okapi(オカピ)第1回 めずらしい柄もの帆布バッグ

さまざまなものづくりをしているクリエイターを紹介する「ピックアップクリエイター」。今回は、帆布を使い個性的なバッグを制作している「okapi」の佐藤文さんが登場。彼女の個展が行われていた、神戸・岡本のショップ&ギャラリー「LIFE IS A JOURNEY!」でお話をうかがいました。
- SOUQ
- 「LIFE IS A JOURNEY!」さん、気持ちのいい場所ですね。
- 佐藤
- マルシェでごいっしょしたり、奥様の川内まりさんが「okapi」のバッグを使ってくださってる縁もあって、今回初めて個展をさせていただきました。


- SOUQ
- こちらにずらっと並んでいる「okapi」さんのバッグは、そのグラフィカルな柄が印象的なんですが、もともと絵画やデザインなどを勉強されてたのですか?
- 佐藤
- なんにもやってないです。
- SOUQ
- そうなんですか! かなりアーティスティックですけど、このようなバッグをつくろうと思ったのはどういうきっかけで?
- 佐藤
- カバンをつくろうと思ったとき、素材は帆布がいいなと思ったんですけど、考えたら柄ものって売ってないんですよね。色ものはたくさんあるんですけど。だから単純に、柄を描いた帆布のカバンが欲しいなと思って。

- SOUQ
- 確かに帆布のバッグって、生成りのものとかカラフルなものはありますけど、柄ものってあまりないかもしれないですね。
- 佐藤
- ストライプとかはたまにありますけど、ほとんどない。
- SOUQ
- そういう意味では、「こういう帆布カバンが欲しかった」という人は多いんじゃないですか?
- 佐藤
- 面白がってはくれますね。「見たことない」とか。帆布に直接描いてるというと、さらに驚いてくれます。
ペンキで生地に直接ペイント
- SOUQ
- プリントじゃなく、直接描いてるんですね。塗る染料は何を使ってらっしゃるんですか?
- 佐藤
- ペンキです。
- SOUQ
- そうなんですね!

- 佐藤
- アウトドア用というか、石に塗ったり木に塗ったりするやつです。水性なので色を混ぜることで色をつくれるんです。水に濡れても乾くと色が落ちないので、雨に降られても、洗ってもだいじょうぶです。
- SOUQ
- 濡れてもだいじょうぶなのはいいですね。
- 佐藤
- 自分の好きな色で描くことができるので、そういう意味では気が楽で、自分に合ってるんだと思います。
- SOUQ
- ペインティングは、カバンをつくる工程のどの段階でどうやって描かれるのでしょうか?
- 佐藤
- つくりかたによってそれぞれ違っていて、たとえば縫製する前に塗ってしまうと、あとで持ち手とかポケットを付けると縫い目が表に出くるんですね。
- SOUQ
- 縫った糸とかが目立ってしまう。
- 佐藤
- 縫い目を出したくないときには、ポケットを付けてから塗るとか。だから最初に描いたり途中で描いたりするものもあれば、最後の段階でペイントするものもあります。

- SOUQ
- なるほど。ストライプ柄とかはまるでデジタルでつくったように、きれいに描かれているのですが、きっちり測って下書きとかをされてるんですか?
- 佐藤
- いやもう目分量でやってます(笑)。
- SOUQ
- ほんとですか!すごくきっちりしてるように見えるんですが。
- 佐藤
- よく見ると幅の長さが違ってたり、はみ出たり(笑)。でも、私がやるんだからその方がいいかな。ムラもなくきっちりしすぎたら、人の手でやる必要もないかなと思っていて。
「この家に合う感じの柄を」
- SOUQ
- そうですよね。「okapi」さんは、これまで柄の変遷などはあったりしたのですか?
- 佐藤
- えー最初はなんだっけ? なんかこういうのをやりたいなあというのを、とりあえず描いてみて。つくったはいいけどボツになったのもいっぱいあります。

- SOUQ
- それはどういう理由でお蔵入りになったんでしょうね。
- 佐藤
- できが良くないとか(笑)。やってみたけど好きじゃないなとか。新しいデザインをどんどんつくっている人もいるじゃないですか。私はそういうのでもなく、たとえば自分が描きたくて描くのもあるし、お客さんから「こんなのが欲しい」と言われて、どうしようかなと考えてできたものもあるし。
- SOUQ
- お客さんからのリクエストにはどういうものがあったんですか?
- 佐藤
- ご自身もつくることが好きで、床にタイルを貼ったり壁を塗ったり、お家を自分でリノベーションする方がいたんですね。そこに私のバッグをカゴみたいな感じで置きたかったらしく、「この家に合う感じで柄を考えて」ってリクエストされましたね。
- SOUQ
- それは面白い。
- 佐藤
- そういう発想って自分では絶対出てこないじゃないですか。人から何かを与えられてつくるというのは結構楽しいですよ。

- SOUQ
- その家に合うものをつくりたいというモチベーションも湧いてくるでしょうしね。
- 佐藤
- そういう意味で、受注生産も時々してます。このデザインで別の色をつくってくださいとか、もうちょっと大きく、長くしてくれとか。たまに柄発注みたいなものもあります。
- SOUQ
- バッグの素材はこの先も帆布でやっていこうと思っていますか?
- 佐藤
- うーん、なんか面白い生地があって描けるなら、他のものでも全然いいなと思うんですけど、帆布ってキャンパス地っていうぐらい絵を描くにも適しているので、一番好きでやりやすい。他の生地でやるとなると、たぶん描けなかったりすると思うんです。一度麻に描いてみたけど、ペンキがポロポロ落ちちゃって、私のやり方には合わなかったですね。
取材・文/蔵均 写真/岡本佳樹
世にあまり出ていない柄ものの帆布バッグをつくる佐藤さん。次回第2回は、佐藤さんがカバン作家としてデビューするまでについて聞いていきます。