『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』前編 枠にはまらないモノづくり

既成概念にとらわれないモノづくりを目指して
『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』。何とも可愛らしい響き。でもあまり聞きなじみのない言葉。ブランド名の由来を聞いてみると、ARTという単語を4つ並べたつづりを入れ換えて作った造語だそう。アトリエで行う創作活動が既成概念にとらわれないモノづくりになることを願ってつけられたのだとか。
「ここで創作をしているクリエイターたちはさまざまな障がいを持った方々です。彼ら、彼女たちの自由な発想をアトリエリスタと呼ばれる支援者が引き出しながら、一緒に混ざり合っていろんなものを作っていく。それがRATTA RATTARRの制作スタイルです」

“人の役に立つデザイン”を活動として目の見えるものに
「チャレンジドジャパン」という障がい者の就労支援を行う会社の1つのプロジェクトとして始まった『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』。障がいを持った方たちの生きがいや生きる力を就労支援のための職業訓練以外の方法で引き出すことができないかと模索している中で生まれました。
「デザインの使命は問題解決だと考えています。そして、人の役に立てば立つほどいいデザインというスタンスで活動をしてきましたので、RATTA RATTARRのプロジェクトに参加することには何の違和感もありませんでした」
そう話すのは、クリエイティブディレクターを務める須長さん。もともと家具やインテリアのデザイナーで、現在もインテリアショップのオーナーを務めながら、『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』のプロジェクトをリードされています。活動に参加しようと思ったきっかけについて、「障がい者の方が描いた絵に感動したことが大きかった」と話す須長さん。福祉国家であるスウェーデンでデザインを学んでいた経験もあり、デザインとクラフトを組み合わせて何かできないかと相談を受けたことを機に、障がい者アートについて学びながら『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』プロジェクトについて構想していったそう。アトリエの場所を軽井沢にしたのは、自然が豊かでクリエイティビティーが刺激されるところだったから。自然に囲まれた静かな環境の中で日々素敵な作品が生み出されています。

クリエイターとアトリエリスタの共同作業で紡がれる作品たち
現在アトリエには、28人のクリエイターと5人のスタッフが在籍しています。制作をリードするアトリエリスタには、今回お話を伺った塚元さんを中心にアパレル業界で働いていた人や、幼児芸術教育を学んでいた人、さまざまな経歴の方がいらっしゃるそう。塚元さんはそんなアトリエリスタの中でデザインの分野を、もう一人のアトリエリスタ水澤さんがクラフトの分野でクリエイターと大きな方向性を決め、その後、アトリエリスタ全員でクリエイターの持ち味を引き出しながら、一つの作品を作り上げていきます。

実際一つの作品を作り上げる過程はクリエイターによって様々。企業の商品開発であれば、最初に売りたいアイテムを決め、それにどんな柄をのせていくか考えるのが一般的な流れですが、『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』では、クリエイターの絵がいつも中心。完成した絵を見てどういうアイテムにしたら輝くのかを考えます。
「そこが一般的な商品開発とは違って面白いところです。とにかく絵がすごくいいので、それが一番生きるのはどのアイテムなのかはめ込んでいく作業は本当に楽しいです」と須長さん。
その際のクリエイターたちへの依頼の仕方も特徴的。 「クリエイターの中には、『こういう商品を作りましょう』と言葉で伝えても、それだけでは理解できない方もいます。そんなときはたとえば色や形に言い換えるなど、それぞれがイメージできるように伝える。その辺のさじ加減はアトリエリスタの腕の見せ所になってきます。作品をつくるというゴールはあるんですけど、そこに行き着くまでの道筋が人によって本当にいろんなパターンがあるんです」
クリエイターに「これを作って」と依頼するのではなく、自由な発想でデザインを考えてもらい、それぞれのデザインが最大限に生きるパッケージは何かをアトリエリスタたちが考える。それぞれの特性を生かした『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』ならではのモノづくりなのです。

「(クリエイターの)彼ら、彼女たちはいろんなイメージが頭の中にあるけれど、うまくアウトプットできないんです。こういう絵を描きたいけどどうしていいか分からない。それを、アウトプットするお手伝いをするのが私たちアトリエリスタの仕事なのかなと思っています。たとえば色をつける際にも『どういう色を使いたいか絵の具を出してきて』とまず絵の具を選んでもらって『この絵にはどうしてこの色がいいと思ったの?』『そのイメージだったらこの色とこの色がいいんじゃない?』みたいなやりとりをしていく。その中で、混沌としているものを整理する。『こうした方があなたのセンスに近いんじゃない?』とアドバイスするのが私たちの役目なのかなと」

クリエイターとアトリエリスタがブランド名のように自由に混ざり合い、出来上がる唯一無二の作品たち。 「クリエイターの発想にはいつまでたっても驚きと発見があります。クリエイターのやりたいと思うことを信じて、それらがよりよくなる方法を提案しながら、一生懸命創作に向かう姿を近くで見ることが今の生きがい」と塚元さん。ご自身も美大を卒業し、作家として活動していた経験があり、それらの経験がこのアトリエで一つに繋がったと感じていると、やりがいに満ちた笑顔で話してくれました。

後編では、アトリエでの制作の様子や、クリエイターの方のお話も交えながら、さらに詳しく『RATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)』に迫ります。
Story
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Creator/Brand

新しい美的価値観を生み出すアトリエ
RATTA RATTARR(ラッタラッタル)
ブランド名称のRATTA RATTARR(ラッタ ラッタル)とは ART ART ART ART の綴りを入れ換えた造語です。 既存の領域を飛び越えた既成概念にとらわれない新しい美的価値観を生み出すアトリエになることを願って名付けられました。