tomoki yurita(トモキ ユリタ)第2回 「好きか嫌いか」 に嘘をつかない

独自のものづくりを続けるクリエイターにフォーカスを当てる「ピックアップクリエイター」。今回ご紹介するのは、リメイクの手法を取り入れて1点モノのファッションアイテムを生み出している〈tomoki yurita〉のデザイナー・百合田智紀さん。第2回は、「リメイク」という手法についてお話をうかがいました。
- SOUQ
- 〈tomoki yurita〉のアイテムは、どれもリメイクで作られていますよね。
- 百合田
- そうですね、スヌードやネックウォーマーは違いますが、服はすべて古着を使っています。
- SOUQ
- リメイクという手法は、ブランドを始めた頃から取り入れていたんですか?
- 百合田
- いえ、最初の2、3年はアバンギャルドな感じで作っていて、5年目くらいからリメイクを取り入れ始めた感じです。3、4年前からは100%リメイクになりました。

- SOUQ
- なぜ、リメイクを?
- 百合田
- 10代の頃から古着を買ってきて、リメイクするのが好きだったんですよね。思春期でおしゃれをしたいと思うようになってきても、中学生の頃とかお金がないじゃないですか。だから、フリマに行ってはアイテムを買ってきて、それを「もっとこうだったらいいな」っていう発想で直していましたね。それは、自分なりに付加価値をどれだけつけられるかの作業でもあったんだと思います。


リメイクの素材選びは迷わず直感で
- SOUQ
- リメイクって、素材選びが大きいですよね。
- 百合田
- そうですね、かなり大事ですね。
- SOUQ
- 素材選びのこだわりってありますか?
- 百合田
- そうですね……見た目に好きかどうか、ですね。
- SOUQ
- シンプルですね!
- 百合田
- 好きの集まりで作ったものは、好きなものになるだろうっていう。
- SOUQ
- 確かに。理屈とかではなく、感覚的なものですね。
- 百合田
- そうですね、これだから、っていうのではなく、直感的です。1点モノとして作っているので、瞬間的に判断していかないと終わらないっていうのもあります。2秒でも3秒でも迷っている時間はないんです。

- SOUQ
- なるほど、瞬時に判断していかないと、時間がかかってしまいますもんね。ちなみに、制作はここ(アトリエ)で?見える限りだと、素材になる古着はなさそうなのですが。
- 百合田
- 素材の部屋が別にあって、そこに保管しています。見てみます?
- SOUQ
- ぜひお願いします!
(素材部屋へ)
- 百合田
- ここが素材部屋で、ジャンル分けをして箱に入っている感じです。ここは、ネルシャツばっかり。

- SOUQ
- わぁ、すごい!いろいろなチェックがありますね!
- 百合田
- パーツも含めてここに来れば素材は全てあるっていう感じです。
- SOUQ
- すごい!宝探しみたいでワクワクします。
- 百合田
- 新しいアイテムに取り掛かるときは、まずここ(素材部屋)に来て素材を選んで、アトリエで断裁して縫って、また「あ、あの素材使えそう」って思ったら、またここに来てっていう感じで。1日に素材部屋とアトリエを何度も行ったり来たりしながら作っています。
やるかどうかは「好きか嫌いか」で決める
- SOUQ
- 今回、SOUQ ZINEで取り扱いをさせていただくのはスヌードとネックウォーマーですけど、季節ごとのアイテムを展開している感じですか?
- 百合田
- うち、ここ5、6年くらいは春夏のアイテムを出していないんです。
- SOUQ
- 秋冬だけの展開なんですね!それはなぜですか?
- 百合田
- ひとつは、秋冬の方が好きで、春夏が好きじゃないっていうことですね。

- SOUQ
- 好きかどうか!そこの百合田さんのシンプルさ、いいですね!
- 百合田
- 秋冬の方が作っていておもしろいんですよね。アイテムも多いし、重ねたり組み合わせたりして着れるし。だから、僕の中で無駄な春夏をやめた、っていう。
- SOUQ
- 無駄!!(笑)なんという潔さ!!舞台の衣装も手がけられていますよね。そういうのは、普段の洋服づくりとは意識が違いますか?
- 百合田
- そうですね、着る予定の人が好きだと思ったらやる、っていう感じですね。
- SOUQ
- 一貫してますね!
- 百合田
- 仲のいいスタイリストさんとかから衣装の制作依頼を受けることもあるんですけど、そういう場合はクレジットは出さないでってお願いすることもあります。好きな人にきてもらうのは、どうぞどうぞ!っていう感じなんですけど、そうじゃないこともありますからね。そういうのは気持ちよくないので……(笑)
- SOUQ
- どこまでも正直でまっすぐですねー!

- 百合田
- わがままなだけです(笑)仲がよくて服の話も合う友人だと、オーダーに関してかなり注文を言われることもあるんです。多分、ファッションデザイナーって、そういうのは気分が良くないと思うんですけど、僕の場合は、相手のことが好きだったら全然いいと思ってるんです。その人の意見を取り入れても、結局は自分のものづくりをするだけだからあまり気にならない。むしろ、自分にはない意見が入ってよくなった!って思うこともありますよ。
- SOUQ
- そういう考え方もいいですね。あ、でも相手のことが「好き」っていうことが重要ポイントですね。
- 百合田
- はい、ものづくりで譲れないところって、好きか嫌いか。それだけです。
取材・文/内海織加 写真/東泰秀
百合田さんは、ものづくりにおいても、ブランドの方針を判断するときにも、「好き」というシンプルな感覚に正直に従い、頭で考えて、「違うかも」という感覚を見なかったことにするということは、決してしないのでしょう。そのシンプルな指針が、〈tomoki yurita〉を手にした時のわくわく感に繋がっているのかもしれません。次回は、引き続き、百合田さんがブランドを立ち上げた時の話などをお聞きします。