sonor(ソナー)第3回 偶然が必然へ

「sonor」の園田明子さんにお話を聞く「ピックアップクリエイター」の3回目。今回は、ブランドのコンセプトでもあるこだわりの素材選びについて。環境にやさしい生産過程で作られた国産の豚革との出会いについて伺いました。
- SOUQ
- 布中心のものづくりから革にシフトしたのはどういういきさつが?
- 園田
- 生地を仕入れに繊維街のある日暮里によく行く中で、革のお店にも何回か行っていて、気になってはいたんです。でも、勝手な先入観で「革は高いから自分には買えない」と思っていて。ちゃんと値段も見てなかったのに(笑)。
- SOUQ
- 食わず嫌いしていた?
- 園田
- まさにそうです(笑)。でも何回か行くうちに値段も見るようになって、「あ、これなら私でも買える」と思ったのがあって買ってみたんです。最初に買ったものが、今も使っている墨田区で作られている豚革だったんです。本当に偶然の出会いでした。
これだと思った素材
- SOUQ
- たくさんある中からその革を選んだ決め手は?

- 園田
- カラーバリエーションが豊富で、色味がやさしいところ…ですかね。あと、豚革は牛革などに比べて薄くて柔らかいので、自分が持っているミシンで簡単に縫うことができた。扱いやすかったんです。それもたまたまだったんですけど(笑)。
- SOUQ
- そこからもっと革でいろんなものを作ってみようと?
- 園田
- 豚革って帆布みたいな感覚があって、わりと今まで自分が作ってきたものに通じるところがあったんです。だからあまり戸惑いもなく自然に作ることができました。しかも道具が新たにたくさん必要というわけでもなく、針を革用に変えれば大丈夫だった。もともと、革のバッグを作ってみたいと思いはありましたし、破れない革製のルームシューズも作ってみたいなとも思っていたんです。
- SOUQ
- サッと布から革へシフトできたんですね。
- 園田
- そうですね。初めて革を買った日暮里の革屋さんが、革の扱いについて親切にいろいろ教えてくださったのも大きかったです。そこからもっと革について知りたいと思うようになりました。
革から広がる出会い
- 園田
- 通っていた革屋さんから、私がいいなと思った革を作っている会社が工場見学をしているというのを教えてもらったんです。知識を広めるいい機会だと思ってすぐ申し込んで参加したら、見学の後に懇親会みたいなのがあって。そこで会社の社長さんが「今度、革の組合としてギフトショーに出展するんだけど、うちは自社ブランドがないから、この中で興味がある人がうちのブースで出しませんか?」ってお話をされてて。

- SOUQ
- すごいお話ですね。
- 園田
- 当時ギフトショーというものがどんなものなのかも正直あまりよく分かっていなかったんですけど、とりあえず面白そうだなと思って、手を挙げてみたんです。靴を作っている人、アクセサリーを作っている人、バッグを作っている人、私の4人で、なぜか私が代表をやることになったんです。出展に向けて、打ち合わせや、社長さんとのやりとりを取りまとめて。小さいブースではあったんですけど、4人がそれぞれの作品を展示して、交代で会期の3日間ブースに立って。初めて本格的な展示会というものを経験しました。参加したことで、出展するためのいろんな流れが分かったのは大きな収穫でしたね。
- SOUQ
- その後に繋がるいい機会だったと。


- 園田
- そうですね。しかも、その展示会でありがたい出来事があって。革のルームシューズとエプロンを出してたんですけど、たまたま訪れたCIBONEのバイヤーの方がルームシューズに興味を持ってくださって。「オリジナルの革のスリッパを作りたいんですけど、できますか?」と声をかけていただいたんです。スリッパはそれまで作ったことがなかったんですけど、ここでもやってみなきゃ分からないと思って、お引き受けしてオリジナルのスリッパを作ることになりました。
- SOUQ
- すごい出会いですね。その時点で「sonor」というブランドとして活動されていた?
- 園田
- 「sonor」という名前自体はニットショールを作っていた頃から使ってはいたので、段々と輪郭がはっきりしてきていましたね。
取材・文/林知子 写真/東泰秀
ひょんなことから知った国産の豚革、そしてそこから広がっていく人との出会いや制作活動。最終回となる次回は、今後挑戦してみたいことについて伺います。