RBTXCO(アールビーティ) 第4回 ファッションの枠を超えて

大阪を拠点に、独自のデザインで注目されているファッションブランド「RBTXCO(アールビーティ)」のヒガシテッペイさんへのインタビュー。最終回はブランドの枠を超えての活動について話をうかがいました。
- ヒガシ
- ここ最近は、展示会に対する考え方も少し変わってきてますね。
- SOUQ
- それはどのようにでしょう?
- ヒガシ
- 洋服の展示会というのは、だいたい東京で開催して、世界中からバイヤーさんが来て、注文をもらってその数を量産するというのが流れだったんですけど。展示会で新しい人と出会うことがだんだん少なくなってきてて。
- SOUQ
- そうなんですね。
- ヒガシ
- 展示会に対して予算を組んで仕掛けても、リアクションがそこまでとれないということがここ何年かずっとあったんですね。だから最近畑を変えようということで、去年から美容室で展示会をするようにしてまして。
- SOUQ
- 美容院で? それもまた珍しい。

- ヒガシ
- その美容院はちょっと変わってて、業務用のトリートメントをつくっている会社が運営している、スタイリストがいないヘアサロンなんです。
- SOUQ
- 美容師さんがいない美容院?
- ヒガシ
- そう。銀座にあるんですが、空間だけある美容室。その会社の卸先のサロンが全国にいくつもあるんですが、そこに所属する人気スタイリストさんがハサミだけ持って来て髪を切るというシステムなんです。
- SOUQ
- おもしろいシステムですね。
- ヒガシ
- そう。美容業界では画期的で、いっしょにやりませんか?と言われて美容という文脈とファッションという文脈が合致するのでやっています。

西脇で始めた「365cotton」
- SOUQ
- ヒガシさんは、そうやって従来の慣習や枠に収まらず、いろいろな試みをされてますね。
- ヒガシ
- 子どものとき、学校でもお尻痒くなるから教室の椅子に座ってられへんような落ち着きのない子どもだったんで(笑)、いろんなものを混ぜるというか、タブーと言われることをするのは得意というか。新しいことをやる恐怖感はそんなにないし。間違ってしまったら誠心誠意謝りますし。なんとなく世の中、謝る状況をつくったらあかん、謝るようなことになるなら最初からやらんときという風潮があるような気がするのですが…。
- SOUQ
- そういう空気はありますね。

- ヒガシ
- なんだかんだ、この12年間で僕みたいな人間が必要よねという世の中になってきた感覚が自分の中でありまして。自分としてはただただわがままで、おもしろいと思うような人には、この指止まれって声かけただけなんですけど、ファッションとは少し文脈の違う仕事にふれる機会が増えてきましたね。その中のひとつが「365cotton(サブロクコットン)」。
- SOUQ
- それはどういうプロジェクトでしょうか?
- ヒガシ
- 「RBTXCO」は香港との取引が多いのですが、「Made in Japan」と「コットン100%」の表示がタグについてたら売れるんですよ。
- SOUQ
- 信頼の証ですかね。

- ヒガシ
- それで、7年前ぐらい前にできるだけコットン100%でアイテムをつくろうと言ってたときがあって。でも、コットンはどんな植物かはわかってるんですけど、100%の部分がわからんと思って。当時インターネットで検索しても、コットンがどう生育されて、それがどう生成されて、コットン100%の生地になるのかが全然わからない。そうこうしてるうちに兵庫県の西脇に播州織の産地があり、シャツになる生地をつくっているのがわかった。そこで70代のおじいちゃんたちが開くコットン栽培のワークショップがあるという情報を見つけて参加したんですよ。
- SOUQ
- 70代が主催するワークショップというのはすごいですね。
- ヒガシ
- はい。それから栽培を1年間毎月手伝わせてもらったんですよ。で、これをもっとみんなに知らせたいということで、企画書を書いた。
- SOUQ
- ヒガシさん、ことあるごとに企画書書いてますね。


- ヒガシ
- コットンの栽培は5月から12月まで行われるんですけど、5月10日のコットンの日に種をまいて、11月ぐらいから収穫を始めて、12月いっぱいで収穫が終了する。それを多くの人に経験してもらおうという企画です。
- SOUQ
- その企画書はどうなったんですか?
- ヒガシ
- その年の収穫が12月に終わったとき、おじいちゃんたちに、「1月の初めに餅つきをするからおいでや」と誘ってもらって。いっしょにお餅をつきながらその企画書を見せて、「こういうことをしたい」って言ったら、「60歳の定年から15年経って初めてワークショップを立ち上げたら、こういう話が出てきて。これもなにかの縁やろう」と言ってくれて、空き地だった場所を開梱して畑をつくってくださったんですよ。

- SOUQ
- 想いが届きましたね。
- ヒガシ
- そこから「365cotton」が始まっていま6年目。次7年目の種植えになるんですけど。いまようやく生地ができたり、それで製品をつくるようにもなりました。
- SOUQ
- コットン100%の服といえば、生成りのふわふわしたのを思い浮かべますけど、「RBTXCO」のイメージと違いますね(笑)。
- ヒガシ
- そうなんです(笑)。でも僕はとても自然が好きなので、自然を知るための一つとして、「RBTXCO」がコットンをやるんだ?と興味を持ってくれる人もいればいいなと…。西脇で動いてくれてるメンバーがいるからできることであって、僕は月に1回イベントとして行くだけなんですけど。

- SOUQ
- 西脇の実働部隊は70代のおじいちゃんたちなんですか?
- ヒガシ
- いえ、僕らと同世代で機屋さんで働いている若い人たちが、畑の前の古民家を借りてそこに4人で住み込んでくれています。仕事行くときにチラッと畑を見てくれたり、夏は雑草が多いので草刈りをしてくれたり。子どもが来たときには、コットンは食べられへんからトマトをちょっと植えてくれたりしてるんですよ。1年間通してやってくれています。

- SOUQ
- 自分たちが育てたコットンが製品になるのはうれしいものなんでしょうね。
アーティスティックなぬいぐるみ
- ヒガシ
- もう一つ別の活動が、「ウォールラグ」シリーズです。
- SOUQ
- それはどういう活動ですか?
- ヒガシ
- 洋服づくりをしていると、ハギレとかのゴミがどうしても出る。それをとにかく捨てないで、ぬいぐるみをつくるという企画で。

- SOUQ
- 1点もののぬいぐるみですか?
- ヒガシ
- そうです。たとえば店名にうさぎが入っているお店だったら、うさぎのぬいぐるみをつくるとか。この試みはちょっとアートなテイストがあるので、アートイベントに呼んでもらったりして、アーティストさんの知り合いが増えましたね。
- SOUQ
- さらに幅は広がりますね。
- ヒガシ
- アート系の人たちの生き方って、ある意味社会人じゃないんですよね。人間の原始的なところに向き合うというのがどこかにあって、手が勝手に描いたっていうような哲学みたいなことを言われるのが自分の中で心地いい。農業をやる人とかは、朝起きて天気が悪かったら稲刈りはやめるというのは当たり前というような哲学を持ってて。それはそれでファッションとかけ離れていておもしろい。

- SOUQ
- フィールドによって、考えていることや染みついたものって変わって着ますよね。
- ヒガシ
- 真ん中にはファッションがあるんだけど、アートの人たちの発想、農家さんの持ってる時間の考え方、子どもや家族のことで三角形が描かれている感じです。そこをすべてできるだけていねいに関わる日常が過ごせればいい。これまでを振り返ってみて、いろいろなことがムダにはならなかったかなと思ってやっています。
取材・文/蔵均 写真/香西ジュン
Creator/Brand

ファッションブランド
RBTXCO(アールビーティ)
洋服に“モノガタリ”を取り入れることで、もっと楽しく、もっとワクワクするスタイルを提案しています。世代や国境を越えて多くの人に愛される“物語”のようなファッションブランドです。