mononogu(もののぐ) 第2回 ブランド名は大和言葉から

実用性を備えつつ、シンプルで気品漂うバッグや小物が人気の「mononogu」。そのものづくりのこだわりとは? 代表でありデザイナーの阪本則近さんにお話をうかがいます。
- SOUQ
- 「mononogu」というブランド名は大和言葉だそうですね。
- 阪本
- はい。漢字で書くと“物の具”。たしか、古語辞典を調べていて見つけたのかな。大和言葉で、身につける調度品や装飾品のことなんです。ブランドロゴも僕が作ったんですけど、これは“物”という漢字とバッグの形を合わせたもの。わかりますか?
- SOUQ
- “物”! 見えました。

- 阪本
- 立ち上げ当初から、日本製のものづくりをしようと考えていました。バッグや小物をつくっていただく工場だけでなく、素材もできる限り日本製にこだわりたい。現場へ足を運んで交渉して、製造工程もじぶんの目で確かめた上で進めたいという想いがありました。
- SOUQ
- 「mononogu」といえば、レザーが印象的です。
- 阪本
- バッグや財布に使う主な素材は、牛革。ヤギ革を使うこともあります。
- SOUQ
- 革も日本製があるのですか?
- 阪本
- ありますよ。毛皮は、いま問題になっているように毛皮を取るために動物を育てて殺傷するのですが、革は食肉の副産物なんです。オーストラリアやアメリカ、中国など、食肉の生産が盛んな地域は、やっぱり原皮がたくさんある。そうした地域から原皮を取り寄せて、日本でなめす、つまり加工したものを使っています。
バッグはあくまでおかず
- SOUQ
- 製品をつくるうえで、大切にされていることはありますか?
- 阪本
- オリジナルをつくること。革なら、色や厚み、やわらかさ、風合いなどを細かく相談した上でつくってもらっていますし、金具も別注なんです。たとえば、バッグにあしらったブリッジやファスナーの持ち手もそうですね。削り出しと呼ばれるもので、職人さんがひとつずつ手づくりされるものなんです。

- SOUQ
- ブリッジは特にリッチな風格がありますね。
- 阪本
- メッキも本金を使っています。というのも、本金は変色しないので。他のメーカーさんがやらないことをやりたい。オリジナルであること、ただし、主張はしない。
- SOUQ
- ミニマムデザインのものが多いですよね。
- 阪本
- ファッションの主役は服なので、バッグはそれに合わせるおかずのようなもの。あくまで装飾品なので、その域を超えないもの、主張せず合わせやすいものを意識してつくっています。“ニュアンスのあるベーシック”が理想です。


二律背反というマジック
- SOUQ
- mononoguは“二律背反”をキーワードにされているとか。
- 阪本
- 一つのアイテムに相反する二つの要素を組み込み調和させる。デザインをする上で、たとえば四角いものを真四角で作ってしまうとおもしろくないというか。どこにでもある商品になってしまうから、少し“隙を見せる”というか。
- SOUQ
- たとえば、ブリッジのバッグでご説明いただけますか。
- 阪本
- 細かいことなんですが、表面は四隅すべてが90度ではなく、上下で角度を変えているんです。上はわずかに角度をゆるやかに。でも、下は90度に近い。

- SOUQ
- ほんとうに微妙な違いですね。角度を同じにすると…?
- 阪本
- 硬い印象になってしまうんです。あとは、このファスナーの端に添えているミミですね。わざわざクッションを入れる必要はないんです。機能的な意味はないけれど、ちょっと柔らかい印象に仕上げるために入れてみる。そんなデザイン的なあしらいを施すことはありますね。
- SOUQ
- ピクニックバスケットにも“二律背反”の要素がありますか?
- 阪本
- これは硬い革と柔らかい革を融合させてあるんです。このバッグのポイントは形。やわらかなヤギ革を用いて、いかに立体的なバッグを仕立てるか?と考えて。結果的に硬質な牛革を内側に使い、外はヤギ革で仕上げています。牛革でフレームをつくるイメージですね。底も牛革なので、フラットかつまっすぐに立ち上がる。


- SOUQ
- でも、バスケットそのものはやさしい印象ですね。
- 阪本
- 蓋の部分にはクッションを入れて、硬さが出ないようにしているからでしょうか。
- SOUQ
- 内側は可愛いですね! ポケットも付いていて。
- 阪本
- ポケットは内側の両サイドに。あと、蓋を留めるマグネットは、さりげなく“隠しマグネット”に。
- SOUQ
- 丸く刺繍された部分ですね。
- 阪本
- これはちょっとしたテクニックを自慢したくて(笑)。こういうこともできるんだぞ、って。僕、そういうとこあるんです。極めてさりげなく、ですけどね(笑)。
取材・文/村田恵里佳 写真/桑島薫
さりげないデザインを心がけ、ニュアンスのあるベーシックなアイテムを提案する「mononogu」。次回第3回は、デザイナー阪本さんが“女性もの”を見つめるクールな視点が飛び出します。
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バッグブランド
mononogu(もののぐ)
古くから文化として根付いてきた、美しい所作や佇まいにフォーカスして、「身に着けるもの」のバッグやスモールレザーグッズを独自の解釈で提案しているブランド。