PANAMA(パナマ)後編  偶然性と緻密さの絶妙なバランスの上に成り立つ | SOUQ ZINE スークジン

PANAMA(パナマ)後編  偶然性と緻密さの絶妙なバランスの上に成り立つ

PANAMA(パナマ)後編  偶然性と緻密さの絶妙なバランスの上に成り立つ
ものづくりの現場を紹介する「ファクトリーファイル」。今回は、屋外広告用のメッシュターポリンをベース素材に、クールなグラフィックが施されたユニークなバッグやポーチを展開するブランド「PANAMA」にフォーカスを当てます。後編では、グラフィックへのこだわりとこれからの展望について、お話をうかがいました。

メッシュターポリンをベースにバッグやポーチをつくることが決まると、コラージュ作家兼デザイナーの大野彩芽さんは、本格的に新たなグラフィックを作りはじめました。グラフィックに落とし込む以前の柄として作っていたのは、なんと約300種類以上。それを元に100型近くのグラフィック案を作ったと言います。

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「この案件に限ったことではないのですが、柄を作るときはデジタルだけで完結させないようにしています。花の図版を切ったものを配置して鳥の形を作ったり、細かく切った紙を配置して水玉模様のようにしたり。だから、作業場が紙の欠片だらけになっちゃうんですけど(笑)そうやって、手作業で切り貼りものをスキャンして、それを素材にグラフィックに仕上げていくんです。 最初にメッシュターポリンに試し刷りをした時に広告の上に刷ったこともそうですけど、偶然性によって生まれるものっていいなと思っていて。だから、グラフィックを作るときは、そういう意図しないところで生まれるもの大事にしたいと思っています」 ちなみに、試し刷りした時にすでにプリントされているところに重ねたことで生まれた偶然のデザインは、実際のプロダクトの柄にそのまま使われています。その遊び心も、また彼ららしいのです。

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絵柄の重なり方は緻密に決める

「大野さんはグラフィックを作ると、表裏の組み合わせなどは考えずにいち早く僕たちに展開してくれました。だから、そこから表裏で重なった時に相性のいいものを一緒に考えて、アイテムごとの組み合わせや絵柄の出る位置を決めていったんです」 と、MUTEのウミノさん。時に、偶然性も楽しむ彼らでも、絵柄の重なりや収まり方は決してランダムにはせず、きっちりと決めているのは、また興味深いところです。

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通常、片面にしか刷らない大判プリンターでの印刷に置いて、緻密に考えられた表地と見せる裏地の重なりを実現するのは簡単なことではありません。そこには、印刷する技術者の経験と努力、そして工夫が必要でした。プロジェクトの立ち上がりから技術の面で制作を支えてきた光伸プランニングの永尾正章さんも、「PANAMA」の素材を刷る時にはとても神経を使うと話します。

panamaPANAMA初期制作担当 永尾 正章さん

「メッシュターポリン自体は仕事上、珍しい素材ではないのですが、プリントをするにしても片面であることが通常。両面に刷ったことはなかったので、それが新鮮でしたね。でも、これがとても難しくて(笑)片面ずつ印刷するので、表裏で絵柄がぴったり合うように印刷がはじまったポイントで独自の印をつけるようにしたり、最初の頃は人知れずデータを作り直したりしていたんです。まぁ、大変だから燃えるみたいなところはありましたけどね(笑)」

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今は、スタッフもプリントに慣れてきてスムーズに進められているものの、実はとても手間がかかっているのだと稲川さんも話します。「メッシュターポリンにプリントというだけなら、他の印刷会社でもできることだと思うのですが、これだけ重なりにもこだわっていたり、調整に手間をかけたりしていますから、そういうことはどこの印刷会社でもできることではないのかもしれません。弊社だから実現できたんじゃないかと思いますね」

楽しさや感動をプロダクトに乗せて

「PANAMAが完成した時に、世の中で見たことがないものができたって思ったんです」大野さんは、完成した時のよろこびをこんな言葉から語りはじめました。

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「そういうものが作られていくところに立ち会えるっていうのは、幸せだなって思いましたね。きっと、デザイナーも制作の方たちも同じ熱量で取り組めたから出来上がったんだと思っています。グラフィックやエディトリアルのデザインでは、こんなに時間をかけて作り上げるということがなかなかできないので、こうして時間をかけて、いろいろな方と一緒にひとつのプロダクトを制作できたことは、個人的にも大きな出来事でしたし、新たなきっかけになりました」

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作り手のアタマの中にあるものを形にしていくのではなく、作り手もプロセスのひとつ一つに驚き、よろこび、感動しながら進めていくのが「PANAMA」 のものづくりだったのでしょう。その全ての過程を見守ってきた飯塚さんは、このブランドの良さをあらためてこう話します。 「PANAMAは、ファッションアイテムというより、デザインプロダクトであるところが潔くていいなと思いましたね。ファッションの視点で考えたら出来ないようなおもしろいものが生まれた気がします。最近では、街を歩いていても持ってくださっている方をたまに見かけることがあって、それはとても嬉しいですね。うちの会社を知らなくてもPANAMAは知ってる、っていう方も増えてきましたしね」

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もともと「PANAMA」を誕生させた実験的プロジェクト「MONOPURI」は、立ち上げから約8年で「UVインクジェットプリンターの可能性を広げる」という目標を達成したことを理由に、昨年で一旦終了しました。しかし、「PANAMA」は反響も大きいブランドだったため、ひとつのブランドとして独立して、新たな一歩を踏み出したところです。今後の「PANAMA」の取り組みと展望を、稲川さんはこう語ります。

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「私個人としても、PANAMAが一途に好きで、それを広めていきたいっていう気持ちでここまでやってきましたし、これからもそういう気持ちで続けていくのだと思います。今は、バッグとポーチが主体ですが、このブランドのテーマが【透けて、重なる】であることは今でも変わりません。ですから、今後、バッグではないアイテムに展開されることもあるかもしれません。PANAMAが独立したことで、より独自の世界観を広げていけたらいいなと思っていますし、より愛されるブランドに成長できたらと思っています」

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決して奇を衒うのではなく、純粋な楽しさを使いやすいプロダクトに落とし込んでいく。「PANAMA」のベースにあるのは、そんな純粋な想いのような気がします。このブランドのアイテムを持っていてちょっと気分が上がるのは、そのクールなグラフィックに、メッシュという素材に、そしてグラフィックの不思議な重なりに作り手たちが感じたワクワクが伝わってくるからかもしれません。「PANAMA」は、なんでもない日常に新鮮さと楽しさを気づかせてくれるブランド。この夏、軽やかに「PANAMA」を持てば、いつもの景色がちょっとだけ鮮やかに見えてくるかもしれません。

取材・文/内海織加 写真/東泰秀

Creator/Brand

PANAMA(パナマ)

プリントバッグ

PANAMA(パナマ)

屋外広告にて用いる軽くて丈夫なメッシュターポリンという素材を使用し、商品開発をしています。
シンプルな作りの素材を用いているので、とても軽やかな雰囲気あるバッグやポーチを制作。

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