高橋晋平 第2回 個人的欲求から企画アイデアは生まれる | SOUQ ZINE スークジン

高橋晋平 第2回 個人的欲求から企画アイデアは生まれる

高橋晋平 第2回 個人的欲求から企画アイデアは生まれる
ニッチでユニークなおもちゃを生み出しているクリエイター、高橋晋平さんにスポットを当てた今回のスークインタビュー。第2回は、彼のものづくりの「発想法」をテーマにお話をうかがいます。「こうきたか!」と驚かされる数々のアイデアは、どんなふうに生まれるのでしょう。そして、その発想を生むために、普段から取り組んでいることはあるのでしょうか。
SOUQ
おもちゃを作るときの発想は、どんなふうに生まれるのでしょうか?
高橋
根底にある考え方として、アイデアがひらめくことって「偶然」でしかないと思っているんです。
SOUQ
偶然、ですか!
高橋晋平
高橋
偶然といっても瞬間的にポンと浮かぶものではなくて、キャリアの考え方として有名な「計画的偶発性理論」に近いかもしれません。あらかじめキャリアを計画しても、なかなかその通りにはいかないし、むしろ偶然起きたことや出会いによって自分がいい方向に進んだりする。その偶然を意図的に作れるように行動するのが良いっていう理論なんですけど、まさにおもちゃの企画もそうだと思っています。
SOUQ
アイデアが思いつくっていう「偶然」を引き起こすために、動いていることがあると……?
高橋
そうですね。そのために常日頃からやっていることが二つあるのですが、その一つは、自分が欲しているものを知っておくということ。家族とか身近な人の欲求の場合もありますが、「自分ごと」として本気で「そうなったらいいな」「これがほしいな」という個人的欲求をリストアップするんです。

本当に欲しいかどうかを自分に問う

SOUQ
なるほど。仕事とかニーズとは関係なく、あくまで個人的に欲しいものなんですね。
高橋晋平
高橋
仕事をしていると、自分が欲しいものって見失いがちで、自分が消費者の立場になった時に、本当に欲しいかどうかを置き去りにしたまま、ものを作りはじめてしまうことってあると思うんです。「こうしないと企画が通らないんじゃないか」とか、「こうやったらバズりそうだな」とか。そういうことを優先しておもちゃ作りをしてしまった時に、「これを自分で買うか?」と考えると「買わないなぁ」って。それって、欲しい人が誰もいない可能性もあるっていうことだと思うんです。だって、自分ですら欲しいと思わないものを、他の人が欲しいかどうかって、ある種の博打でしかないじゃないですか。
SOUQ
確かにそうですね。
高橋
私もそれに気づくまで、数年かかってしまったんですけどね。それに、自分自身が欲しいと思うものを作っていくか、自分が欲しいとは思っていないものを作っていくかって、発揮できる能力が全然ちがいます。自分が欲しかったら、細部でのアイデアはいくらでも出てきますし、誰に頼まれなくてもそのおもしろさを伝えたくなるくらい、情熱を注ぐことができます
SOUQ
確かに、ものづくりへの純度というか、本気度が変わってきそうですね。
高橋
いかに自分がユーザーになりたいか、いかに〝オレ得〟なアイデアを考えられるのかっていうのがとても大切で、そのためには、まず〝オレ得〟とはなんなのかを知ることが大事だと思っています。それがつまり個人的な欲求を知るっていうこと。自分が欲しいものは、ものづくりの大切な指針になります。
高橋晋平
SOUQ
確かに、大人になると、個人的欲求ってじっくり考えることって少なくなっている気がします。自分は何を欲しているのか、自分は何が好きなのか、わかっているようでわかっていないというか。
高橋
そうですよね。そういう時は、本屋さんに行ったりお店に売っている商品を見たりするといいですよ。そうすると、いろいろな情報が目に飛び込んでくるから、それに対して興味があるかどうか、好きか嫌いかを判断していく。そうすると、自然と個人的欲求が見えてくるんです。

「今だ!」というタイミングを見逃さない

SOUQ
見えてきた個人的欲求が、創作のアイデアに変換されるタイミングがあるんですよね?
高橋晋平
高橋
はい、それがもうひとつやっていることと関係があるのですが、積極的に人と会っていろいろなことを話したり、好奇心を持ったことを知るために調べたり話を聞いたりすることも意識的にやっています。そうすると、先ほどお話しした個人的欲求と外部からの情報が結びついて、アイデアに発展する瞬間があるんです。
SOUQ
まさに、「計画的偶発性」によってアイデアが生まれるってことですね。
高橋
それに、企画をすることって、おもしろいアイデアを思いつくことも大切ですけど、それだけではうまくいかなくて、世の中の流れやパートナー企業との出会い、類似品の発売、そういういろいろなタイミングが合致しないとなかなか難しいんです。でも逆に、そういうタイミングが合致したら、「今やらなきゃいけない!」となる。企画ってタイミングが大事なんですよ。
SOUQ
そのタイミングを、いかに掴めるかっていうことですね。
高橋
はい。2017年にクリエイターの乙幡啓子さんと共作で作った『民芸スタジアム』は、民芸品をバトルさせるカードゲームなのですが、まさに個人的欲求と外部からの情報、そしてタイミングが重なって生まれたおもちゃです。
高橋晋平
SOUQ
なるほど!もともと民芸品がお好きだったとか……?
高橋
いえ、個人的に興味があったのは、バトルするカードゲームの方です。でも、こういうゲームって、自分でカードを所有していないと対戦できないですし、そこまでカードを集めている時点で、ユーザーはかなりマニアックなんですよね。私の場合は、そういうマニアの中で対戦がしたかったわけではなくて、もっといろいろな人と気軽にこういうカードゲームがしたいと思っていたんです。
高橋晋平
SOUQ
確かに、入り口が「個人的欲求」ですね!
高橋
それで、ある機会に乙幡さんとお話していたら、「今、民芸品が熱い!」と。それを聞いた時に、個人的欲求と今まで知らなかった民芸品というものが結びついて、「これだ!」って。シンプルに民芸品を対戦させたらおもしろそうって思いましたし、「だるまを破壊だ!」「こけしを召喚!」とか言いながら対戦したいっていうのもあって(笑)
SOUQ
おばあちゃんの家に飾ってあった民芸品の人形が、キリッと強く思えてきます(笑)民芸品て、よく見るとデザインもバラエティ豊かでかわいいですね。
高橋
学習用として作ったわけではないんですけど、遊んでいるうちに47都道府県の民芸に触れられるっていうのも、このおもちゃのいいところです。
SOUQ
各地域にはいくつかの民芸品が存在していると思いますが、そのセレクトも高橋さんが?
高橋晋平
高橋
はい、戦闘力も考慮しながら選びました。そして、一つひとつ民芸職人の方に許可を頂いて、内容も確認をしていただきながら作っています。 多くの職人さんはかなりご年配で、カードゲームなんて無縁の方たちばかり。でも完成品をお送りしたら、とてもよろこんでいただいたんです。「こんなに全国に民芸品があって、それを自分たちのように作っている人たちがいるっていうことがわかって嬉しかった」と。そんな内容のお手紙を何通もいただいて、この仕事をしていた甲斐があったって思いました。
SOUQ
職人さんたちのそういう反応は、想像していましたか?
高橋
いいえ、全く。読めなかったいい反応が得られたのは、とても嬉しかったですね。こういうことが、自分がやっていきたい仕事の形だと思いました。

取材・文/内海織加 写真/東泰秀

高橋さんが生み出す数々のユニークなおもちゃ。そのすべての根底にあるのは、彼のごくごく個人的な欲求であり好奇心です。次回は、そんな彼の作品に注目し、その魅力やアイデアの種となった想いについて掘り下げていきます。

Recommend Magazine

おすすめの記事

Browsing History

閲覧履歴