mellow(メロウ) 第2回 デザインのデザインを探して

人気アクセサリーデザイナーのmellowさんが、今の世界観をどのように築いていったのか? そしてヨーロッパで探した「デザインのデザイン」とは? ピックアップクリエイター第2回は、ブランディングについて話を聞いていきます。
- SOUQ
- 2017年の年末にヨーロッパへ行かれたのは、「デザインのデザイン」を見つけ理解するためという話を前回聞いたのですが、それはどういうことですか?
- mellow
- ちょっと話が長くなりますがいいですか?(笑)。mellowは、2016年から、ブランドのイメージをつくっていくために、アートディレクションをお願いするようになったんです。ニットブランドとコラボすることになったんですが、そのブランドがアートディレクターさんを起用していて。「ああ東京やな」って思ったんですけど(笑)。そのときの撮影が、鳥肌が立つぐらいよくて。
- SOUQ
- それはどのような写真だったんですか?
- mellow
- 深いプールにニットのシャツを着たまま入ってもらって、上からライトを照らして、カメラマンもダイバー装備でプールに入って撮影したんです。

- SOUQ
- 確かに、かなり凝った撮影ですよね。
- mellow
- ほんとにスゴい!めちゃくちゃキレイ!ってなって。それからそのアートディレクターさんに仕事をお願いすることになったんですね。そしたら「mellowちゃんの作品は見せ方がもったいなさすぎる。せっかくこだわりを持っていいものつくってるのに」って言われたんです。
オリジナルの金具をつくって
- mellow
- 私の作品は植物の育成から始まっているんですよ。実家に植物を植えに行って、大量にプランターで育てて、山菜とかもやっていて。アートディレクターさんは、そういう良さが伝わってないと言ってくれて。
- SOUQ
- なるほど。それでアドバイスをくれたりしたんですか?
- mellow
- そのとき、私の作品の類似品が出回っていて、すごく悩んでたんですよ。でもそのアートディレクターさんは、「それはそうだよ。mellowちゃんの直感でするデザインは素敵だし唯一無二だけど、仕入れたもので制作してるから。デザインを盗まれてるかもしれないけど、それはその人たちが思いついたと言ってしまえばそれまでだからね。金具からすべて仕入れをなくしてmellowオリジナルにして、デザインのデザインをしなきゃ」って言われたんですよ。

- SOUQ
- ここで「デザインのデザイン」が登場ですね。
- mellow
- 最初は意味がわからなくて、「はあー?」って感じだったんですけど(笑)。まずは金具からデザインしてオリジナルのものをつくっていこうということになって。でもそうすると、今まで以上にコストはかかるじゃないですか。やり方もすごく変わって。とりあえずオリジナルパーツをつくったのですが、まだ「デザインのデザイン」の意味は理解してなかったと思います。
- SOUQ
- 自分の中で納得できてなかった?
- mellow
- そうですね。見た目はかわいいけど、なぜこういう形にするかっていう意味がないというか。そのあともしつこくアートディレクターさんから「デザインのデザインをしろ」と言い続けられて。「私の思うかわいい形にしてるのに、デザインのデザインって何者?」としか思えなくて(笑)。
- SOUQ
- (笑)。

自己分析をしてわかったこと
- mellow
- でもその頃から、今までまったく興味のなかった他のブランドを意識するようになったんですよ。いろんな作家さんの考え方がわかるような本を読むようになって。で、デザインのデザインの意味がなんとなくわかり始めたんですよ。わかりやすく言うと、コンセプトを決めるとか、表面的なことではなくて強い幹をつくれということなんかなと。
- SOUQ
- 一本筋を通せ的なことですかね?
- mellow
- 私は、幹はあるといえばあるのですが、なぜ今回このアクセサリーをつくったか、その説明ができない。ただかわいいからつくったという意識しかない。もっとちゃんと意味を考えてつくったほうが、作品自体も重みが出る。買う人の想いも変わるなというのが、やっとつかめてきたんですよ。


- SOUQ
- 買う人の想いか…。
- mellow
- それがヨーロッパへ行ったときに、自己分析をしてはっきりしてきた気がして。この何年間は、無理はしていたかもしれないけど、努力は全然足りてなかったなと思って。一個一個にかけるもっと深いものとか。だからこれからは、もっと深く掘り下げたものをつくろうとなって。
- SOUQ
- ヨーロッパの旅で、mellowの方向性が見えたわけですね。
- mellow
- そうですね。行きの飛行機の中で羽生結弦さんの本を読んだんですが、「羽生くんすごい!ちゃんと自己分析できてる!」って(笑)。羽生くんに感化されて、自分の色を見つけて帰ってきました。
取材・文/蔵均 写真/衛藤キヨコ
「デザインのデザイン」の意味がわかってきたというmellowさん。次回第3回は、アクセサリーブランドとしてスタートするまでの話を聞いていきます。