RBTXCO(アールビーティ) 第3回 アールビーティのつくりかた

ファッションブランド「RBTXCO」のヒガシテッペイさんへインタビューする「ピックアップクリエイター」。第3回は、作品がどのようにつくられていくかにスポットを当てました。
- SOUQ
- 「RBTXCO」をスタートした高校時代を終えると、服飾の専門学校に入られるんですよね?
- ヒガシ
- はい。そこで同じ服飾を目指す仲のいい友達がどんどんできるようになって、本格的にブランドを立ち上げようという話が出て。今もいっしょにやっているナヲコはそのときからの仲間です。
- SOUQ
- 長いおつきあいになるんですね。
- ヒガシ
- そう。でも卒業して4年間はいったん解散し、いろいろ視野を広げようとそれぞれ社会人生活を経験しました。
- SOUQ
- それは必要なことかもしれませんね。

- ヒガシ
- 僕はテキスタイルのデザインの会社に入り、パソコンを使って柄を描く仕事を4年間してました。同じ建物内にプリントする現場があったので、どういうふうに加工するのか、どう版を起こすのか、そういうことをいろいろ学びましたね。それで4年後に「みんな集合や!」と(笑)。
- SOUQ
- 満を辞して再会、再開ですね。そのときチームは何人で?
- ヒガシ
- もともと3人だったんですけど、そのうち一人が子どもができて、乳児を抱いてブランド立ち上げはさすがに無理ということで、結果集まったのはナヲコと僕。そこから二人で、最初はビジネスという感じで全然なく、服をつくりたいという想いだけで始めました。

- SOUQ
- それから、少しづつブランドが成長していったんですかね。
- ヒガシ
- ブランドを始めた当時は、仕事するにはショップに直接出向いて洋服を見てもらって、そこで店長とのやりとりがあって初めて関係が生まれるという時代。
- SOUQ
- 今ならSNSでやりとりできるかもしれないですけどね。
- ヒガシ
- そう。でも大阪や京都ならいいのですが、遠方だと足繁く通うのが難しくて、ある企画書をつくったんですよ。
ハンガーラックの買い取り
- SOUQ
- ある企画?
- ヒガシ
- はい。それがショップのハンガーラックを1本5,000円で買い取らせてくれという企画で。
- SOUQ
- ほう。間借りさせてもらうようななものですかね?
- ヒガシ
- そうです。仙台とか長崎とか遠方のショップに連絡をして、ハンガーラックを買い取らせてもらって。「そこは確実に洋服を埋めますから、売り上げの何%かをください」と。

- SOUQ
- それはなかなか斬新なアイデアでしたね。
- ヒガシ
- そういうことを続けているうちに、なんかおもろいやつが出てきたぞということで、関わってくれる人がちょこちょこ出てきたんですよ。
- SOUQ
- そこから注文が増えていくように?
- ヒガシ
- そうですね。でもまだ将来のことが見えてる状況では決してなく。つくるのは楽しい、生み出すのは楽しい。でも手づくりでやっていたので、反応があればあるほど睡眠などの時間が削られていって。僕もブランドを始める前には一人目の子どもがおったんで、もう少し利益というのを考え出さなあかんよねということになった。
- SOUQ
- 売れ出すとそういうジレンマはつきものですよね。
- ヒガシ
- それで工場を使って生産しようと。とはいえ、自分たちの手でユニークな洋服をつくりたい気持ちはずっとあったので、二つの折衷案を考えました。一つはこんな生地見たことないというオリジナルのファブリックをつくること。もう一つは、制作の6割ぐらいは工場でやってもらって、最後のややこしい部分は自分たちでやるという方法。この2つのやり方で他のブランドにはないオリジナルをつくっていったんです。
- SOUQ
- 大量生産の既製品ではなく、どこか手づくりの部分は残しながらですね。今このアトリエでも、みなさん忙しく手を動かしてらっしゃいますもんね。


- ヒガシ
- そうですね。毎シーズンサンプルはほぼここでつくっています。それを展示会にかけて、これでいくと決まったものを協力工場さんに量産してもらうサイクルでなんとかやってます。
道につながるものづくり
- SOUQ
- 「RBTXCO」ぐらいテーマがバラバラだと、作品のテイストもその都度変わってきそうですね。
- ヒガシ
- そうなんです。毎回できるだけいい意味で裏切りたいと思っていて。たとえば女性シンガーは、「彼からメールがまだ来ない」ということだけで1曲つくれるんですよね。少女漫画でも「クラスのあのイケメンと、親の再婚で同棲することになりました」という設定だけで、漫画30冊描けるじゃないですか。
- SOUQ
- それ、すごくわかります(笑)。

- ヒガシ
- でも少年漫画だと、「ある少年が仲間と出会いながら、こんな旅をしてこんな武器を手にいれて、あの場所を目指します」とかが多い。男性シンガーが歌う結婚ソングも、「おまえに会って、こんなこともあって、こんなことも思ったけど、いまはこうで、将来こうするぜ」みたいな歌じゃないですか。
- SOUQ
- たしかに(笑)。男子はなにか展開が必要なんですかね?
- ヒガシ
- やっぱり道なんですよね、考え方が。洋服でいうと、僕としてはいろんな要素、いろんな社会問題、いろんなテーマであっても、「RBTXCO」にインプットされたら、うちのユーザーが喜んで着てくれるものがアウトプットされるというのが理想的で、才能の出しどころと思っています。常にパンクでいきますとかアウトドアでいきますとか縛りたくない。

- SOUQ
- 道につながるものづくりか。
- ヒガシ
- たとえばいまのトレンドだからと、世の中の服がすべて赤になるのはおかしい。でも実際にトレンドってあって。そのトレンドの風景の中で、自分たちは何色を差したらおもしろいか、とにかくユニークなものをつくろうと。そうなると、やはり柄もんに行き着くんですよ(笑)。
- SOUQ
- もう柄だらけですもんね(笑)。いま「RBTXCO」の柄物の割合はどれぐらいですか?
- ヒガシ
- もう100%です(笑)。ちょっと前までは、そうでもなかったんですが、もう柄じゃない服をつくる恐怖たるや…。

- SOUQ
- でもいまの日本の服って、昔に比べてあまりにも柄物が少なくなってきているような気がするのですが…。
- ヒガシ
- そうなんですよ。ヒートテックのような機能を重視した生地がここ最近すごく出てるんですが、こういう生地って、すでに機能という付加価値がついているので柄はつかないんですよね。。
- SOUQ
- 機能があれば柄はいらないというわけか。
- ヒガシ
- たとえば服に水玉の柄がついてるとして、「水玉ついてるならやめる」という人と「水玉ついてるから買いたい」という人では、今はやはりやめる人の方が多いような気がするんですよ。

- SOUQ
- 水玉が嫌いだとそうなりますよね。
- ヒガシ
- でも僕の個人的な思いでいうと、水玉が好きという理由で買ってくれた服と、無地は嫌いじゃないし買おうという服があるとしますよね。
- SOUQ
- 思入れがあるかどうか。
- ヒガシ
- 娘を育てたとして、どっちに嫁いでいくほうが幸せかという発想でいくと、やっぱりこの子が好きやと言ってくれる人のほうへ嫁がせたい。消去法じゃなくて、圧倒的にこの子が好きという人に嫁いでいってもらうほうがいい。だから誰よりも好きになってもらえる服をつくっていきたいですね。
取材・文/蔵均 写真/香西ジュン
とてもチームワークのいい「RBTXCO」のみなさん。次回最終回は、ファッションブランドの枠を超えたヒガシさんの活動について話を聞いていきます。
Creator/Brand

ファッションブランド
RBTXCO(アールビーティ)
洋服に“モノガタリ”を取り入れることで、もっと楽しく、もっとワクワクするスタイルを提案しています。世代や国境を越えて多くの人に愛される“物語”のようなファッションブランドです。