POTTENBURN TOHKII(ポッテンバーントーキー)第2回 言葉を遊ぶ大切さ

インタビュー中に風呂敷に包まれて自転車で届けられた新作アイテム。今回は、「POTTENBURN TOHKII」のシーズンテーマについて、デザイナーの中島トキコさんに話をうかがいます。
- SOUQ
- 2019年春夏の新作のシーズンテーマは「いとをくむ」。これは「糸を組む」ということですかね?
- 中島
- その意味もあるのですが、「意図を汲む」という意味もあります。
- SOUQ
- ダブルミーニングなんですね。
- 中島
- そうなんです。たとえばこのパンツを着た人は、左足から最初の一歩を踏み出してほしくて、左足のほうが一歩分前に倍ほど生地が付いてます。

- SOUQ
- なぜ左から一歩踏み出してほしいんだろう…。
- 中島
- この理由のために左にしたわけではないですが、一説には神社の鳥居をくぐるのは左足かららしいです。だからこれを履いてたら、そのことを忘れない(笑)。
- SOUQ
- なるほど! そういう意図を汲まなければいけないわけですね。これはなかなか分かりにくいかも(笑)。しかし、どこからそういう発想が生まれたんですか?
- 中島
- 私、いまコンテンポラリーダンスを習いに行ってるんですが、ペアで踊っているとき、先生が「いとをくんで、もっといとをくんで」でって言うんですけど、私絶対赤い糸とか、つながってる糸のことだと思って。

- SOUQ
- 普通はそう思わないですよね(笑)
- 中島
- ふだん糸ばっかり見てるからかもしれませんが(笑)。終わったあとに、先生が「相手の意図をもっと汲んだ感じに」と話されて、あっ、そっちの“いと”か!ってやっと気づいて(笑)。
- SOUQ
- それが新作のテーマになったんですね。
- 中島
- はい。コンテンポラリーダンスも仕事に活かせましたね。だからコレクションのイメージビジュアルも、ダンサーさん3人に踊ってもらいながら撮ってます。
小説から磁石へ
- SOUQ
- 楽しいですね。いまは2019年秋冬のテーマを考え中ですか?
- 中島
- はい。次のテーマは「両極端」にしようと思っています。
- SOUQ
- これはまた難しい。このテーマはどうやって発想されたのですか?
- 中島
- 最初は磁石っておもしろいなって思ったところから始まっていて。じゃあ磁石を服にするにはどうする? ってなって、近くの子ども図書室で科学の本を調べるんですけど、磁石遊びですごく素材に転用できるものがあるんですね。
- SOUQ
- 磁石遊びで?
- 中島
- たとえば蹉跌とか。


- SOUQ
- 懐かしいですね。磁石がおもしろいって思ったのはどうして?
- 中島
- うーん、どこからだったんだろう?…磁石を調べ出したのは、なんでだったんだろう?…。あっ思い出した! 『両方になる』という本を読んだんです。なんか、二人の人間がいて交差するみたいな小説を読んで。それを活かせないかなと思って。両方になる……両極端……磁石! みたいになって。哲学的な本を読むのが好きなんですけど、響きがおもしろかったりする言葉とかからアイデアが浮かんだり。
- SOUQ
- これまでのテーマも「カミナルカミナリ」とか、「トケルトケナイ」とか、言葉遊びがおもしろいですよね。

- 中島
- ものにするまでが苦戦していますけど。この素材をどうおもしろく見せられるかなあとか、どうやったらウワァ!と驚いてもらえるかなとか、ずっと考えてます。
縞々の島に暮らす姉妹
- SOUQ
- 直近の2018年秋冬のテーマが「縞島(しましま)」でしたよね?
- 中島
- いかに縞々をおもしろく伝えられるかということを考えたときに、シマ=小さな島だなって思ったんですね。「縞々の島には姉妹が住んでて、お姉ちゃんは島を出たいから無地ばっかりきているけど、妹は島にいたいから縞模様ばかり集めてる」とか、ストーリーを膨らませていきます。
- SOUQ
- なるほど。「縞島」というテーマなので、ストライプの服ばかりなのかと思いきや、結構無地もありましたもんね。
- 中島
- そうなんです。姉は島(縞)から出たいので、でもそんな姉も島の心は忘れてなくて、ベルトの裏側とか襟の裏側には縞が入ってるんです。
- SOUQ
- そのへんは、こうやってお話を聞かないと全然わからないですね(笑)。
- 中島
- 伝え方が難しいですね。
- SOUQ
- でもそれぐらいがいいような気がします。あからさまにわかりやすいメッセージよりも。
- 中島
- でも、インスタグラムで、いままでは私がほんの少しだけ言葉を載せていたのですが、前回、いまみたいに私がざくっとしゃべったことを文章のプロにまとめてもらってアップしたところ、すごく反応があって(笑)。
- SOUQ
- やはりプロは違うと。
- 中島
- 言葉で伝えるって大事だなと思って。お客さんもいままでは「あのピンクの服が見たくて」だったのが、「『縞島』のお姉ちゃんのほうの服を見たい」ってなったりとか。実際いままで私とかスタッフに直接会わないと伝わらなかったことが、ワンクッション先にSNSで伝えられるなと実感しました。
- SOUQ
- 「縞島」の前のテーマはなんでしたっけ?
- 中島
- ……なんだったっけ……。
- SOUQ
- 結構忘れるもんなんですね。
- 中島
- 忘れます。
- SOUQ
- でも過去は忘れていかないと、新しいものを生み出せないですよね?
- 中島
- そういうことにしときます(笑)。
写真/東泰秀
ユニークなシーズンテーマが印象的な「POTTENBURN TOHKII」。次回第3回は、これまたユニークな素材についての話を聞いていきます。
Creator/Brand

ファッションブランド
POTTENBURN TOHKII(ポッテンバーントーキー)
洋服と雑貨のファッションブランド。メッシュ素材をはじめ、ラメや和紙などの素材が織り込まれた、遊び心あふれる糸や生地の立体感が特徴。