nezu(ネズ) 第1回 シーズンテーマの世界観

今回の「ピックアップクリエイター」は、独創的な素材やデザインでファッション誌にも取り上げられることが多い「nezu(ネズ)」に注目。その個性はどのようにして生み出されるのか? デザイナーの三島友加里さんに会いに、東京・駒沢オリンピック公園に近いアトリエにおじゃましました。
- SOUQ
- 大きくてきれいな公園が近くにあっていいですね。
- 三島
- たまに散歩したり、公園を抜けるとカフェやアンティークショップがあるので、行ったりします。
- SOUQ
- オリンピック公園ですよね。今年も競技があるのですか?
- 三島
- それがないんですよ。あったら歩いて観に行けるのに!(笑)
- SOUQ
- 残念! さて、「nezu」のホームページを拝見しましたが、コレクションの写真がとてもクリエイティブで刺激的でした。テーマも「Fuzz solid」とか「Water yarn」とか、ちょっと不思議な言葉で引き込まれますね。
- 三島
- ありがとうございます。2015年にファーストコレクションを出してから、半年に一度、ワンシーズンワンテーマで、その世界観に存在するアクセサリーを提案しています。
洋服と同じように構築する
- SOUQ
- アクセサリーのブランドで、S/S(春夏)、A/W(秋冬)と毎シーズンコレクションを発表するのは珍しい気もするのですが…。
- 三島
- そうですね。もともと洋服のデザインに携わっていたので、コレクションの構築の仕方が、それに近い形なのかもしれません。
- SOUQ
- どのように組み立てていくのですか?
- 三島
- まずはこういうものをつくりたいなというイメージに合わせて、漠然としたキーワードを選びます。透けのレイヤーとか幾何学的とか民族っぽさ、オーロラ、クシャクシャとした紙の質感、連続性とか。こういう言葉をいっぱい集めていって、自分がつくり出したいイメージをより明確に精度を上げていくという作業を重ねて、そこからマップに落とし込んでいきます。

- SOUQ
- マップというのは?
- 三島
- 今やっている2020年のS/Sコレクションのテーマは、「free freeze(フリーフリーズ)」なんですけど、軽やかに揺れるカーテン、そよぐ風などのキーワードからどんどん派生して、最終的に“立ち止まっているだけでいつでも自由”、“伸びやかな風が吹く”、そんなテーマに行き着きます。じゃあ、色はどんな感じ? 合わせる洋服は?って考えながら、ビジュアルを集めたものがマップです。


- SOUQ
- なるほど。コラージュのようなものですね。洋服のデザインをされていたときもそういうやり方だったんですかね?
- 三島
- そうですね。シーズンテーマをつくって、それに合うような色や空気感、洋服だとトレンドがあるのでそういう情報も若干加味しながら、いろんな要素を集めてデザインするというのが私の中ではセオリーだったので、それに近いような形ですね。
- SOUQ
- それを構築していく時間は、どれぐらいかかるものですか?
- 三島
- コレクションが終わるとすぐ、次のテーマは何にしようかなという言葉探しを2~3カ月やっているような気がします。息つくひまもないですが、一度半年ごとにコレクションを発表すると決めちゃったので、もうやらざるを得ない(笑)。
女性をプッシュするアクセサリー
- SOUQ
- 半年のサイクルでテーマを出すのは大変だと思いますが、苦労して絞り出すという感じ? それともやりたいことが溢れ出てくる感じですか?
- 三島
- どうだろう…出てこないときは、「あっ、また同じようなこと考えちゃった」と思ったり。でも、似たような感じになると、毎回コレクションを見にきてくれる人に申しわけないので、新しい素材だったり、頭がやわらかいなという驚きのあるデザイン、どちらかがないといけないなと思っています。
- SOUQ
- 「free freeze」の前、2019年A/Wのテーマは「Rolling Wind(ローリングウィンド)」ですね。
- 三島
- 「nezu」のアクセサリーは、実はひそかに女性を応援するテーマをベースに入れていて、「Rolling Wind」のときは、つきあげる風で応援したいなと思ったんですね。竜巻だったり、ビルの隙間でぶわっと舞い上がるような突風など、巻き上がるモチーフが多いコレクションでした。

- SOUQ
- 女性の背中をプッシュしてくれるアクセサリーっていいですね。コレクションテーマがとても面白いので、順に聞いていこうかな…。2019年S/Sの「Overlap moment(オーバーラップモーメント)」は?
- 三島
- 時間を切り取るという感じのコレクションで、ダンスの一瞬を区切ったような、あるいはすぐ消えてしまうモールス信号のような、そんなイメージのアクセサリーもあります。
- SOUQ
- 発想がすごく独創的! そういうアイデアは、どういうところから思いつかれるのですか?
- 三島
- それは……。
取材・文/蔵均 写真/東泰秀
独自の組み立て方で、アクセサリーをデザインする三島さん。コレクションテーマの考え方も面白いのですが、それはどういうふうに発想されるのか? 次回は、ものづくりが始まる環境について話をうかがいます。
Story
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Creator/Brand

アクセサリーデザイナー
nezu(ネズ)
2015年よりテサインレーベル「nezu」をスタート。 nezuでデザインするのは、要素と要素を掛け合わせてできる新しい“たのしさ”を詰め込んだ
アクセサリーブランドを制作しています。