シオネ(SIONE) 第3回 繊細な線は仏画から | SOUQ ZINE スークジン

シオネ(SIONE) 第3回 繊細な線は仏画から

シオネ(SIONE) 第3回 繊細な線は仏画から
凛とした空気をまとった白磁のうつわを展開する「SIONE」。第3回では作家の河原尚子さんの修業先で、今も関係が続く佐賀県・有田での日々を振り返ります。細く伸びやかな線の秘密も教えてもらいました。
SOUQ
佐賀県の有田で修業されていますが、そのきっかけは?
河原
京都だと結局は窯元の娘がきたといって修業にならないから、だったら出る方向で考えてみようと思ったんです。それで検索を…。
SOUQ
検索ワードは「絵付け師」とか?
河原
いや(笑)。まずは窯元の検索ですね。でもその当時は窯元でホームページを持っているところってそもそも少なくて。絵付けだったので九谷と有田を中心に探していて、有田で仏画の陶彩画を描く草場一壽先生に辿り着いたんです。技術も色もすごく惹き付けられるものがあって。工房があるのは佐賀県の武雄という街なんですけど。駅に降り立ったら、そこもすごく風が気持ち良くて。ここにはなんか全部がある気がするわと思って、弟子入りをお願いしたんです。
SOUQ
何年、師事されていたんでしょう。
河原
最初は3年のつもりだったんですが、2年間です。京都で日本文化のことも学びたいという気持ちが膨らんできて。絶対に有田と京都の橋渡しというか、そういう仕事ができるように頑張りますので、と先生にお願いして。

いつものカップに、物語を。

SOUQ
それで京都に戻られたんですね。
河原
はい。でも、本当に向こうでは叩き上げなんですよ。私も仏画を描いていたんですが、拝まれたり涙を流される方がいらっしゃるのを見て、もっと本腰を入れて描かないといけないと。なので、滝行をしたり山に登って一人で野点をするみたいな、休日はまるで修行僧のような時間を過ごしていて。
SOUQ
滝行! それは濃密な時間ですね。もはや修験道。
河原
いたのは2年ですが、10年ぐらいいたような気がしています。帰ると父から、それだけの修業をしてきたんだったら「家を手伝うな」と言われて。
SOUQ
手伝えじゃなくて、手伝うな、ですか(混乱)。
河原
「一人でやって、売れるものつくっていけよ」って。売れるものってなんやろうと考えながら、有田で自分の心を癒してくれた草花とかを描き始めたんです。売れるというのは「人の心」に答えがあることなので、私はもっとデザインを勉強しないといけないと思って、次はグラフィックデザインの会社に。そして、その間に実家がやっていたことを思い出すんですけど。
SOUQ
お茶にまつわることですか?
河原
そうです。ある時、目の前にあるコーヒーカップに名前がついていないのはすごくもったいないなと思って。ほら、抹茶碗って全部に銘があるから。だったら「物語」のあるうつわをつくったら、もっと生活が楽しくなるんじゃないかと思ったんです。それで「SIONE」を立ち上げました。
SIONE雨モチーフのドットのカップに太陽の小皿を乗せて。単体だけでなく、うつわ同士を組み合わせることで自分だけの物語に。

抑揚のない線。ルーツは仏画。

SOUQ
「SIONE」さんの作品の特長は、やはり端正なこの線ですよね。
河原
この線は仏画からきているんです。
SOUQ
なるほど! もしも、先生の作風が細密な仏画じゃなかったら…。
河原
まったく違う線になっていたと思います。特に、仏様の指は抑揚のない線で描かないといけないんです。はじまりも「ため」があるのはだめ。
SOUQ
「ため」があるとよくないのですか?
河原
よくないというか人間味が出てしまうんですよ。特に仏画というのは指とかの曲線の太さが違うと 少しでも線が歪んだりしていると違和感を感じるんですよね。拝んでいる方がわれにかえってしまうんです。それで抑揚のない線を書く様に学んだのですが、うつわも使う人がそこに物語をプラスしていただくものだから、変に「我」が出る線よりも抑揚のない線のほうが美しいと感じるようになりました。でも、うつわもそれとよく似ている気がしていて。
SIONE個展用に制作した陶板画。「多色の場合は色が調和し過ぎないように、あえてひっかかりを持たせています。 生きていることは、調和だけではないと思うし“ひっかかり”が生きている実感につながると思うので」。
SOUQ
作家の想いが入り込み過ぎるとよくない。
河原
トゥーマッチになる気がして。使う方が自分の気持ちを乗せていけるように。そういうこともあって、抑揚のない線を今も描き続けているんです。
SOUQ
では、金色も仏画から?
河原
そこは関係ないですね。白い地肌が一番、きれいに見える色にしたいなと。
SIONE
SOUQ
精神統一が求められるから、悩みごとがあると線がブレたり。
河原
悩んでいる時は筆をあまり持たないようにしていますね。筆は普通はふにゃふにゃですけど、気持ちを入れると硬くなったりやわらかくなったりするんですよ。調子がいいと言うことを聞いてくれる。それと変な言い方ですけど、うつわを見つめていると「見えてくる」んです。
SOUQ
見えてくる?
河原
下書きのようなものが浮きあがってくるので、それに清書する感じですね。目で見るというより、心で観る。でも、こういうことをいうと不思議ちゃんみたいに思われるのか、よくカットされるんですけど(笑)。

取材・文/吉田志帆 写真/桑島薫

有田での修業を終えて「SIONE」を立ち上げた河原さん。次回最終回は、物語のある「読む器」について話を聞いていきます。

Creator/Brand

SIONE(シオネ)

陶磁器

SIONE(シオネ)

日常を非日常に切り替えることをコンセプトに、「SIONE」は“読むプロダクト”を提案。 白磁に金彩、繊細な線描きが特徴的なうつわを中心に展開しています。

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