佐渡島庸平 第4回 売ることよりも伝えること | SOUQ ZINE スークジン

佐渡島庸平 第4回 売ることよりも伝えること

佐渡島庸平 第4回 売ることよりも伝えること
『ドラゴン桜』、『宇宙兄弟』、『マチネの終わりに』…佐渡島庸平さんは、どうしてこれだけのヒット作を生み出すことができるのか? その秘密を聞いていくと…。
SOUQ
佐渡島さんは、『ドラゴン桜』、『宇宙兄弟』などのマンガ、小説『マチネの終わりに』など、本当にいままで数多くのヒット作を手がけてこられたのですが、それは売ろうということをかなり意識されてきたからですか?
佐渡島
売ろうというよりは、基本的に伝わるかどうかということを意識してます。作家の人たちは、しっかりと伝える価値を考えているんで。
SOUQ
コルクに所属するマンガ家、羽賀翔一さんが描いた『漫画 君たちはどう生きるか』も、昨年、日販やトーハン、あらゆるランキングで1位になったとびきりのベストセラーです。
佐渡島庸平
佐渡島
『漫画 君たちはどう生きるか』は、たとえば僕がこの場で「どういうふうに生きるのがいいと思います?」と聞いても、パッと答えられないし、すぐには真剣に考えられないじゃないですか。だからどういうふうにすると、読者が本を読み終わったとき、それを真剣に考えるのだろう? ということを主眼に編集しています。読者が真剣に考えてくれると伝わる。どんなメッセージでもいいんですけど、それがしっかり伝わると売れるんですよ。伝わり具合が悪いと売れない。

社会の貢献への挑戦

SOUQ
伝わらないのは、どうしてですかね?
佐渡島
何を伝えたいのか明確じゃないということと、伝えたいことが明確でも伝わってないという二つがあるというふうに思ってて。売ろうかなという形でいろんな努力をする行為は、メッセージも明確じゃなければ、伝え方も拙いものを無理やり届ける行為なんじゃないか。これって届いても伝わらないんで社会は変わらないんですよ。
SOUQ
社会が変わらない?
佐渡島庸平
佐渡島
世の中に対して作品を出すということは、それをきっかけになんらかの社会の変化というものを起こして、作家として、僕の場合は編集者として、これを世に出すことによって貢献できたかどうかという挑戦なので。たくさん売れない限りその挑戦は成功にならないんだけど、売ることを主眼にしてたら、その目的は叶えられないんですよね。
SOUQ
社会に変化を起こすためには、売れなければならない。佐渡島さんは売るためにこれまでもいろんなことをやってきたと聞いています。『宇宙兄弟』は、美容室に本を送ったんですよね?
佐渡島庸平コルクの活動「せりか基金」は、『宇宙兄弟』の物語の中で、伊東せりかが向き合おうとする難病ALSの治療方法を見つけるためのもの。
佐渡島
『宇宙兄弟』売りたいなあと思っていると、髪の毛を切っててもそのことで頭がいっぱいで。美容師さんに「お客さんとふだん何話すんですか?」「って聞いたら、「最近読んだ本の話しとかしますね」、「本を送ったらお客さんに薦めてくれます?」、「いや結構会話に困っちゃうから薦めるね」ってなって。
SOUQ
すごいところに目をつけますね。
佐渡島
それで、たくさん顧客のいる美容室なら本を送る価値あるなあと思って。「読んで面白いと思ったら、お客さんと話してください」という手紙を添えて送りました。

やりたいことは、いますぐやる

SOUQ
そこから『宇宙兄弟』が動き出した?
佐渡島
どうですかねえ。当時『宇宙兄弟』の宣伝費もあまりなかったので、やることがなくて。なんでも努力してましたよという話なんですよ。本には読者ハガキがついていて、それも全部読んでたんですよ。最初の頃は、感想とその人の住んでる場所と年齢と家族構成をみて判断して、『宇宙兄弟』が面白いっていろんな人に言い広めてくれそうな人にポスターを送ってました(笑)。売りたいと思ったら、やれることをなんでもやるだけなんですよ、簡単なことから。
佐渡島庸平
SOUQ
本や雑誌の世界では、出版不況を理由にチャレンジせずにあきらめてしまっているところもあるかもしれません。
佐渡島
何事も他人のせいにしてたら変わらないですよね。自分のやりたいことがあるんだったらやればいいし。ちょうど昨日から月2で「コルクラボマンガ専科」っていうプロのマンガ家を目指す人のための講座を始めたんですが、若い受講生が「死ぬまでに一度『沖縄美ら海水族館』に行きたい」って言うから、いや、もうすぐ、今週末に行けよって(笑)。
SOUQ
LCCも普及して行きやすくなりましたし(笑)。
佐渡島
やりたいと思うことがあるんだったら、全部いまやればいいのになと僕は思うので。それをやらないということは、やりたくないんですよ、たぶん。

取材・文/蔵均 写真/東泰秀

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