左京泰明 第3回 「コミュニティづくり」を仕事に

シブヤ大学の学長・左京泰明さんへのインタビュー第3回。今回は、シブヤ大学での活動を通じて左京さん自身に起こった変化と、シブヤ大学のこれからについてお聞きしました。
- SOUQ
- シブヤ大学を13年間続けられて、左京さんご自身が変化したことはありますか?
- 左京
- 人のためになる仕事がしたい。その目的意識は、シブヤ大学を始めた頃とまったく変わっていないと思います。その一方で、近年は次の世代のことを考えるようになりました。 最初の頃は自分ひとりですらNPOという分野でご飯を食べていけるのか、家族を養っていけるのか。それすらわからない状態でしたが、この十数年で「コミュニティデザイン」や「まちづくり」などといった言葉も普及し、その道で働きたいと思う若い人も増えていますから。
- SOUQ
- 最近はNPOという言葉も一般的になっていますよね。
- 左京
- そうですね。僕が商社を辞めてNPOとして起業した頃は、それだけで取材を受けたこともありましたから(笑)。当時のインタビューでは「NPOでもちゃんと稼げる!」とかそんなことを訴えていました。「社会貢献=お金を稼いではいけない」というイメージがあり、それはおかしいと思っていたので。そのときは仮に自分がいくら叩かれるようなことがあったとしても、そのメッセージを世の中に発信したいと思っていたんですよね。
シブヤ大学の知見を若手育成に活用したい
- SOUQ
- そういう意味では、「シブヤ大学」の活動に興味を示してくれる若い人が増えたことはすごくポジティブですよね。

- 左京
- そうですね。でも、彼らがこの分野でどんな専門性を高めて、どういうキャリアを歩めばいいのかについては学校では学べないことだと思っています。それに対して、この13年のシブヤ大学での実践を通じて身につけた知見やノウハウを若い人たちと共有していきたい。だから、この数年は新たなプロジェクトを作るのと同時に、それらに関わる人の育成という視点も意識しています。彼らが成長して、これからのシブヤ大学を任せられるようになれば、僕は違う名刺を持って活動していきたいなと思っています。
- SOUQ
- 左京さんご自身は、次のフェーズのことも考えられていらっしゃるんですね。

- 左京
- そうですね。僕は新しい分野を開拓していこうと思っています。
頑張っている人たちの心の火を絶やさぬために
- SOUQ
- 具体的に決まっていることはあるんですか?

- 左京
- 一つは、渋谷という地域にとって今後より重要になってくる地域福祉に関わる人たちの力になれたらと考えています。例えば、ある地域包括支援センターの職員の方にお話しを伺うと、高齢者からの相談件数や見守りが必要な人の数は年々増加していて、現場の職員だけで対応することが難しくなっているそうです。それを解決するためにいかに地域ぐるみで高齢者の方々を見守り支え合う状況を作っていくか、そんなことを現場の方々と一緒に考えていきたいと思っています。
- SOUQ
- それって日本の課題でもありますよね?

- 左京
- そうですね。どのようなプロジェクトでも同じなのですが、ゆくゆくは「渋谷モデル」と呼ばれるくらいのものになるように、高い目標を掲げて、取り組んでいきたいと思っています。
- SOUQ
- シブヤ大学は地域にとってどんな存在でありたいですか?
- 左京
- これまでの経験から、地域の方から相談を受けた時、どんなに課題が明確だったとしても、すぐにその解決に着手できる状態ではない場合もあると学びました。つまり、すでに日ごろの業務などで心身ともに疲労困憊だとすれば、新たな行動にうつる余力も気力もその時はない訳です。そういう時にはまず、その方に深く共感すること。そして、状況やタイミングに応じて、実行できる解決策を提案するようにしています。やっぱり、 がんばっている人たちの心の火が大きくなるように薪をくべていきたいじゃないですか。そういう存在になりたいですね。
取材・文/村上広大(EditReal) 写真/東泰秀
さまざまな出会いによって誕生したシブヤ大学。最終回では、渋谷が現在直面している問題と、それに対して左京さんがどのようなアプローチをしようとしているかについてお聞きします。
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