佐渡島庸平 第3回 本当に理解するための練習 | SOUQ ZINE スークジン

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佐渡島庸平 第3回 本当に理解するための練習

佐渡島庸平 第3回 本当に理解するための練習
『宇宙兄弟』の小山宙哉さんや『働きマン』の安野モヨコさん。マンガ家のエージェントを数多く手がけている佐渡島庸平さんですが、小説家のエージェントも。今回の話は、『マチネの終わりに』が大ヒットした平野啓一郎さんとのいい関係です。
SOUQ
コルクは小説家の平野啓一郎さんとも契約されてますが、平野さんの作品っていままで難解というイメージがあったんですが、『マチネの終わりに』を読んで、なんてわかりやすいんだ!と思ったんですね。これはもしかして佐渡島さんの編集のチカラなのかなあと思ったんですが。
佐渡島
平野さんが書くものって、すごく精緻に練られてるんですよ。でも読者って書く人に比べると、そんなに真剣に読まない。真剣に読んでるかもしれないですけど、書く人ほどの繊細さで小説を読めてないんですよ。
SOUQ
そこまで読みこめないですね。
佐渡島
たとえば平野さんと打ち合わせをしているときに、「ここがよくわかんなかったんですけど」って言ったら、「いやいや、これについては100ページぐらい前に、こういうふうに説明してるよ」って言うんですよ。普通の作家と編集者の関係だったら「あっそうですよね。見逃してました」ってそのまま進めちゃうのかもしれないけど、僕は「そんなの誰も覚えてないからもう一回言ってくださいよ」って言っちゃう(笑)
佐渡島庸平
SOUQ
作品をよくするためには、作家さんにも厳しい(笑)。

素人の目線で会話を

佐渡島
やっぱり中学生が読んでもわかるというか。彼らに伝わるようにするというのが重要で。僕は平野さんとは密にしゃべっているから、平野さんの考えを理解することができるんですけど、それは一回封印して、もう一度素人の目線で「平野さん、それもういっぺん言ってください。それだったら意味がわかんないですから」という会話をいっぱい繰り返すんですよ。そうしたら平野さんが言い直して、言い直してくれて、すごく伝わるようになる。「それだったらみんなわかると思います。それ、とても面白いじゃないですか。そんな面白いことを考えてたなんて気づいてなかったですよ」っていう会話が繰り返されるんですよね。
SOUQ
作家と編集者のいいキャッチボールですね。
佐渡島庸平
佐渡島
結局、僕の中でどれぐらいわかるかということだと思うんですね。本当の物差しって自分の中にしかないんで。小説として残るものをつくらないといけないから、本当に理解してない限りわかったと言わないというか。本当に理解するということがどういうことなのかをすごく練習するというか。
SOUQ
本当に理解するということは、難しいことかもしれません。
佐渡島
世の中ではほとんど理解してなくても理解したと思って進めるクセがついてる。上司と部下の関係でも「これやっといて」「なんでできてないんだよ」「そういうことだと思ってませんでした」というのはいっぱいありますよね。
SOUQ
あります、あります。

インタビューごっこで明確に

佐渡島
たかがちょっとしたタスクの受け渡しでもズレるわけで。例えば愛とはなにかという抽象概念を平野啓一郎が伝えようとしたときに、平野さんにはまず最初にひと言言ってほしい。30分語られても初見の読者には伝わらないですから。
SOUQ
長い説明はかえってわかりにくくなる。
佐渡島庸平佐渡島さんが撮影時にかぶっていたのは、サウナ好きの佐渡島さんにインスパイアされて誕生した、コルクオリジナルのグッズ。その名も「MIZUBURO!」キャップ。
佐渡島
まずは一言、「愛とは、あなたが好きな私が好き」と定義することが大事で、その概念を補強するためにいろんな文章があって、全体としてその概念が語られているという構造を明確にするというか。ここが中心、ここは中心からちょっと離れた説明、さらに離れた説明とはっきりさせる。
SOUQ
そうするためには、どうすればいいでしょうね。
佐渡島
インタビュアーをやるんですよ。普通の会話の中だと照れちゃうんで。平野さんとは作品が完成した後に、僕が取材に来た人という体で、「今回の作品のテーマってなんだったんですか?」「なんでそれをテーマにしようと思ったのですか?」「そのテーマを最も象徴している印象的なシーンはどこですか?」というようなインタビューごっこをやるんですよ。そうやって平野さんが考えていることを明確にしていくということはやりますね。

取材・文/蔵均 写真/東泰秀

次回最終回は、稀代のヒットメーカー・佐渡島さんに、売るため(?)の秘訣を聞いていきます。

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