tomoki yurita(トモキ ユリタ)第3回 未来の「行き当たり ばったり」のために

ものづくりの世界で活躍するクリエイターにフォーカスを当てる「ピックアップクリエイター」。今回はお話をお聞きしたのは、コラージュのように様々な生地を組み合わせたファッションアイテムが特徴的なブランド〈tomoki yurita〉のデザイナー・百合田智紀さん。第3回は、百合田さんがブランドを立ち上げるまでのお話をうかがいました。
- SOUQ
- ところで、百合田さんがファッションデザイナーになろうって思ったのは、いつからですか?
- 百合田
- うーん、いつからかなぁ。ファッション自体は、中学生くらいから好きでしたね。
- SOUQ
- あ、リメイクに目覚めたのもその頃でしたもんね。
- 百合田
- そうですね。小さい時から作る仕事がしたいっていうのは思ってたんです。大工さんとか漬物屋さんとか。
- SOUQ
- 漬物屋さん!渋いですね!

- 百合田
- 小さい時から、人に指図されるのがいやで、なんでもいいから社長になりたいって思ってたんです。
- SOUQ
- それはちゃんと叶えたんですね!
- 百合田
- あ、そうですね(笑)
「違うこと」に気づいたから気持ちが固まった
- SOUQ
- 大学時代からすでにファッションには興味があったんですか?
- 百合田
- そうですね。でもはじめ、大学では興味があった建築を学びました。ただ建築って、行き当たりばったりでは絶対に作れないじゃないですか。


- SOUQ
- た、確かにそうですね。建築を学び始めたことによって、自分が本当に興味があったのがファッションだったということがわかったのかもしれませんね。
- 百合田
- そうかもしれませんね。大学を辞めて、ファッションの専門学校に入って卒業したのが22歳でした。
- SOUQ
- そこから自分のブランド立ち上げを?
- 百合田
- いえ、そこから2、3年は会社で働くことにしたんです。
- SOUQ
- 会社で!ちょっと意外ですね!すみません……!
- 百合田
- 自分のブランドを立ち上げることはもちろん考えていたのですが、学校ではデザインや縫製については学べても、お金の流れまでは学べていないなぁ、と思って。自分のブランドをやるなら、そういうことまで知っておきたかったので、会社に入って学ぼうって思っていたんです。

- SOUQ
- なるほど、堅実ですね!全然行き当たりばったりじゃないです!
- 百合田
- そうですかね(笑)。
有言実行で着実に歩む、ブランド立ち上げ前
- 百合田
- 当時、好きなデザインのパンツがあって、それを作っていたのが、いくつかブランドを持っている高円寺にあるアパレル会社だったんです。会社に入るならそこがいい!と思って、会社に問い合わせをして、僕を採ってくださいと。
- SOUQ
- 直談判!さすが、行動派ですね。
- 百合田
- アパレルの業界では、販売からスタートして2、3年で店長になって、マネージャーになって、本部に行って専門職か管理職になるっていうのがよくあるパターンだと思うんですけど、僕は、会社で働くのは2、3年て決めていたので、1年販売やって、1年本部でデザインをさせてほしい、それで辞めるからって頼んで、会社は「それじゃあ、やってみろ」って感じで。

- SOUQ
- え、完全に百合田さんが優勢じゃないですか(笑)。さすがです!
- 百合田
- 最初の1年で売りまくって、その後1年は本部でデザインさせてもらって、それで辞めました。
- SOUQ
- 有言実行!!売りまくっちゃうところも、かっこよすぎます!!
- 百合田
- それで、1年好きなことしてからブランド始めようと思って、半年バイトして100万貯めて、残りの半年はそのお金を使い切るまでロンドンで暮らしていました。

- SOUQ
- ロンドンといえば、ファッションをはじめ、いろいろなカルチャーのある国ですもんね!
- 百合田
- そうなんですけど、結構1日中ぶらぶらぶらぶらすることも多かったです(笑)。特に行くところもないから、博物館に行ったりしてたくらいで。
- SOUQ
- でも、そういう過ごし方もいいですね。旅行というより、暮らす感じで。
- 百合田
- そんな感じで半年近く過ごして、1文無しで日本に帰ってきたのが25歳くらい。そこからようやっとブランド立ち上げのために動き出したって感じです。
- SOUQ
- ここからいよいよ始まるんですね!
取材・文/内海織加 写真/東泰秀
「行き当たりばったり」とは言っても、百合田さんの歩みは、自分の想いに忠実でありながら、きちんと将来を見ている感じもあって興味深いものがあります。それは、「今」に軸足を置きながら、ちゃんと「未来」のことまで見晴らしがいいという感じでしょうか。そして、就職というお堅い機会であったとしても、人の心を掴んでしまうのは、さすがは百合田さんの人柄。そして、そこに彼の強運も味方して、ブランドが動き出します。次回は、ブランド立ち上げの頃のエピソードをお聞きします。