内田ミシン(uchidamishin) 第3回 生地に恋して。

千葉のステキなアトリエで、ものづくりについて話してくれた「内田ミシン」のデザイナー・内田美貴子さん。今回は、週に1回は足を運ぶという日暮里の生地問屋街での仕事ぶりも拝見しました。
- SOUQ
- 材料探しの苦労とかはありますか?
- 内田
- 苦労はありますよ。ミシンはだれにでもできるものだから、どっかで差をつけないといけないんですけど、一般的な洋服屋さんが使ってないような生地とか紙を縫ったりとか、ミリタリーリメイクとか。そういう意味では、結構国内での仕入れは、値段もお手頃なものからあるし、なんといっても小ロットで買えるからすごく便利。
- SOUQ
- ロットの問題はありますもんね。
- 内田
- こないだ大阪に行ったときも仕入れに行きました。
- SOUQ
- どちらに行かれたんですか?
- 内田
- えっと…船場センタービルに生地屋があったと言われて行ってみたら、もう3軒ぐらいしかなくて。でもゴブランと綿麻と綿の生地屋さんと3軒ぐらいいい生地屋さんはあったんですけど、やっぱり東京でも買える生地だったんで、そこでは買わず…。
- SOUQ
- 昔はたくさん生地屋さんがあったんですけどね。
- 内田
- 難波の「とらや商店」さんは、東京にはないような、すごい派手な生地とか、すごいいいヒョウ柄がそろっていたり。ヒョウ柄はヒョウ柄なんだけど、オスのヒョウとメスのヒョウとか、なんかいっぱいあるんですよ。1m500円ぐらいから4,000円ぐらいまで、ヒョウ柄だけでそんなにあるのかって!(笑)。すごいおもしろかった。活気があっていいですよね。
- SOUQ
- あそこは、大阪のおばちゃんの愛すべきファブリックショップです。

- 内田
- 東京の日暮里の生地屋さんとかって、どこかの大きい生地メーカーがつくった残反(ざんたん)とかも売ってたりするんですよ。
- SOUQ
- 残反ってなんですか?
- 内田
- 大量生産されて、売って、はけて、その残りの生地のことです。だからありきりで2ー3反しかないようなことがほとんどみたいです。
- SOUQ
- なるほど。
- 内田
- 東京の残反は大阪へ行き、大阪の残反は東京へ行く。かぶらないように。だから大阪の生地もいっぱい使ってますよ。
- SOUQ
- 生地によって、作品のできも違ってきますもんね。
- 内田
- そう。だから「内田ミシン」はよく生地選びがおもしろいと、お客さんが思ってくれてるみたいで。紙の帽子をいっぱいつくってたときには、“紙の帽子屋さん”って覚えられてました。紙の帽子といっても破れるような弱いものじゃなかったんですけど、もっとアーティストとかクリエイターが買うのかなと思いきや、おばあちゃんが買っていってくれたりしましたよ。こんな人にこう身につけてほしいというのは一切なくて、ただこういうものを、こういうものとして出してみたいのでつくってる。
- SOUQ
- 紙の帽子のときは、出してみたいと思ったのはどういうことからですか?
- 内田
- 紙のときは、それも日暮里で買ってるんですけど。たまたま出会ったんですかね。いつもなにか探して行ってはないので。なにかおもしろいものはないかなという感じで行ってるので。ちょっと買っていけそうだったら、全部買ってみるとか。
- SOUQ
- 日暮里の生地問屋では、商品は結構変わるもんなんですか?
- 内田
- すごい変わりますね。定番のものももちろんあるのですが、私が結構ありきりの生地を買うことが多いので、1週間おきに行くと全然違うものがあるので、おもしろいですよ。
- SOUQ
- 生地はいろいろな種類があるのですか?
- 内田
- 「内田ミシン」の洋服系は、綿とリネンとウールがほとんどですね。夏だったら麻とかも多いですけど。帽子用だと紙もあれば革もあったり。ビニールでつくっちゃう場合もあります。とりあえず、いまから行ってみます?
ということで、一同、日暮里の生地問屋街に向かいます

- 内田
- このへんから日暮里繊維街に入っていきます。デニムなんかも反物を売ってたりします。
- SOUQ
- 東京で繊維といえば日暮里なんですか?
- 内田
- やっぱり新宿や蒲田などにも生地屋さんはあったりしますが、日暮里が一番種類が豊富でバラエティーに富んでると思います。最近、外国人の方も増えてきました。
- SOUQ
- それは観光客の方ですか?



- 内田
- いや、仕入れですね。和風の柄の生地とかキャラクターものの生地とか買ってらっしゃいますね。日本でしか買えないのかなあ?でも今日は台風がきているので、あまり人はいないですね。
- SOUQ
- ふだんはもっと多いのですか?
- 内田
- 多いです。いつもは反物を裁断してもらうのに30人ぐらい並んでいるというのが普通ですから。
- 内田
- 今日行くのは、この繊維街の中でいちばん大きいお店で「トマト」。だいたい1回日暮里に来ると4、5時間はいますね。

- SOUQ
- 一般の人も買えるんですよね?
- 内田
- はい、買えます。登録もしなくて1mから買えます。
- SOUQ
- それはいいですね。
- 内田
- インターネットで販売もしていますよ。実物を見たりさわったりできないですけどね。

- SOUQ
- 内田さんが買ったのは、どんな生地ですか?
- 内田
- 今日はオーガンジーの生地で、これでシャツをつくろうかなと思っていて。ちょっとスケスケで短い丈のシャツかな。
- SOUQ
- これもありきりですか?
- 内田
- そうですね。これで一度つくってみて、いけそうだったら追加で送ってもらうんです。生地って一反何10kgもありますから。だから持てないんですよね。
取材・文/蔵均 写真/東泰秀
トマト本館
●東京都荒川区東日暮里6-44-6
TEL:03-3805-2366
生地問屋でのお仕事ぶりも拝見して。次回最終回は、「内田ミシン」のこれからについてお話をうかがいます。