シオネ(SIONE) 第4回 人とのつながり、たくさんの物語をうつわに

凛とした空気をまとった白磁のうつわを展開する「SIONE」。有田での修業を経て、京都に戻ってきた作家の河原尚子さん。最終回では、作品の着想や制作のパートナーである有田の職人さんたちのことを聞きました。
- SOUQ
- 「SIONE」さんの作品は端正な線と、あと、余白も印象的で。
- 河原
- 絵を主張し過ぎると料理を盛りつけるスペースがなくなっちゃうというか。なので、余白も大事にしています。
- SOUQ
- 確かに、余白がある方が想像が膨らみます。
- 河原
- そうですね、文章の行間のような感じ。
- SOUQ
- 物語を込めた「読む器」ということで実際に文章を添えた作品もありますが、言葉が先なのか、絵が先なのか。どちらなんでしょう?
- 河原
- シリーズによりますが、言葉が先のものもあります。

- SOUQ
- 文章はご自身で書かれているんですか?
- 河原
- そうです。日本文学部卒だからか文章で表現するのはとても好きなんです。
- SOUQ
- 経験を余すところなくですね。伏線の回収がすごい(笑)。
- 河原
- もうお腹いっぱいでしょ(笑)。中学からずっと書いているから、文章を書くのは私にとってめちゃめちゃ自然なんです。うつわから入るとかたちは制限されてしまうんですけど、物語だと無限大じゃないですか。そういう状態をつくっておけば、狭い視野でつくるよりも広がりがある。
- SOUQ
- 広げたものを凝縮する感じですね。
- 河原
- その方が固定概念のないうつわをつくれるのかなと思って。
- SOUQ
- 生地は有田で。
- 河原
- はい。京都というのも考えたんですけど、有田ではきれいな土にも感動していたので。他に長崎の波佐見でも造っています。熊本でとれる天草陶石という陶石なんですけど、ちょっと粘り気が少ないんですね。なので、練り方が違うんですよ。京都の人がつくろうと思っても、へたってしまってつくれないということがあって。それと、修業時代にどんどんシャッターが閉まってしまってしまう有田の街並みを見て、腕利きの職人さんがいっぱいいるのにもったいないと思ってしまって。京都だと京焼になっちゃうのもなんか嫌だし、いろんな産地の色んな技術を掛け合わせながら、新しいメイド・イン・ジャパンみたいなものがつくれたらいいなと。それで、有田の友人の窯元に企画書を持っていったんです。
- SOUQ
- 本当にたくさんの方が関わっていらっしゃいますよね。
- 河原
- 有田では型師さん、そして生地をつくる会社が2社。で、ろくろの方が一人いらっしゃって、あとは釉薬と焼成を担当する窯元。転写の職人さんもいます。
- SOUQ
- 人にまかせる葛藤とかは。
- 河原
- もちろんありました。一人で立ち上げたので、最初は全部やらないといけない。そのなかで少しずつ人にお願いしてきたので、それはまず私の第一関門でもありましたね。最近はあまり行けていませんが、有田には足繁く。例えば、このうつわは釉薬を霧状にしてかけているんですけど。

- SOUQ
- 確かに、よく見ると表面がマットな感じですねプツプツしていますね。
- 河原
- 最初はこれが全然そろわなくて。なぜかというと白いうつわに白い釉薬をかけるから、すぐに染み込むんですよね。少しかけたのか、たくさんかけたのか分からない。だから、ツヤツヤのがきたり、ざらざらのがきたり、クオリティがそろわない。赤いインクを混ぜて、色でコントロールするという手法を始めたらうまくいきましたが、安定するまで半年はかかりました。細かくクオリティの話をしながら、信頼関係つくっていくのは、本当に遠距離恋愛みたいな…(笑)。
- SOUQ
- 安定期に入るまでは大変という(笑)。
- 河原
- そうそう(笑)。電話もいっぱいして職人さんを励ましたりとか。やってもうたーみたいな時もありましたね。

- SOUQ
- 海外での展示など、どんどん活動の場を広げられていますが、河原さんがこれからしてみたいことって。
- 河原
- より自由に。あ、今までも自由だったようには見えると思うんですけど、気持ち的に、より自由になれたらいいなぁというのがあって。
- SOUQ
- そうしたら、また新しい作品が生まれそうですね。
- 河原
- うんうん。ご縁のなかでできていくだろうし、自分の精神のブラッシュアップにもなると思うから。次は全然、違う物をつくってもいいですしね。
取材・文/吉田志帆 写真/桑島薫
Creator/Brand

陶磁器
SIONE(シオネ)
日常を非日常に切り替えることをコンセプトに、「SIONE」は“読むプロダクト”を提案。 白磁に金彩、繊細な線描きが特徴的なうつわを中心に展開しています。