佐渡島庸平 第2回 偏愛の時代がやってきた! | SOUQ ZINE スークジン

佐渡島庸平 第2回 偏愛の時代がやってきた!

佐渡島庸平 第2回 偏愛の時代がやってきた!
編集者として、数々のヒット作を世に出し、クリエイターのエージェント会社・株式会社コルクを6年前に立ち上げた佐渡島庸平さん。独特のセンスと嗅覚を持つ佐渡島さんが考えるいまどきのクリエイティブとは?
SOUQ
インターネットやSNSでの新しいコミュニケーションやクリエイティブが増えてきて、いまはどのような時代と言えますかね?
佐渡島
さまざまな可能性がさまざまなやり方でできる時代になってきてますよね。前はルートが決められていましたが、今はどんどん自由になってきている。それに、昔は偏愛がある人がほとんど認められてなかったですよね。
SOUQ
偏愛? それはどういうことでしょう?
佐渡島
昔は「偏愛がある人=仕事をしない人」っていう扱いだったと思うんですよ。だから業務に集中する人や労働時間が長い人が敬われていた。医者とか弁護士とか定型の知識を持っていた人が価値を持っていたじゃないですか。過去の症例や判例からしっかりと理解して対応する。
SOUQ
先生と呼ばれるような方々ですね。
佐渡島庸平
佐渡島
そういう既存の社会ではすごく地位の高かった人たちが、今後コンピューターにとってかわられるかもしれない。いち早く過去の症例や判例を見つけるのはAIができますからね。
SOUQ
たしかにそうですね。

偏愛キュレーションの価値

佐渡島
偏愛がある人っていうのは、例えば、なぜか朝昼晩レストラン行って全部記録つけてる人とか、おみやげに異常に詳しい人とか、炊飯器をいくつも持ってる人とか。こういうのは昔はちょっと困った人だったんですよね(笑)。
SOUQ
(笑)。魅力的だとは思いますが…。
佐渡島
音楽が詳しすぎるとか。でもこういう人はDJになりますからね。DJって世界的にはミュージシャンよりも価値が出てきている。
SOUQ
マニアックだからこそ、人を楽しませることができる。
佐渡島庸平
佐渡島
世の中に情報が溢れすぎているけれど、上司と二人で食べに行く、3万円以上で接待したい、亭主と仲良く話しながら料理について楽しめる、とか細かい条件を入れていったときに、パッとキュレーションできる人ってなかなかいないんですよ。だからそれが価値になるんですよ
SOUQ
AIにはできないですよね。
佐渡島
家電を選ぶのもそうですよ。1万円以下でセグメントして通販のレビューを見て選ぶのは誰でもできるけど、じゃあ大学生が東京に引っ越したときに、いちばん最初に揃えればいい冷蔵庫ってどれ? レベルの高い中古で5つの家電を5万円以下で揃えられるとか。誰もができることではない。そういう意味で「家電のDJ」はめっちゃ価値があるわけですよ。

作家の細かい好みも成立する

佐渡島
「家電のDJ」のようにむちゃくちゃいろんなところに価値がある人が出てきてて、その人たちがみんな活躍ができる、ある種のクリエイターになってきてるなと思うんです。
佐渡島庸平この日佐渡島さんが着ていたのは、コルクオリジナルの『宇宙兄弟』トレーナー。
SOUQ
なるほど。確かにそうですね。そういう偏愛をする人の価値や、いろんなやり方が出てきている中で、作家さんをプロモーションするときも、やり方はそれぞれ違ってくるんですかね?
佐渡島
やり方は一つ。結局ネット上でその作家の魅力に気づいてもらったら食べられる時代になってきてます。気づいている人の数が数万単位になれば全員食べていけるなあ。
SOUQ
やはりインターネットは重要なんですね。
佐渡島
昔はある種、サスペンスとか時代劇とかざっくりしたジャンル分けしか成立しなかったのが、今は作家の細かい好みも成立するなと思っていて。ただその細かさが明確に伝わらないとダメですよね。作家自体が自分ができることってなんなんだろう、自分の好きなものってなんなんだろうということを理解する必要は出てきてると思います。
佐渡島庸平
SOUQ
それを理解するための手助けを、コルクでやっているわけですね。
佐渡島
まあコーチングみたいな感じで輪郭をはっきりさせていくんです。たとえば読者が小説を読んだ後に「この人これ好きだろうな」と明確に言える印象を残せるかどうか。たとえば村上春樹さんって読んでると、この人ジャズやそれほど凝ってない料理をつくるのが好きなんだろうなとみんな思いますよね。あと結構筋トレ好きだろうなあとか。
SOUQ
ご自身も走ってらっしゃいますもんね。
佐渡島
でも小説の中の主人公は走ってないんですよ。本人は走ってるけど(笑)。でも主人公がなにが好きなのかとか、読者がほぼ同じ感想を持てるんですよ。そういうタイプの作品はいい作品だと思います。

取材・文/蔵均 写真/東泰秀

次回第3回は、『マチネの終わりに』が大ヒットした小説家・平野啓一郎さんとの関係について聞いていきます。

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