+R(プラスアール) 第3回 マスコットはMr.Rくん

ブランド立ち上げ黎明期には、ユニークなテーマでラインを展開していた「+R」。ファンも定着し、ブランドの個性も見えてきたいま、デザイナーのNAMIさんは、「+R」の現在についてどう思うのでしょうか? 話を聞いてみました。
- SOUQ
- ブランド初期は、「宇宙」や「eateRy」などのテーマで展開していた「+R」ですが、最近はテーマ性をもたせていないですよね。はっきりしたテーマがあると、デザインしやすい気もするのですが、そんなことはないですか?
- NAMI
- テーマがないときのほうが柔軟につくれますね。自分が欲しいかなと思ったアイテムをデザインできる。次のイベントが決まったから、それに向けてなにか新作を並べようとか。その売場に合わせて、こういうのがいいかなとつくる感じですね。
- SOUQ
- 目標があれば、モチベーションが上がりますからね。
- NAMI
- 漠然とつくっているより、イベントがあるほうが「つくらないと」と思うので、新作が多めに出ます。

- SOUQ
- 1着1着手づくりされているわけですから、大量生産というわけにはいきませんよね。
- NAMI
- そうですね。でも去年の新作で、スカートとパンツが半々になっている「スカートパンツ」というのを出したんですね。
- SOUQ
- スカートパンツってユニークです。
- NAMI
- そのとき、ふと思ったんですよ。かわいいスパッツってないよなあって。生足イヤな人はかわいいの履きたいだろうなあと思った。それで、スパッツをつくりたいと思ったんですよ。
- SOUQ
- 「+R」ならではのスパッツですね。
- NAMI
- はい。で、スパッツって私のミシンでも、縫えないことはないのですが、伸縮性のある生地なので、やはりそういうのに慣れた工場に頼んだほうがいいと思ったんですね。それでいろいろ探したんですけど、もう値段が合わなくて。20枚ぐらいの発注だと、どこにも相手にされないんですよね。「20枚ですか。じゃあ倍の値段です」みたいな感じ(笑)。

- SOUQ
- まあ、ロットの問題はありますよね。
- NAMI
- で、小ロットでも縫ってくれる良い工場さんが見つかって、もしかしたら縫ってくれるかなと思ってお願いしたら、「20枚でもいいよ」と言ってくれて。
- SOUQ
- へえ。やってもらえるもんなんですね。
- NAMI
- たぶんイヤやと思いますけど(笑)。それで、大量生産とまではいかないですけど、それなりの数の商品を手に取ってもらえるようになりました。
- SOUQ
- 「+R」的には大量生産したスパッツの評判はどうですか?
- NAMI
- おかげさまで結構人気で、今年も新しいデザインを起こして頼んでいます。

- SOUQ
- どんなデザインなんですか?
- NAMI
- 「+R」って、基本アシンメトリーなデザインが多いんですけど、だからといって、わちゃわちゃしてたらいいというわけではない。
- SOUQ
- 奇抜だったらいいわけではない?
- NAMI
- 長いスカートを履いたら、だいたい裾から足首までの間でスパッツが見える。そこで存在感が出るような…こんな感じです(とサンプルを見せてくれるNAMIさん)。

- SOUQ
- このぬいぐるみは?
- NAMI
- これは、マスコットがあったほうが売場がかわいくなるなあと思って、つくりはじめました。一応商品でつくってるんですが、結構高くて1万7000円しますから、別に売れへんでもいいかと思ってて。欲しい人が買ってくれたらいいし、商品写真撮るときともポイントになりますしね。
- SOUQ
- マスコットということは、名前もあるんですか?
- NAMI
- Mr.Rくんです。もし売れてきたら、相方をつくって、Miss.Rと名付けようようかと。クリスマスシーズンはサンタの帽子をかぶせたり。夢は広がってますよ。

- SOUQ
- Mr.Rくんのほかに、服以外のアイテムはあるのですか?
- NAMI
- ポーチとか。ほんとは食器とかやりたいんですけどね。でもそれに向けて積極的に取り組むとかはしてないですけど(笑)。
- SOUQ
- 「+R」が好きな人は、食器も絶対ほしいでしょうね。ブランドのファンってどういう方が多いですか?
- NAMI
- みんなといっしょというのがイヤな人が多いんじゃないかなあ。だから同じ服を20枚つくるというのはどうかなというのがあって。まあ20枚でも多くはないと思うんですけど。
- SOUQ
- 全然多くないですね。
- NAMI
- そうなんですけど。「+R」はほとんど大阪でしか売ってないんですけど、大阪だけで考えたら、同じ服を着ている人に会う可能性はあるかなと。

- SOUQ
- 目立つ服ですしね。すぐわかるかも。
- NAMI
- 同じ服を着た人とバッタリ鉢合わせするのってイヤじゃないですか?
- SOUQ
- そうですね。うれしい場合もありそうですけど。
- NAMI
- だからそんなにたくさん同じものはつくらないですね。
- SOUQ
- 年齢的には、どういう方が多いのですか?
- NAMI
- お客さんは30歳代から80歳代までいて。おばあちゃんとかは若いときはギャルソンとかを一通り着て、私の服もおもしろいと思って着てくれている。

- SOUQ
- それはうれしいですね。
- NAMI
- それから、いろんな体型の方がいるので、ウエストもゴム仕様にしたりして、わりと“しんどくない服”になっていますね。洗濯機でも洗える服で。クリーニングに出さなあかんとか、色が落ちるとかなると、2回目に着るのがたいへんじゃないですか? だからできるだけコットンを使うとか。帽子もマジックテープで小さくできるようにしてます。
- SOUQ
- 「+R」は帽子のインパクトが強いと思います。
- NAMI
- 私も頭が大きいので、入らなかったらイヤなんで。締め付けられるのもイヤですしね。だから帽子もピッタリよりちょっと大きいめにつくってますね。
取材・文/蔵均 写真/桑島薫
個性的な「+R」のアイテムの魅力を話してくれたNAMIさん。次回最終回は、制作の現場に密着。オフスタイルにも少し迫ります。