つぼみのような瑞々しい感性で、 つむぐテキスタイル | SOUQ ZINE スークジン

つぼみのような瑞々しい感性で、 つむぐテキスタイル

つぼみのような瑞々しい感性で、 つむぐテキスタイル
注目の若手テキスタイルブランド「YUMI YOSHIMOTO」・「メゾン寿司」をピックアップ。
今回のSOUQ IT!は、花咲く前のつぼみのようなフレッシュな感性が魅力的な二人のテキスタイルブランドにスポットを当てます。東京造形大学の在校生や卒業生が参加するプロジェクト、その名も「TSUBOMI COLLECTION」から、吉本悠美さんの「YUMI YOSHIMOTO」、鈴木龍之介さんの「メゾン寿司-MAISON SUSHI-」のファブリックを紹介します。

東京造形大学のキャンパスがある八王子市。周辺には、多摩美術大学をはじめ多くの大学が集める“学びのまち”です。古くから養蚕が盛んで“織物のまち”でもある八王子で、吉本さんと鈴木さんはテキスタイルを学びました。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION東京都八王子市にある東京造形大学のキャンパス。

「東京造形大学のテキスタイルデザイン専攻は、1学年30人前後の学生がいます。3年次から織りのコースと染めのコースに分かれて、プラスアルファで布を洋服に仕立てるファッションコースも学べます」と吉本さん。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION東京造形大学大学院を卒業し、現在同大学の非常勤講師も務める吉本悠美さん。

吉本さんいわく、数ある芸大・美大の中でもテキスタイルに力を入れている大学の一つという東京造形大学。鈴木さんもそんな大学の方針に注目し入学しました。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION2019年に東京造形大学大学院を卒業した鈴木龍之介さん。

「テキスタイルに強いという印象があったので、ここが第一志望でした。商売に基づくデザインというの高校生のときからずっとやっていたので、せっかくだったら自分で布をつくったり仕立てたりできるようになったらいいなと思い大学に来ました」。

高校生のときから企業から依頼を受け、商品を企画・デザインしていた鈴木さんは、東京造形大に入学したときもかなり目立った存在だったようで…。「やたら大人びた人が入って来たなと(笑)」という吉本さんに対して、「相当腹立つキャラでしたよね(笑)」と鈴木さん。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION

「TSUBOMI COLLECTION」とは?

お二人が参加する「TSUBOMI COLLECTION」とはどういうものなのでしょう? 第1回目からプロジェクトに関わる吉本さんに聞いてみました。

「東京造形大学の卒業制作展の中から優れた作品を選んで、それを一般の方にも観てもらおう、発信していこうという活動です。1回目と2回目は、サンフランシスコのアジア美術館、ヒューストン美術館とアメリカで発表してまして。3回目の今回から国内でもやりたいねということで、縁がありうめだスークでポップアップイベントを開催できました」。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION作家の作品が載った「TSUBOMI COLLECTION」Vol.3のパンフレットより。

3月4日から10日まで、うめだスーク中央街区で発表された「TSUBOMI COLLECTION」。今回は13人の作家が参加するプロジェクトで、絵画や紙のオブジェなどの作品もありますが、テキスタイルやドレスなどの参加が目立ちます。

「他の専攻はたとえばデザイン画だけで終わる課題も多いんですね。テキスタイルデザイン専攻は、布や洋服を実際につくってプロダクトとして発表できるので、コレクションへの参加は多くなりますね」と吉本さん。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTIONテキスタイルデザイン専攻の教室にズラッと並ぶ織り機。1、2年生の時は、平織りや綾織りができる機械が1人1台割り当てられます。

手の跡が残るようなパターン

「TSUBOMI COLLECTION」参加作家のリーダー的存在である吉本さん。東京造形大で非常勤講師を勤めながら、テキスタイルデザイナーとして活躍していますが、どのようなプロセスを経て今の活動へとつなげていったのでしょうか?

「受験のときはグラフィックデザインを志望していたのですが、造形大のテキスタイルデザイン専攻に受かって。それで勉強するにつれてテキスタイルっていいなあと思うようになって大学院まで進み、そのあと助手にならないかという話をいただき、今に至ります」。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION

絵を描くのが好きで、テキスタイルでも主に柄をつくる勉強をしていた吉本さんは、プリントで表現する魅力を感じその道に進みます。そして大学院のときには、ファブリック系の会社のテキスタイルデザインをフリーランスとして受けるようになります。

「依頼をもらって先方が望むデザインを納品していたのですが、自分でも商品を一からつくりたいなと思い始めて、自身のブランド『YUMI YOSHIMOTO』を2014年に立ち上げました」。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION

「YUMI YOSHIMOTO」のテキスタイルの柄は、吉本さんの日常や身近なところに発想を得てデザインされたりします。たとえば正方形のフォルムのスカーフは、吉本さんが暮らす部屋の窓も正方形なので、そこから見える風景を切り取ってモチーフにしたり。

「春の気持ちのいい日はThe spring day、洗濯物がよく乾きそうな天気の日はThe perfect laundry day、月と山の柄を描いたのがThe moon makes attractive shadowと、もうひとつは窓から工場が見えるので、Holiday factory。このようにスカーフは、4つの柄があります」。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION「YUMI YOSHIMOTO」のHoliday factory柄のスカーフ。

そして、吉本さんのテキスタイルの特徴の一つが、エッチングの技法を用いているということです。

「建築画材用のフィルムがあって、この一面にクレヨンを塗って、パレットナイフや割り箸で削って描いています。この手法は、テキスタイルならではと思いますけど、それが好きでずっと使っています」。

パレットナイフで削ると細い線、割り箸だと太い線になるそう。削った感じはそのまま残り、ペンで描いたものとは違ったイメージになります。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION吉本さんが身につけているのは、The spring dayのスカーフ。

「ちょっと塗り残した感じは、つくった人の手の跡っぽく残ります。それを消したりする人もいると思うんですけど、残るようにプリントするのは結構面白いかなと思っています」。

テキスタイルにプリントする場合、色ごとに絵を描いてそれを版にするそうで、3色の布ならば3枚の絵を描くそう。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION「YUMI YOSHIMOTO」のテキスタイルを用いてつくられた巾着バッグ。写真左からA woman and bouquet(pink mix)、Save the sun(gray×blue)、A woman and bouquet(black mix)。

「版を分けて描くと重版という効果が出るんですよ。版を重ねるとそこだけ色が濃くなったり。洋服にしたときなどは奥行きのある柄になるので、それを狙っています。機械で版をつくることもあるのですが、職人さんにやってもらうと発色が全然違いますね」。

同じ柄でも大体2配色ぐらいつくるという吉本さん。最初のインスピレーションで得た色を1色、もう1色は使いやすさを客観視して色づけます。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION絞らずに間口を広げた巾着バッグ。写真左からSave the sun(gray×blue)、A woman and bouquet(black mix)。

「生活のスパイスになるような色合いにしたくて。これを持つだけでアクセントになるようなプロダクトを目指しています。だから結構派手めのカラーリングが好きで、多いのかもしれませんね」。

シャリの質感を再現した生地

鈴木さんの作品「メゾン寿司-MAISON SUSHI-」は、もともと渋谷パルコで行われた寿司をテーマにしたポップアップイベントへの出店がきっかけで生まれたそうです。

「渋谷パルコさんから寿司をテーマに面白い作品をつくってくれという依頼があったんですね。そうすると、いろんなものがすべて寿司に見えてきて(笑)。パカっと開く名刺入れも寿司だな、バッグも構造的にほぼ寿司じゃんって(笑)。もともとはギャグなのかアートなのかよくわからないジャンルがやりたかったので、そのクオリティを上げるためにデザインや素材を学んでいます」と鈴木さん。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION

渋谷パルコへの出展時につくった作品は、プリントがメインでチープな感覚のかわいい作品だったという鈴木さん。大学院に進んでから織物の産地・富士吉田市とのプロジェクトがあり、田辺織物とコラボレーションをする機会を得て、もう一度本格的な寿司づくりが始まります。

「田辺織物さんは、座布団の生地をつくる老舗で、お寺などにある金襴というきらびやかな座布団をつくっていらっしゃる。このギラギラした質感を応用したら、イワシやコハダといった光り物の寿司をつくれるんじゃないかと思いました」。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION「メゾン寿司-MAISON SUSHI-」のサコッシュ。シャリの部分の生地は、本当に米粒のようなつぶつぶの立体感が見事です。

シャリの生地は、再生ポリエステルを使用。特殊な加工により、お米の素材感を出しました。鈴木さんは、多い時は週に4度も現地に訪れて、開発されるのに2年かかったそうです。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION
東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION「メゾン寿司-MAISON SUSHI-」のカードケース。トロや光り物、玉子など、持っているだけで楽しくなりそうなネタが揃います。そして開くとワサビが!

「田辺織物さんも最初は『何言ってるんだろうこの人は。うち、座布団屋なんだけど』みたいな反応でした(笑)。初の試みなのでわからないことが多く、数え切れないほどサンプルを制作し、ちょっとずつ改良して、なんとかものになりました」。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTIONサコッシュは、左からサーモン、トロ、マグロをイメージ。

「メゾン寿司-MAISON SUSHI-」は商品としては3月7日に発売されたばかり。ツイッターでは特に女性からの反応が多いという鈴木さん。今後は寿司スニーカーなどもつくっていくそうですから楽しみです。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION鈴木さんが放り投げてるのは、マグロのクッション。

東京造形大学で学んだ2人が、それぞれ斬新な発想と感性でつくるテキスタイル作品。春からの新生活に取り入れてみると、フレッシュな刺激を楽しめるかもしれませんね。

東京造形大学 TSUBOMI COLLECTION

取材・文/蔵均 写真/東泰秀

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