tomoki yurita(トモキ ユリタ)第1回 着ることに執われず 完成させる1点モノ

ものづくりの世界で活躍するクリエイターをご紹介する「ピックアップクリエイター」。今回、お話をお聞きするのは、絶妙な素材の組み合わせで、1点モノのリメイクアイテムを生み出している〈tomoki yurita〉のデザイナー・百合田智紀さん、そのユニークなアイテム作りについて、お話をうかがいました。
- SOUQ
- 〈tomoki yurita〉さんのスヌードやマフラーって、使われている生地や配置が微妙に違いますよね。もしかして、1点モノですか?
- 百合田
- そうですよ。スヌードやマフラーに限らず、トップスでもワンピースでも、基本的には1点モノです。型はある程度決めていても、その中での生地の入り方は、1点1点全然違います。

- SOUQ
- あ、確かに、スヌードも入っているファーの色や組み合わせが、どれも微妙に違いますね。
- 百合田
- 最初から、同じものをたくさん作るっていう概念がこのブランドにはないので、ファーの生地も買うのは1種類につき数メートルです。洋服になると、古着を使ったリメイクになるので、そもそも全く同じものを複数枚仕入れることの方が難しいですしね。
- SOUQ
- なるほど。同じ素材を使っているものも少ないとなると、よりアイテムとの出会い感が強くなる気がしますね。一期一会というか。


ダイレクトにアウトプットされるデザイナーの発想
- SOUQ
- 1点モノというと、ひとつ一つに素材の組み合わせがあって、場所の配置があって、という感じだと思うのですが、そのあたりは全て百合田さんが?
- 百合田
- はい、今はアシスタントが1人いるんですけど、基本的にはほとんど自分で手を動かします。

- SOUQ
- 1点1点デザイナーによるハンドメイドってことですよね!
- 百合田
- そうですね。
- SOUQ
- それって、ものすごく大変なことですね。
- 百合田
- もちろん手間はかかりますけど、そこまで大変とは思ってないですよ。
- SOUQ
- 作るもののイメージみたいなものは、何かに書き留めておくんですか?
- 百合田
- いえ、なにも。
- SOUQ
- なにも!
- 百合田
- はい、シーズンコンセプトも作りませんし、デザイン画も書きません。
- SOUQ
- となると、アイデアは頭の中でまとめていくっていう感じですかね?もしくは、かなり具体的なイメージが想像できているとか……?
- 百合田
- まったくの行き当たりばったり、ですかね。
- SOUQ
- 行き当たりばったり!ですか!!

- 百合田
- 作業を工場に出すわけでもないので、資料にしたものを誰かに伝える必要がないというか。僕が考えて、僕が縫うので。
- SOUQ
- 忘れないように書いておこう、みたいなこともないですか?
- 百合田
- 昔は、寝ている時にアイデアを思いついたら書きとめておけるように、枕元にメモ帳とペンを置いていることもあったんですけどね。夜中に走り書きしたメモって、翌朝みると大したことないんですよ。結局、書きとめておかなくても覚えているようなことの方がよかったりするんです。
「モノ」としてかっこいいものを完成させる
- SOUQ
- 〈tomoki yurita〉のアイテムは、レディースのみの展開だとは思うのですが、百合田さんご自身が着たいと思うようなエッセンスも入っているんですか?
- 百合田
- いえ、自分で着たいっていう感覚はないですね。昔は、作るもの=着たいものっていう時期もありましたけど、今は着ることよりも作ることの方が楽しいので、どんどん作るっていう感じで。
- SOUQ
- 作るうえで大切にしていることは何ですか?
- 百合田
- アイテム自体がコーディネートの主役として身につけてもらえるようにしています。

- SOUQ
- プロダクトとして満足できるものを作れるかどうか、というところでしょうか。
- 百合田
- それが、できあがる直前まで、すごいかっこいいなって思うんですけど、出来上がったアイテム自体には執着は持たないんですよ。
- SOUQ
- なるほど。だから次に情熱を注げるんでしょうね。
- 百合田
- はい、それがなくなったら終わりなのかなって思います。
取材・文/内海織加 写真/東泰秀
デザイナーの百合田智紀さんの感性からダイレクトにアウトプットされる〈tomoki yurita〉のアイテム。「着る」ということに執われ過ぎていないから、自由に発想でユニークなものを生み出しているのでしょう。次回は、〈tomoki yurita〉のアイテムの代表的な手法、リメイクとその素材選びについて、お話をうかがいます。