PANAMA(パナマ)前編 化学反応と熱意によって 生まれた新しい〝重なり〟 | SOUQ ZINE スークジン

PANAMA(パナマ)前編 化学反応と熱意によって 生まれた新しい〝重なり〟

PANAMA(パナマ)前編 化学反応と熱意によって 生まれた新しい〝重なり〟
ものづくりの現場を紹介する「ファクトリーファイル」。今回は、クールなグラフィックとメッシュ素材が特徴的なバッグやポーチを展開するブランド「PANAMA」にフォーカスを当てます。2組のクリエイターと印刷会社の熱意によって育まれたこのプロダクトの誕生物語を前・後編でたっぷりお届けします。

夏が訪れると、風に揺れるようなワンピースをさらりと一枚身に纏いたくなるみたいに、バッグなどの小物も軽やかなものを持ちたくなります。今回、フォーカスを当てるブランド「PANAMA(パナマ)」はそんな気分にぴったり。メッシュ素材にクールなグラフィックが施されたトートバッグやポーチは、オシャレなだけでなく、物理的にも驚くほど軽くて、尚且つ丈夫。使い勝手も抜群なのです。

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そんな「PANAMA」のアイテムが作られている場所を訪ねてみると、そこは渋谷と原宿のちょうど間に位置するビルの中。ファッション関係の会社かと思いきや、意外にも「光伸プランニング」という印刷会社です。フロアにおじゃますると、壁際には巨大なプリンターがいくつも並び、そのどれもがフル稼働。その一番奥にある機械で「PANAMA」は作られていると言います。

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案内してくれたのは、光伸プランニングで「PANAMA」をはじめ、さまざまなオリジナルグッズの開発や営業に携わる稲川由華さん。

panamaPANAMA企画営業担当 稲川 由華さん

「PANAMAは、このUVインクジェットプリンターという機械を使ってグラフィックを刷っています。このメッシュ生地は、メッシュターポリンという素材で、普段なら屋外広告や建築現場で工事中の建物を覆うために使うものなんです。今刷っているのも、PANAMA用の素材ですよ」

スタッフの方が、手際よくプリンターにメッシュターポリンをセッティングし、プリンターの画面ですばやくセッティングすると、印刷カートリッジが右へ左へと静かに動き、アイテムの大きさによっていくつか面つけされたグラフィックが刷られていきます。片面が印刷されるのにかかる時間は、わずか3分程度。もう片面にも異なるグラフィックを印刷して、あっという間に主な素材は完成します。

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2組のクリエイターによる化学反応

サインディスプレイや屋外広告、ショップやイベントで使用する什器、催事用のステージなど、大判プリントにまつわることを行ってきた光伸プランニングにとって、この素材はプリントによく扱う素材のひとつ。でもなぜ、このような素材でアイテムを作ろうとしたのでしょうか。そのはじまりは、2011年のこと。稲川さんはこう話します。

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「PANAMAは、弊社が立ち上げた『MONOPURI(モノプリ)』というプロジェクトで生まれたんです。これは、UVインクジェットプリンターの可能性を広げようと、さまざまなクリエイターの方にご協力をいただきながら、いろいろなモノにプリントしてアイテムを開発していた実験的なプロジェクトでした。UVインクは、素材もありとあらゆるものに刷れますし、凹凸があるもの羽根や貝殻、コンクリートや石などインクを乗せることができるので、いろいろなユニークなグッズを作って販売していたんです」

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「MONOPURI」のおもしろさは、2組のクリエイターで一緒にひとつのものをつくるところにもあります。1組で完結しないからこそ、化学反応が起こり、新しいものが生まれる。それもまた実験的です。その組み合わせは、プロジェクト側で選ぶので、クリエイター本人たちは初対面であることがほとんど。「PANAMA」を生み出した、デザイナー兼コラージュ作家の大野彩芽さんと、クリエイティブユニットMUTEイトウケンジさん・ウミノタカヒロさんも、このプロジェクトで初めてタッグを組みました。複数のデザイナーが一緒にひとつのものづくりを行うことは、比較的珍しいこと。その役割分担などはどうしていたのでしょう。MUTEのウミノさんは、こう話します。

panamaPANAMAプロダクトデザイン 担当 MUTEウミノ タカヒロさん

「大野さんがコラージュアーティストでもあると知って、彼女のコラージュが引き立つようなものを作ろう、というのは最初にありました。最初の段位では、まだターポリンに刷ることもバッグにすることもきまっていなかったので、素材探しからスタートしたという感じでしたね。役割としては、大野さんがグラフィックを担当して、僕たち二人がどんなものを作るかというプロダクトの提案をしていった感じ。でも、最終的には同じデザインデータを大野さんと共有して一緒に仕上げていったところもあります。そういうやり方でものづくりをすることは、他の仕事ではほとんどないので、めちゃめちゃ楽しかったですよ!」

〝重なる〟を最大限に生かせるものを

何を作るのかを決めずに、大野さんが手がけるコラージュありきでひとつのものづくりが走り出しました。しかし、最終的に何を作るのかは決まっていないものの、最初の段階からあるテーマが浮かび上がっていたと言います。

それは、【透けて、重なる】。

panamaPANAMAグラフィックデザイン担当 大野 彩芽さん

紙を切って配置するコラージュ。その重なりのおもしろさを立体的に表現できないだろうか。光伸プランニングのメンバーも含めたプロジェクトメンバーは、そんなこと考えながら、透明のアクリル素材やガラスなど、透けるさまざまな素材に試し刷りをしていきました。

その中で、ウミノさんがたまたま持っていたメッシュターポリンに試し刷りしたことが「PANAMA」誕生に大きく歩を進めることになりました。このときのことを、大野さんはこう語ります。

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「ウミノさんが持ってきたメッシュターポリンは、すでに広告印刷が施されているものだったのですが、あえて元にある絵柄を生かして、自分が作ったグラフィックを重ねるようにプリントしてもらったんです。そうしたら、かっこいいじゃん! てなって。それで、試しに裏面にも違う柄を刷ってもらったら、偶然、表面から裏面の柄が透けて見えることを発見することができたんです」 メッシュという素材の特性によって、グラフィックの絵柄がまさに【透けて、重なる】を体現してくれた瞬間でした。

panamaPANAMA初期制作 担当 飯塚 達成さん

当時、このプロジェクトの制作を担当していた光伸プランニングの飯塚達成さんは、この時のアイデアの広がり方をこう振り返ります。 「2枚のメッシュ素材を重ねる時に、その間に空間を作ってあげると中に光が入ってよく透けて見えることがわかって。それで、バッグやポーチなどの袋物にするというアイデアに発展していったんです。メッシュの穴の大きさによっても透け感が変わるので、いろいろな種類のターポリン素材で試してみて、ベストな素材や心地よく透ける色を探っていきました」 こうして、メッシュターポリンの表裏にプリントを施して、バッグやポーチにするという「PANAMA」の原型ができあがりました。

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そして、そこから具体的な〝モノ〟に落とし込む作業になるわけですが、その時、MUTEのお二人には大切にしたかったひとつの想いがあったとウミノさんは言います。 「僕たちは、ここで作っているプロダクトを尖ったものにしたくない、と思っていました。尖っているものにしちゃうと、尖った人にしか届かない。デザインが好きな人だけが使うようなものではなくて、雑貨が並ぶようなお店で気軽に買えるような、誰でも使いやすい一般的なプロダクトにしたかったんです。あとは、自分たちが使いたいと思うものがいいよねっていう話は、メンバーの中でもよく出ていたワード。だから、形はごくごくシンプルなものに仕上げたかったんです。僕も、今は買い出し用のバッグとして愛用しているんですけど、雑に扱えるところがいいんですよ。シンプルだし強度もあるから使い勝手が良くて、大根とか入れてます(笑)モノとしての使いやすさっていうのは、かなり考えましたね」

取材・文/内海織加 写真/東泰秀

バッグやポーチなどのアイテムからではなく、【透けて、重なる】というディテールからスタートしているというところが、このプロダクトのユニークなところです。次回後編では、グラフィックづくりへのこだわりについてお話をうかがいます。

Creator/Brand

PANAMA(パナマ)

プリントバッグ

PANAMA(パナマ)

屋外広告にて用いる軽くて丈夫なメッシュターポリンという素材を使用し、商品開発をしています。
シンプルな作りの素材を用いているので、とても軽やかな雰囲気あるバッグやポーチを制作。

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