づいたんです。その自由さもまた魅力だなぁ、と。中には、なにこれ?と驚かされるものもありますし、独創的なものもありますしね。かなりクリエイティブな発想で宇宙にまつわる作品を作っている70代の作家さんもいらっしゃいます。ロシアを訪れる度に、必ず新しいもの、新しい作家さんに出会えるのが楽しいんです」

GINZA HAKKO 木の香

加藤さんが買い付けでロシアに行くたびに感じている、「驚き」や「発見」や「わくわく」を体感できるのも、今回の醍醐味。一つひとつの作品をじっくり見てみると、「マトリョーシカってこういうもの」という概念が一気に覆されてしまうでしょうし、ロシアという国やそこに住む人たちにも興味が湧いてくるにちがいありません。

GINZA HAKKO 木の香

マトリョーシカには、老若男女関係なく魅了してしまう、かわいらしさと民芸品としての美しさ、そして「みんな同じじゃなくてもいい」「自由に発想して楽しんでもいい」という寛容さがある気がします。ぜひこの機会に、そんなマトリョーシカの魅力を覗きに、ぜひ足をお運びください。

取材・文/内海織加 写真/東泰秀

『マトリョーシカ祭2019』
2019年7月24日(水)ー30日(火)
※催し最終日は午後5時終了
@阪急うめだ本店10階「うめだスーク」中央街区パーク

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