okapi(オカピ)第2回 ブランド名はラジオから

帆布にペイントするユニークなバッグで人気の「okapi」。作家の佐藤文さんへのインタビュー第2回は、どうやってカバン作家デビューをしたのか? そのプロローグを聞いていきます。
- SOUQ
- カバン作家として活動する前は、何をされていたのですか?
- 佐藤
- 元々は設計事務所に勤めていて、そこを辞めてgrafで働いていました。
- SOUQ
- 「うめだスーク」のデザインもしてくれているクリエイティブユニットですね。そこではどういう仕事をされていたんですか?
- 佐藤
- ショールームで普通に接客もするし、買い付けに行ったり、作家さんの展覧会もやったり。3年ちょっとぐらい働いて10年前に辞めました
- SOUQ
- grafを辞めてからすぐバッグをつくり始めるようになったんですか?
- 佐藤
- いえ、販売しようとして制作はしていなくて、「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」の広報とか事務局をやりながら、合間に頼まれたら制作するという感じでした。広報の仕事でずっと食べていけるわけじゃないなというのは思ってたんで。どうしようかなって考えてましたね。

- SOUQ
- 六甲山で毎年開催されているアートフェスですね。
- 佐藤
- でもgrafで勤めているときよりは時間ができたんで、とりあえず好きなことをやろう思って。バッグだけでなくて、いろいろつくったりしてました。
- SOUQ
- バッグ以外にどういうものをつくってたんですか?
- 佐藤
- 特にこれというのはないんですけど、たとえばgrafで働いてたときも、織物とか陶芸を体験しに出かけたり、ちょこちょこやってて。つくるのが好きというのは自分でわかってたから、人にも喜ばれるし、自分でも面白いと思って続けられそうだし、生きていくための糧になるのがものづくりなのかなと思って、ちょっとずつやり始めたんです。

- SOUQ
- そこからマルシェなどに出店し始めるようになるんでしょうか?
- 佐藤
- はい。小さくてもいいから、まずはそういうところに出てみないとと思って。とりあえずマーケットにいろいろ出し始めて、どういうものをつくったらいいかを考え始めることになります。いろいろやってたら、grafがやっている「FANTASTIC MARKET」からも声がかかって、そのうち「うちの店で扱わせてほしい」とか、「ポップアップショップをしてほしい」とかという話が来始めて。最近でしたら阪急百貨店さんからも声をかけていただきました。
英字の小文字表記のシリーズ名
- SOUQ
- 今回の「LIFE IS A JOURNY!」での個展は、どういう経緯で実現したんですか?
- 佐藤
- 最初は奥様のまりさんが、この白地にブルーグレーのグラデーションが入ったバッグを使ってくださってて、「これを店に並べたい」ということを言ってくださって、個展へとつながりました。

- SOUQ
- このラインの色が絶妙ですね。
- 佐藤
- このシリーズは「migiwa」と名前をつけています。
- SOUQ
- 「migiwa」? どういう意味なんでしょう?
- 佐藤
- 水の流れの際のイメージです。作品のシリーズ名は、英字の小文字で表記しています。
- SOUQ
- なるほど、イメージにぴったりですね。他には名前がついているシリーズはあるのですか?
- 佐藤
- この青と黒のシリーズは、「dodome」です。

- SOUQ
- 「dodome」? それは、もしかしてドドメ色からのネーミング?
- 佐藤
- はい。本当は、宇宙とか惑星っぽいイメージで描いたんですけど、できたときに仲のいい友達に「これどう?」って見せたら、ひとこと「ドドメ色やな」って言われたんです(笑)。
- SOUQ
- バッサリ(笑)
- 佐藤
- 最初は「えーっ」って思ったんですよ。ドドメ色ってわりとネガティブな言葉にとらえられるじゃないですか?
- SOUQ
- そうですね。
- 佐藤
- ただ、意味とか考えなかったら響きはいいかもと思って、英字の小文字にしたんですよ。
- SOUQ
- そこからシリーズ名は、英字の小文字にしたんですね。他に名前がついてるシリーズはありますか?
- 佐藤
- 黄色とグレーの柄が入ったのが「giraffe」ですね。キリン、好きなんですよ。

キリンの祖先のオカピ
- SOUQ
- そういえば、オカピもキリンの仲間でしたっけ?
- 佐藤
- キリン科ですね。オカピはキリンの原種、祖先なんですよ。
- SOUQ
- へえ、そうなんですね。ブランド名にされたのは、キリンが好きだったからですか?
- 佐藤
- いえ、なんとなくラジオを聴いていたときに、放送でオカピという動物の説明をしてて、「へー、変な名前の動物がいるな」と思って。気になったら検索して調べる人も多いと思うんですが、めんどくさがりやなんで調べもせず、その名前だけが記憶に残っていたんですね。
- SOUQ
- 音として印象に残っていた。

- 佐藤
- そのあとブランド名をつけるとなって、忘れられない響きがいいなと思って考えているときに、「オカピだ!」て閃いて。特に調べもせずに命名しました。そのあとに調べたら、柄がきれいな動物だし、キリンの祖先ということもわかって、「giraffe」シリーズもすでにつくってたんで、これはちょうどいいなと。
- SOUQ
- なにかしらに導かれたのかもしれませんね。ブランド「okapi」がスタートしたのはいつぐらいですか?
- 佐藤
- ブランド名をつけるとか、事業をやり始めるときって、みなさん「今日からやるぞ!」って感じになると思うのですが、ダラダラ始まって、名前もとりあえずつけなあかんなって感じで。たぶん2012年か13年だと思うんですけど、よくわかんないんですよ(笑)。
取材・文/蔵均 写真/岡本佳樹
ラジオ番組を聴いていて閃いたブランド名「okapi」。次回第3回は、ひとつ一つ手づくりされるバッグは、どのような環境でつくられているのかを聞いていきます。