nezu(ネズ) 第3回 めくるめく素材

2015年のファーストコレクションのときは、金属に毛糸を織り込むことからスタートした「nezu」のライン。今回は、素材への考え、その変遷について、デザイナーの三島友加里さんに話を聞きました。
- SOUQ
- 2015年のファーストコレクションのときと比べて、作品が変わってきたという感覚はありますか?
- 三島
- つながっている感じはあります。ただ、お客様やお店の方からは変わってきてると言われることもあります。私としては、一番初めにやり出したときにも、手織りという手法を使って、金属にやわらかい毛糸を織り込んでつくっていました。
- SOUQ
- 金属と毛糸を組み合わせるというのは珍しいですね。
- 三島
- 毛糸は、ニットの編みだとループが連なり丸い感じになって、あったかい、ほっこりというイメージになると思いますが、金属に織りこむことによって、直線が重なってシャープな印象になります。


- SOUQ
- なるほど。
- 三島
- 見た感じはやわらかいけど、触ってみると硬いという反比例するようなものづくりが面白いなと思って。すごいカチッとしてるのに手触り感があるとか、手に取るとハッとするものづくりをしています。
水の糸のように
- SOUQ
- 素材も金属だけ、革だけとか、同じ素材を一貫してつくり続けている作家さんも多いと思いますが、「nezu」の作品は、素材は多種多彩だけど世界観は変わらない気がしますね。
- 三島
- そう言っていただけるとありがたいです。手法は手織りが中心なので、素材が変わるだけで、やってることはあまり変わらないからですかね。
- SOUQ
- このPVC(ポリ塩化ビニル)の作品はどうやってつくっているのですか?これも手織りなんですか?

- 三島
- ここにたどり着くまで苦労しました。この作品を初めて発表したときのコレクションテーマは「Water yarn(ウォーターヤーン)」でした。水を編んだり織ったりして自由自在に変わるやわらかい糸をイメージして、蛇口から出てくる水のスクリューのようなものをつくりたいなと思って、いろいろ錯誤しました。
- SOUQ
- PVCもそのとき初めて使い始めたのでしょうか?
- 三島
- その1年前の「Slow Reflection」のときにPVCの作品を発表していたのですが、このラインの反応がよかったこともあり、この進化系が欲しいなと思っていました。どうなってるか一瞬わからないような、水のような感じをイメージしてつくりました。本当にいろんなサンプルをたくさんつくり、やっと納得のできるものができました。
- SOUQ
- どうやるとこういう形になるか想像もつかないんですが、自由自在に形にしていけるものなんですかね?
- 三島
- こうしたらこうなるかな? と頭の中で立体的に考えながら、ここに切り込み入れたらこういう形になるかなというのを実際に手を動かしながら、つくっています。

新たな素材へ
- SOUQ
- こういうポリ塩化ビニルを使ったアクセサリーってあまり見ないのですけど、結構あるものなんですか?
- 三島
- たまに見かけますが、少ないかもしれないですね。
- SOUQ
- この素材を使おうと思ったのはどうしてですか?
- 三島
- 軽いし、水のようなので、「Water yarn」のコレクションテーマに合うし。
- SOUQ
- PVC素材のアクセサリーは、透明なものと半透明のものがあるんですね?
- 三島
- そうなんです。この白っぽいのは「Water yarn」の次に「Mist weave(ミストウィーブ)」というコレクションのときに発表しました。

- SOUQ
- なるほど、最初はクリアなもので始まり、その後少し白っぽいものができたと。2020年S/Sの「free freeze」では、初めてオーガンジーの素材を使ってますね。
- 三島
- そうですね。今まで生地に憧れて手織りをしてきて、ついに生地に手を出したかと、個人的には節目感があります。
- SOUQ
- 生地に憧れていたというのは?
- 三島
- お洋服を選ぶときって、デザインがかわいいのはもちろん大切なんですが、触り心地で「あっこれ気持ちいいな」と感じることもあると思います。それをアクセサリーにも落とし込みたくて触ったときにハッとするものをつくってきました。だから、どこか私はテキスタイルに焦がれているところがあると勝手に思ってました。

- SOUQ
- 手触り感は大切ですもんね。同じデザインの洋服でも、生地が変わると印象が全然違う。これまで生地を使ってこなかったのはあえてなんですかね?
- 三島
- 生地って端始末をしなければならないのですが、「nezu」には、ちょっと合わないかなとずっと思っていました。今回のコレクションではヒートカットという手法でつくっていて、軽やかな端始末にたどり着けたので、発表することができました。
- SOUQ
- ヒートカットというのはどういうものですか?
- 三島
- このオーガンジーは素材がポリエステルなので、レーザーで焼きながら火で溶かすことによって、端始末が自動的にできるんです。
- SOUQ
- ほつれたりしないんですね。
- 三島
- そうですね、ほつれにくいです。
- SOUQ
- フリーフリーズ…軽やかに揺れる感じはありますよね。
取材・文/蔵均 写真/東泰秀
コレクションテーマに合わせてさまざまな素材を使ってきた三島さん。次回最終回は、「nezu」以前のことについても聞いていきます。ブランド名誕生秘話も聞きましたよ。
Story
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Creator/Brand

アクセサリーデザイナー
nezu(ネズ)
2015年よりテサインレーベル「nezu」をスタート。 nezuでデザインするのは、要素と要素を掛け合わせてできる新しい“たのしさ”を詰め込んだ
アクセサリーブランドを制作しています。